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2015年6月の記事一覧
いま、そこにある城下町(未定稿)
観光ガイドやパンフレットなどを見ていると、「城下町鳥取」、といったようなフレーズが目に飛び込んでくることがある。鳥取砂丘、温泉と並んで、「城下町」というのが鳥取のセールスポイントである、ということなのだろう。
しかし、このフレーズには、実際に市街地にすんでいる方、特に若い世代の方などは、多少の違和感を覚えるのではないだろうか。鳥取城跡に石垣はあっても、建造物が残っているわけではない(明治10
テクストの「場」 尾崎翠の代表的作品群(1927〜1933)の場合
1、はじめに
尾崎翠は、時に「幻の作家」などと言われることがある。
それは、実際の作品数が少ないだけでなく、作家としての評価の中心となる作品のほぼ全てが、昭和2年(1927)~昭和8年(1933)の約七年間に発表されたものであり、あたかも文化とモダニズムの1920年代の終焉とともに筆を折ったかのような印象を与えるためである 。その印象が、「モダニズム女性文学の作家」 という、実際には時期的
「フェミニズム批評」という視点が可能にする不可視領域へのアプローチ ―塚本 靖代 『尾崎翠論―尾崎翠の戦略としての「妹」について』を読む―
(2006年に刊行された塚本靖代氏の遺著の『日本海新聞』での書評。2006.7)
本書(近代文芸社、2006)は、2002年逝去された塚本靖代氏の修士論文に、雑誌論文を加えて刊行されたもので、あまりに早く逝かれた塚本氏が私たちに残された、重要な研究成果である。塚本氏は、フェミニズム批評という方法、あるいは視点から尾崎翠にアプローチした、近年の尾崎翠研究におけるキーパーソンの一人であった。
行動する理想主義者・児島幸吉
現在の鳥取ガス株式会社の創設者・児島幸吉は、近代鳥取市の生んだ最大の「行動する理想主義者」である。つい先日、須崎俊雄氏が『格子戸を破った男』という、児島幸吉を中心に据えた著作を発表されたので、児島幸吉の全体像についてはこちらを一読することをおすすめし、本稿ではガス会社の設立(大正7年)を題材に、その先見性や行動力を端的に紹介したいと思う。
大正7年という年は、様々な表情をもった年である。第一
新潮社と生田長江・春月師弟
近代出版史の基礎文献のひとつで、ずっと前に読んでそれっきりにしていた『新潮社七十年』。この前安く古書店に出てたので一応ゲットしておいたので、数年ぶりに通読してみる。必要箇所はデータ化しておいてあるので特に必要はないかと思っていたのだが、どうしてどうして。数年前に読んだときより頭に入ってる周辺情報が増えているので、結構面白く読める。
創業者・佐藤義亮のことも含めて、社史にしては中立的な筆致なの
夏の暑い夜の、妙にリアルな夢。
(2012.7 定有堂書店で開催された「私立マンガ図書館」展示用テキスト。トップの画像は山口貴由『覚悟のススメ』4巻290~291頁)
博物館学芸員経験者でありながら、僕自身はコレクター気質が皆無な人間である。新しもの好き・珍しいもの好きなので、あまり知られていない本とかモノを入手することは多いのだが、そういうモノは、だいたい手許にとどまらずに、どこかに貰われていったり買われていったりする。赤