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【やりすぎ?適切?】塾講師、都立高入試 出題除外範囲を語る

こんにちは。ぶんせい 小学部主任のますこ将太郎です。
今回の出題範囲の除外、「学びを止めない」覚悟のみえる判断だと受け止めています。
その理由について、現役塾講師視点で解説をしていきます。


0. 概要

休校の長期化を受けて、来春の都立高校の入試出題範囲から以下の内容が除外されることになりました。

note 除外範囲

中3学習範囲での出題範囲は7ヵ月で学習できる内容とする、という方針です。そして、願書の受付は例年通りに推薦は2021年1月21日(木)まで一般が2021年2月5日(金)・8日(月)までとなっています。(2020年6月12日時点)
出願までに、志望校を決めることができるスケジュールにはなっているということです。

また、スポーツ推薦などは、『大会の実績や、資格・検定試験等の成績に関わる内容を含めず、「実績等を証明する書類等の写し」の提出も求めない。選考は、実施要綱に従って実技検査等により行う。』とのことです。
大会やスポーツ関係の行事などが中止になった影響を受けたものですね。

1. 三平方の定理、関係詞やらなくていいの??

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「三平方の定理をやらなかったら、高校で三角関数の勉強ができないじゃないか!」
「関係詞使わなかったら、長文とか作れないじゃん!」
などのいわゆる「こんなことも知らないで高校にいったら、大変だ」という感想も多いですが、それについては明らかに誤りだと申し上げておきます。
ちゃんと読めばわかるのですが、「都立高入試では出題しない」だけで、「中学の授業で習わない」ということではないからです。

もちろん、「入試で使わないということになれば、勉強しなくなるのではないか」というご指摘もあるかと思いますが、それは入試のそもそもの目的と異なります。少々、ドライではありますが、入試の目的は「適切なレベルで教育を受けるために、能力を評価すること」です。たとえば、自分のレベルよりも高すぎる授業を受けても、「なにを言っているかわからない」ということになります。逆もまた然りで、自分のレベルよりも低いところに照準を合わせた授業では、「そんなことはわかってるよ、つまらないな」となってしまいます。であれば、自分のレベルに合わせて、教育を受けるほうが自分にとってのメリットが大きいです。だからこそ、入試ではその能力を評価し、マッチングを行うのです。
むしろ、勉強や学びを促進するのは入試の目的ではなく、教育の目的です。

また、これらの出題除外範囲は中学卒業までに学習することが求められているため、「高校での指導内容が詰め詰めになるのではないか」という懸念もないと考えます。

2. 「なにを優先したのか」を考える

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今回の出題除外においては、「なにを優先したのか」を考えたほうが、より生産的な勉強につなげやすいと考えています。
結論から申し上げますと、「教育改革」が今回の優先順位です。塾講師的観点から言えば、大学入学共通テストを見据えたものであるともいえます。

現在、大学入学共通テストに代表されるように「高大接続改革」が始まっています。
新たな価値を創造していく力として
1.知識・技能
2.思考力・判断力・表現力
3.主体性を持って多様な人々と 協働して学ぶ態度
という『学力の3要素』をバランスよく育てていくことが重視されています。

今回の、出題範囲を除外したということの目的としては、これらの要素を教育していくためということも考えられるのではないでしょうか。
本質的な部分で、「学びを止めない」という覚悟が伝わってきます。

たとえば、英語についてですが
「関係詞の分野なんか、YouTubeで探せば5分~10分で終わることじゃないか」というご批判もあるかと思います。
たしかに、関係詞のインプットの一部分ということであれば、それで完結するかもしれません。しかし、学力の3要素ということで考えれば、それはあくまで「知識・技能」の「インプット」が終わっただけです。勉強はインプットとアウトプットの連続であることは言うまでもありません。つまり、YouTubeの説明だけでは、学力の3要素のうちの1つの要素、しかもそのうちのインプットだけしか満たせていないということです。
それでは、授業だけで学力の3要素のインプットとアウトプットの両方を行っているかと言えば、そうではありません。宿題やテストなど、さまざまに仕組みを駆使しながら、さらにはインプットとアウトプットのやり方まで、教育の内容は多岐にわたっています。

だからこそ、今回の出題範囲の除外は、その絶対量を減らす配慮だったと考えられます。そしてその背景にあるのは、その本質的な「学び」を止めないための覚悟に基づくもので、教育改革を推し進めようという方針によるものだと考えることができます。

まとめ

都立高校入試の出題範囲の除外は、中学生が安心して学びを続けていくための絶対量への調整ということと受け止めています。
これまでの知識偏重の勉強では、現在の都立高校入試には立ち向かうことができません。思考力と表現力、学んだことを活かす力などを伸ばしていかなくてはならないということが、はっきりとわかるいい事例だと思います。
是非、前向きに生産的にとらえていきたいですね。

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