“糸”と“思い”を紡いでいく
祖母は手芸が好きだった。
ティッシュケースや小さなポーチ、トートバッグなどを作ってもらった思い出がある。私が今も手芸が好きなのは、祖母の影響が大きいのだろう。
その祖母が使っていた、刺繍糸。
今はもう使われることがほとんどないけれど
まだたくさん残っている。
その糸を使っても良いと、母から許可をもらえた、最近のこと。
「平家物語」と書かれた古風な箱に、カラフルな糸が目一杯詰まっていた。
聞けば、美味しいお菓子が入っていた箱だそうだ。
これを一つ一つ紐解き
先日、無印良品で購入した透明のケースにしまっていく。
…すると、祖母の思いが伝わってくる気がした。
同じ色を2、3本購入されている糸を見つけると
「この色の糸、お気に入りだったんだね」
赤、黄色、緑など、ビビットな色を見つけると
「植物かな、それともキャラクターかな」
「子供の頃の私や母のものに、よく使う色だったんだろうな」
ラメの入っている糸や、グラデーションの糸が別の袋に入っているのを見て
「他のものと分けてあるんだ。ちょっと特別感あるもんね」
…こんな風に、糸を大切にしていた当時の祖母と、会話をしているようだった。
一箱の中に、こんなにたくさんあったんだ…と、驚いた。
一色ずつケースにしまえたなら、まるで手芸屋さんのようなボリュームになったかもしれないなと、見ているだけでもワクワクしてしまう。
他にも収納するスペースを残しておきたくて
詰めて詰めて、何とか3段と半分に納まった。
もうすでに傷んでしまっていたものもあったけれど
ほとんどの糸が、まだ十分使える。
この他にもミシン糸や布の端切れ、フェルトなど、まだたくさんの素材が残っていて、またケースを購入しては、収納して使いたくなりそうだ。
さあ、この糸で、何を作ろう。
祖母から受け継いだ、“虹色の刺繍糸たち”。
私はここから、何を生み出せるだろうか。
祖母のように上手には活かせないかもしれないけれど
少なくとも「手芸が好き」という思いだけは、これからも抱きしめて生きていこうと思う。
祖母が教えてくれた「手芸が好き」な気持ちは、
「音楽が好き」な気持ちと同じ。
「映画が好き」な気持ちと同じ。
私を私たらしめる、私の大切な一部だ。
だからこそ
“糸”も、“思い”も大切にしていきたい、と思うのだ。
「雑誌で見たこれ、作ってみたい」とか
「今はこれが自分で作れるんだよ、やってみよう」とか
こんな話を、またできたらいいのに。
…そんなことを思いながら
ひとまず、たくさんの糸を収納できて、大満足。
この収納ケースが部屋にあるだけで
まるで“部屋の中に虹がかかった”ようだ。
彩りが増えて
気持ちも明るくなる。
何を作ろうかとワクワクする。
おばあちゃん、ありがとう。
一本一本、大切に使わせてもらうね。
何か作品ができたら、また報告しに行こう。
2024.8.8
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