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新サービス『UPCYCLE」』のリリースに込めた3つの意思

みなさまこんにちは!
A1A株式会社CEOの松原(@matsushi0706)です。
2024年8月5日に豊田通商株式会社との資本業務提携を含む4億円の資金調達の実施と、自動車業界の調達コスト最適化を実現する「UPCYCLE」の提供開始をリリースしました。

2018年にA1Aを創業して、はや6年も経過してしまいました。
毎日忙しく過ごしています。カレンダーを見ると予定がいっぱい詰まっています。でも振り返ると、「何を決めたのか」を思い出す。また、その意思決定の延長線上に今があると改めて強く感じます。

だからこそ、これまでの意思決定をこのブログでは振り返ってみたいと思います。「何かを決めること」は「何かを捨てること」。何を選んで、何を捨てたのか、それが会社の文化形成にも寄与していると感じますし、A1Aが大事にしている価値観にもつながっています。
そういう意味で、A1Aのことをよく知っていただけると思いますし、加えて、松原がどんな人間なのかについても知っていただけることでしょう。

本ブログでは、主に3つの意思決定について振り返っていきます。
さて、それでは本編です。


意思決定①┃製造業調達領域の選択


まず1つ目の意思決定は何より製造業調達領域で起業したことでしょう。

どの領域で起業するのか、を考えるにあたって大事にしたのは「なぜ自分がやるのか」という点。私には製造業のバックグラウンドがあった。また、営業マンという視点から製造業の「調達実務」に触れていた身として、「同じ会社でも、工場や部署・担当者が異なると、同じものを別の値段で買っていただける」ことに違和感を感じていた。
加えて、「交渉に高いスキルを持つ調達担当者の情報共有にまつわる課題」を解決すれば、日本の製造業企業の利益改善に貢献できそうだという確信があった。

私はファーストキャリアで勤めた株式会社キーエンス時代に静岡県浜松地区のお客様を担当していました。お客様は主に自動車業界の企業様。

当時を振り返ると思い出すのは2つの光景です。
1つ目は、日々工場の現場に入らせていただく中で感じる、整然とし美しささえ感じる生産ラインと、1秒、1mm単位での改善を追求する「いいものづくり」へのこだわり。
2つ目は、購買担当者が目の前で分厚いバインダーを引っ張り出して、そこから過去の見積書を探している光景や、その情報に基づいて営業マン(私)と交渉している姿。

この対局的な2つの光景こそが私の原体験であり、これは変えられる、変えるべきだ。と強く感じたことが、どんなに上手くいかないことがあっても、こだわって調達領域、そして、「見積」の課題を追求してくることができた理由です。

「なぜ自分がやるのか」にこだわって起業していなければ、こんなに悔しい思いや大変な思いをしてまで調達領域、そして、見積の課題にこだわってこれなかったでしょう。

意思決定②┃ピボットの決断


そして2つ目の意思決定はピボットの決断です。
ピボットの意思決定については、過去に以下のブログで言及しています。

RFQクラウドは「サプライヤから受領する見積書の書式や記載内容がばらつくためデータ蓄積・活用ができない状態になっている」という課題を解決するべく、購買担当者がシステム上で見積依頼を行い、サプライヤ企業様にシステム上からの回答を要請する、というシステムです。

RFQクラウドシステム概要図

実際に2019年にリリースし、破竹の勢いで導入が進んだ結果、約1年強で50社以上の企業様への導入が進みました。

ただ、同時に以下の2つ問題がどんどん大きくなってきていました。

  1. ユーザー企業様からの機能改善要望(この機能がないと自社の業務フローに合わないので使えない)が多種多様で対応しきれない

  2. サプライヤ企業がシステム上からなかなか回答してくれない(=システム上での見積回収網羅率が100%にならない)

1つ目については、RFQクラウドの受注を急いだ結果、導入企業の業種が多様化し、また、業種が多様化したゆえに「解決したい課題」のバラツキが大きくなってしまったことが背景にあります。結果「誰の、何の課題を解決するのか」が見えづらくなり、プロダクト開発の難易度が高くなってしまった。ただ、この問題については「とにかく資金をたくさん調達し、投入できるリソースを最大化して、顧客要望を満たせるまで開発し続ける」という解決策もあったと思います。ただ、その選択肢は取らなかった。

ここに大きな意思決定があったのだと思います。
確かに「機能改善要望が出なくなるまで」開発し続けることもできたのかもしれません。

なぜならば、2つ目の問題が大きかったから。RFQクラウドには「サプライヤにバイヤーフォーマットで見積回答いただくことをお願いする」という構造があります。この構造上、サプライヤが対応してくれない場合には、RFQクラウド上で100%のデータ網羅性を担保することができません。つまり「課題を解決しきれない」という状態になってしまうのです。
また、製造業はグローバル化が進んでおり、売上の大半を海外から生み出し、全従業員の6割強が海外拠点で働いているというデータもあります。
つまり本質的に製造業の購買部門に価値を提供しようとすると、いずれグローバルで活用いただくシステムにしていく必要がある。日本のサプライヤですら対応してくれないケースが有るのに、海外のサプライヤは対応してくれるのだろうか?本当に「とにかく資金をたくさん調達し、投入できるリソースを最大化して、顧客要望を満たせるまで開発し続けた」先に、顧客の課題解決があるのだろうか?この点に大きく悩みました。

経済産業省 製造産業局 製造業を巡る現状と課題 今後の政策の方向性より引用

色んな方に相談しました。様々な意見をもらいました。
結果、「A1Aは何を大事にする会社なのか」で判断すべきだ、という結論になりました。順調に導入企業が伸びている、スタートアップは成長が全てである、確かにそうかもしれません。

でも一方で、「松原さんは何のために起業したの?会社を成長させて売上を伸ばすため?それとも課題を解決するため?」という言葉もいただきました。響きました。

だからこそ、10年先、20年先に納得できる意思決定をしたい、そう思い「ピボットすること」を決めたわけです。

これだけ引き合いも多く、受注実績もつめているのだから、正しく課題解決できるソリューションを作れば絶対に価値を届けられるし業界を変革できる、という確信もありました。

これは、今考えても、非常に大きな意思決定だったと思います。

意思決定③┃UPCYCLEのポジショニング


そこから2024年8月5日、こうしてUPCYCLEの提供に関するプレスリリースに至るまでの期間は本当に長かった。2023年10月頃から一部クローズドでシステム提供しておりましたが、とことん潜んでいました。ずっとお客様とプロダクトに、A1A全体で向き合ってきました。

UPCYCLEサービスサイトより引用

UPCYCLEについては大きく2つの意思決定をしています。

  1. 解決する課題を絞ること

  2. ターゲット業種をとことん絞ること

1. 解決する課題を絞ること


RFQクラウドには以下の特徴がありました。

  • システム上での見積収受(見積依頼〜見積回答)を可能にする

  • バイヤーが指定したフォーマット見積回答を入力してもらう

上記解決策により「サプライヤから受領する見積書の書式や記載内容がばらつくためデータ活用ができない状態になっている」という課題を解決しようとしていました。別の見方をするとバイヤーが見積情報を活用するためには「見積情報が整理されている必要がある」というわけです。

従来(RFQクラウド以前)は、見積書を受け取ったバイヤーが手作業で見積情報を整備してデータベースを作るという構図。

一方でRFQクラウドは「サプライヤに見積情報のデータ整備を依頼する」という構図。サプライヤは「バイヤーがデータ活用するために、バイヤーの見積フォーマットに合わせた見積回答をする」という状態になっていたわけです。

このRFQクラウドの構図はやはり違和感があるし、だからこそ、上手くいかなかった。パワーバランスが強いと一般的に思われる自動車OEMですら100%の回収率にはならないのは、やはり、構図の歪さゆえでしょう。

ではA1Aはどうこの歪さを解消したのか。
「A1Aがバイヤーのために見積情報のデータ整備を担う」という構図にしたわけです。データ整備の負担をバイヤーでもなく、サプライヤでもなく、A1Aが担う形にしたのです。
バイヤーもサプライヤも普段通りに業務をしてくれればいい、データ整備ではなくもっと付加価値の高い「整備されたデータの活用」に時間を割いてもらいたい。これがUPCYCLEの特徴です。

2024年3月に特許も取得済み

一方でUPCYCLEは解決する課題をかなり絞っています。「システム上での見積収受(見積依頼〜見積回答)」という価値を減らし、「バイヤー・サプライヤ間の業務フローは変えずに」「整備されたデータの活用を支援する」ことに現時点では自分たちの価値提供を絞り込んでいます。

DXという言葉が流行り、「業務フローをデジタル化すること」が妄信的に望まれていた(望まれている)現状はありますが、私たちはあくまで「お客様の本質的な課題を解決する」という点に一番の優先順位をおき、本質的な価値を追求していきたいという思いで、このようなサービス形態に絞り込んでいるというわけです。

(もちろん今後、提供価値を広げていく可能性は十分にありますが)

2. ターゲット業種をとことん絞ること


また、UPCYCLEはターゲット業種をとことん絞り込んでいます。
そもそも「整備されたデータの活用を支援する」ことに価値を絞っているわけなので、「整備されたデータの活用」の優先順位が低いお客様には価値が届きづらい。
見積情報を活用したコスト分析により例えば10円のコストダウン余地を見つけたとして、これが嬉しいと感じる業種と、嬉しくない業種はやはり分かれます。同じ部品を数十万個、数百万個調達するような業種の企業様にとっては「10円のコストダウン」は非常に大きいもの。一方で、同じものを5個しか調達しない業種の企業様にとっては「5個×10円」で50円の効果にしか繋がらない。つまりUPCYCLEは「大ロット生産(大量生産)」を行う企業様がターゲットのプロダクトとなるわけです。

プレスリリースにもあるように、私たちは現在「自動車系メーカー様」にターゲットを絞り込んでおります。まずは自動車業界の調達コスト最適化に全力で取り組んでいく。

RFQクラウドからの学びは大きく、UPCYCLEは「誰の、何の課題を解決するのか」が極めて明確に定まっているプロダクトであると言えるわけです。
だからこそ、とことん、提供したい価値を磨き込むことが出来る、業界の課題に深く深く入り込んでいくことが出来る。

これまた、大きな意思決定であると言えます。
逆に言えば絞っている弊害もあるかもしれない。
でもA1Aは、A1Aを信じてくれたお客様の課題を徹底的に解決し、大きな価値を届ける会社でありたいと決めているし、そのために長い期間潜んで、徹底的に顧客と向き合い続けてきたのです。このこだわりは、譲れません。

これも、今のA1Aや未来のA1Aを形作る大きな意思決定であると私は思います。

なお、A1Aについて、UPCYCLEについてCTO、COO視点から語っている内容もありますので、併せて読んでみてください。

現在のA1Aと今後のA1Aについて


現在のA1A

何をどう意思決定してきたのか、何を大事にして決めてきたのか、これらが今のA1Aを形作っていると私は考えます。

ピボットして潜んでいた期間は長かった。しかし、だからこそ、自分たちが大事にしたいこと、大事にするべきことが磨かれ、そして浸透してきたように思います。
過去から醸成された価値観は、自分たちの、簡単には真似できない強みです。

今後のA1Aの事業展開について

A1Aは整備されたデータの活用により製造業企業、もとより、自動車業界に提供する価値をどんどん大きくしていきたいと考えています。また、整備されたデータが揃っていることは重要である、と考える一方で、あくまでも整備されたデータは「手段」であるとも言えます。そのデータを活用して、どんな成果を生み出すのか。
ソフトウェアベンダーであるA1Aは、どうしても「データの活用」及び「データから見出したコスト最適化余地の追求」についてはお客様任せとなっておりました。私たちA1Aは、もっと成果に近い実行支援まで担いたい。

だからこそこの度、豊田通商様との事業提携も締結いたしました。
システムでコスト最適化余地を見出し、豊田通商様と共に実行支援まで担う。これにより、

  • グローバルでの調達コスト最適化/サプライヤ提案

  • グローバルでのサプライヤ集約支援

  • 物流実行支援

  • などなど

までご支援してまいります。
取引への介在と、意思決定支援を通して、調達の高度化を支援していく、これが今後の事業展開方向性です。

A1Aが実現したい世界

そもそも私は、製造業の調達機能に変革を起こし「日本の製造業は強い、なぜならば、調達が強いから」という世界を作りたいと思っています。
日本の製造業はこれまで調達機能にあまり投資をしてきませんでした。
今後も、調達機能に投資をしなくても、ものづくりは続くし、製造業は残るはずです。

良くも悪くも、製造業にとって調達機能はまだまだ余白だらけ。
私たちが調達機能をエンパワーメントしなければ、きっと、調達機能は日陰部門のままです。

でもだからこそ、私たちが、調達機能からものづくりを変えたい、経営を変えたい。ものづくりは一社では絶対に成り立たない、だからこそ、ものづくりに使われる部品の6-7割を占める「調達」から製造業を変えるチャレンジをしたい。

導入企業の成功を支え、ヒーローになるバイヤーを生み出し、事例を持って業界を啓蒙する。そして、製造業の成功には調達機能の成功あり、調達機能の成功の裏にはA1Aあり、という世界を作る。

日本の製造業は日本の国力を左右する存在です。
私たちのお客様の成功は回り回って、国力の強化にも繋がります。そんな思いで、事業に日々取り組んでいます。

もし本ブログを読んで、解決しようとしている課題に共感いただける方、また、A1Aという会社に共感いただける方がいれば、是非、お力になっていただけると嬉しいです。

是非、一緒にチャレンジしてください。

We are hiring!!


もしA1Aに興味を持っていただけたら、是非、下記よりご応募ください。
もちろん直接私宛にご連絡いただいても大丈夫です。

主な募集ポジションは以下の通り。

Business

  • 営業責任者候補

  • アカウントエグゼクティブ
    業界初の形態でサービス提供していることも有り、日本を代表するような自動車OEM、Tier1メーカー様と多くの商談をさせていただいております。(こんな大企業様と商談ができるようになるなんて、というのがUPCYCLEを構想してからの最大のサプライズでした)
    Vertical×Enterpriseで世の中にないプロダクトを届ける役割はきっと面白いと思っていただけるはずです。

  • カスタマーサクセス責任者候補

  • カスタマーサクセス
    A1Aはお客様の成果創出にコミットしたい。ユーザー様が楽になる、生産的に働ける、それはもちろん大事です。でもそれと同じくらい「生産的に働けるようになったバイヤーをエンパワーメントすることで調達機能から製造業を変える!」ということも大事。そんな役割を担っていただける方を大募集しています。

  • インサイドセールス

  • マーケティングマネージャー候補

  • マーケター

  • 広報・PRマネージャー候補
    企業が「製造業調達機能に投資すること」はまだまだ一般的では有りません。なぜ製造業調達機能に投資をする必要があるのか、なぜ調達コストに関するデータを活用する必要があるのか、業界を啓蒙していくことが必要です。そんな役割を期待しています。

Product

  • UXデザイナー

  • エンジニアリングマネージャー

  • リードエンジニア
    調達機能をエンパワーメントするにはまだまだ多くの解決すべき課題が存在します。またUPCYCLEを通して大きな価値を届けるためにも、複雑な業務フローや業務課題を解きほぐすべく、もっともっとユーザーの理解を深め、プロダクトを強くしていく必要があります。本ブログに記載の通り、A1Aは本気で課題解決に取り組む会社です。また、プロダクトに向き合っている会社です。共感いただける方、是非一度お話を聞いていただけると嬉しいです。

Corporate

  • 経営企画・コーポレート
    A1Aの屋台骨を支える役割です。A1Aの会社づくりを共に支えていただける方を募集しています。能動的に、会社の成長・事業の成長を妨げる課題を発見し、解決していく。会社の状況を俯瞰して認識し、正しい打ち手を打っていく。そんな役割を私とともに担っていただきたいです。

オープンポジション

  • 調達エキスパート
    調達業務のご経験、調達に関する専門性を持った方の募集です。「調達を起点に製造業やものづくりをもっと良くしたい」という強い思いをお持ちの方を募集しています。過去の経験を元に営業やMarketingに関わるもよし、また、サービスを導入頂いたお客様向けのCustomer Successに関わっていただくのもよし、更には、新規事業開発を担っていただくもよし。指向性に合わせたポジションのご提案をさせていただきます。

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 以上!

A1A株式会社
代表取締役 松原脩平
 https://x.com/matsushi0706

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