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通訳者から見た良い言葉の遣い方

こんにちは、日伊通訳マッシ(@massi3112

通訳者にとって、一番重要な道具は何だと思う?ノートではない。電子辞書でもない。正解は「言葉」だ!
仕事の道具というのは、勉強してきた言葉、経験から学んだ言葉、観察から聞いた言葉、様々だ。

たくさん学んだ言葉の中から、パズルのように文章を作ってアレンジして口から出す。頭の中の本棚にある言葉と、周りで飛び交う言葉。記憶力と吸収力が大切だ。
さらに通訳者にとっては、コミュニケーション力も重要な道具になる。言葉をさらに伝わりやすくするには、初めて会った相手でも家族のように分かり合い、存在の違和感をいち早く無くさないといけない。そうしないと、伝えたい言葉や思いの半分も伝わらない。伝わらないことは通訳者にとっては死を意味するも同然。存在の価値がなくなってしまう。だから僕は、日々周りの人たちや遠く離れている家族、Twitterのフォロワーさんたちとの会話を大切にし、コミュニケーションを練習させてもらっているのだ。

通訳者として「言葉」はとにかく重要だが、日常生活にも同じことが言える。
相手の気持ちを考えることより先に、自分にとっての意味は合ってるのか、良いのか、深く考えたことがあるだろうか?まず自分の伝えたいことを理解し、適切な言葉選びをするべきだ。そこから、伝えた後の相手の気持ちを想像すれば、その言葉選びが適切かどうかがわかる。遠回しに言うべきか、ストレートに言うべきか、強調するか、謙るか。
たった一言で人生が変わる。たった一文字で人生を失うこともある。自分の言葉が相手に届く間に、鋭い刃物に変わってしまうようなことは避けたいものだ。

言葉というのは、このようなことができる。
うまく使えば時間を稼いだり誤魔化したり、相手の気持ちや会話を誘導したりできる。悪く使えば傷つけてしまう。最悪の場合、自分で自分を殺す可能性もある。身体的な痛みより気をつけるべきことは、精神的なダメージ。信頼感もそうだ。作るのは一生を掛けても難しい時があるが、裏切り者になるのは一瞬だ。

僕が思う、言葉遣いで気を付けるべきことを書いてみた。

言葉遣いの理解はしてる?
外から教えてもらわないと自分で気が付かない。

出来てるつもりだが、意外に間違ってる
間違ったまま覚えたか、うまくいってると思いながらミスが出るか。
リセットのため、基本のことから学ぶべき。

丁寧語を覚える
丁寧語は難しくはないないが、意外に使わない。使ったらミスが出る。
まずは、決まった文句から覚えるべき。

美化語を覚える
一番重要でミスったら恥ずかしい。わからない場合、周りの人に聞くことより、本や辞典で調べるのがおすすめ。

話す目線を考える
無知識で失礼な目線になることが多い。使ってる言葉の意味は目線によって、
変なニュアンスになる時もある。

ここからは、アパレル業のベテランから見た意見を頂いたので公開する。

この業界に携わるには時代や人、流行の移り変わりに敏感になり柔軟に適応することを求められるが、それよりもさらに重要なことがある。
「変わらないもの」を忘れないことだ。
これは、人として大切にしなければいけないこと。礼儀、作法、表情、そして言葉遣い。あげればキリがない。

日々、たくさんのお客様と接する中で年代や性別、人柄に合わせて、相手にとって最も「心地の良い言葉」を選ぶとこが重要だ。とても難しく、自分が良かれと思って放った言葉が相手にとって良くない言葉に受け取られることもある。急に実践しようと思うとできないに等しい。でもできると、スーパー販売員にかなり近づく

スタッフにお客様との距離の縮め方を指導するにあたって、まず最初に訓練するのは「言葉遣い」だ。なぜなら、訓練すれば必ずできるようになるからだ。そして、お客様にとってお店の印象を左右する最も重要な部分だからでもある。

私が店長になりたての頃にあったある出来事の話をしようと思う。
ある新人スタッフに、接客について指導した後、実際にお客様に接客に入ってもらった。商品の知識や合わせ方のバリエーション、接客スキルや万が一のクレーム対応まで、一通りのことを教え終わっていた。ただ一つ、言葉遣いを除いては。
お客様はご高齢の身なりの良い優しげなマダムだった。新人スタッフと親しげに笑顔で会話をしている様子を遠目で見て、安心しきっていた。
私は少しの間席を外し、お店に戻るとそのお客様はいなくなっていた。悲しげな表情の新人スタッフ。何があったのか聞くと、「わからない。お話しているうちに、お客様の表情が硬くなりそのまま帰られてしまった。」と言うのだ。
その時の様子やお話の内容を詳しく掘り下げるうち、ある違和感に気がついた。スタッフは「可愛いですよね」という言葉を連呼していた。わかる方はきっと気がつくと思うが、そのお客様にとって「可愛い」という言葉は適切ではない。「素敵ですね」「綺麗ですね」が適切だ。
新人スタッフとの会話はお客様にとって、心地が良くなかったのでは。そう感じた。
数日後、ありがたいことに再来店してくださったそのお客様は、その日は満面の笑みで帰られた。言葉遣いを学び直した新人スタッフと一緒に選んだ、素敵なバッグを抱えながら。

私がなぜ新人スタッフに言葉遣いを教えなかったのかというと、会話やロープレの中で気になる点がなかったからだ。むしろ、お客様との距離を縮めることがとても得意だと感じた。それは、新人スタッフと同年代の「私」にとって、彼女の言葉が心地良いと感じたからだ。
ところが、私にとっての当たり前は、当たり前ではないことを目の当たりにした。販売員として、来店してくださったすべてのお客様にとって居心地の良い空間を提供するために、すべてのスタッフに言葉遣いについてをまず、訓練すべきなのだと感じた。

難しい言葉は必要ない。分かりやすいありのままの言葉が大切だ。その言葉を相手のために適切な表現にして送る。そうすることで、お客様と販売員の垣根を越えて、人と人の関わり合いとして相手に喜びを与えられる。それが私が思う、良い販売員としての必須スキルだ。

マッシさんと私は、職業は全く違えど一つだけ共通していることがある。人を相手にする職業だということだ。お金を稼ぐことよりも、相手のために動くことが目的だ。仕事に対しての報酬は、結果でしかない。
綺麗事と受け取られるかもしれないが、あえて言わせてもらう。
お金よりも価値のあるものは、相手の笑顔であり相手の幸せだ。私はそのために、販売員をしている。

このノートを読んでいるすべての方へ、少しでも心地の良い時間を過ごしていただけることを願う。

Massi

みなさんからいただいたサポートを、次の出版に向けてより役に立つエッセイを書くために活かしたいと思います。読んでいただくだけで大きな力になるので、いつも感謝しています。