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数分間。手芸屋さんにて。
今日は久しぶりに手芸屋さんへ。
布の匂い。
ほのかに金属の匂い。
オルゴールのBGM。
小さな音量で流れる、小さなテレビの音。
小さな話し声。
そして、一人静かにミシンを動かす店員さんの
小さな声の「いらっしゃいませ」。
普通に考えればなんてことない光景なのだけど
手芸屋さんはいつも、ちょっとだけ独特な雰囲気を感じる。
色々な種類の布
細い糸
太い紐
皮のベルト
レース
ボタン
リボン…
あらゆるパーツが揃っていて
飽きないと思う時と、目が回ってしまう時がある。
その材料の匂いと、少しだけ鉄のような、金属の匂いを感じる。
ミシンかな。機械の匂いや、金、銀、銅などのパーツたち。
それから、図書館のような、本屋さんのような
「大声では話さない」という暗黙のルールがある感じ。
…でもだからと言って、声を抑えている人は一人もいなくて
ただ静か目な人が多い場所なだけなのかもしれない。
色々試してみたくて、本を見たり、細かい部品や必要な道具を見て回った。
「“A”の金具と“B”の金具、それぞれの使い方」
という説明の書かれた紙が、数十枚、突然壁にぶら下がっているのを発見。…そして一枚、ピッと破って持ち帰る。
このアナログ感が、たまらなく好きだと思うのだ。
…すると、白髪の綺麗なおばさまと、後ろから遠慮がちについて来ている若めのご夫婦がやってきた。
私がパーツを見ていると、店員さんかと思ったらしい。
「すみません、ちょっと良いかしら?」とおばさまに声をかけられてしまった。
その後すぐに店員さんが現れ、私は軽く会釈をして自分のパーツ探しに戻る。
おばさまが店員さんに積極的に話しかけ、
「これはどうかしら?」
「あら、これも楽しそうだわね!」
と、話が弾んでいる。
ご夫婦は「何もわからないので、任せます」というスタンス。
どうやら、お孫さんの何かを作ろうとしているようだった。
…しばらくすると、スキンヘッドのちょっと強面の男性が一人、大股で歩いていて、背中で何度もすれ違う。
あの小さな手芸屋さんを、おそらく3周くらいした頃だろうか。
結局店員さんに場所を聞き、しばらく吟味していた。
その場所は、先ほど私も見た。
上履きなどを入れるバッグの手持ちによく使われる、太めのベルトのコーナーだ。
彼が作ってあげるのだろうか。
いや、買い物を頼まれたのかもしれない。
…そんなことを考えつつ、再び自分のパーツ探しに戻る。
自分のパーツ探しに集中していても、周囲の様子が手に取るようにわかるくらいには、静かでアットホームな雰囲気なのだ。
数分間しかいなかったと思うけれど
案外色々な人が手芸屋さんにやってきて、新鮮だった。
そして、何か「物を作る」人々の“きっかけ”に思いを馳せるだけで
なんだか心が丸くなっていったような気がした。
そういえば以前、他の手芸屋さんでも
私と同じ場所を何度もくるくると見て吟味している女性がいて、「ハンドメイド作家さんかな。それとも趣味なのかな。」と思ったことがある。
その後、小さなお子さんが2人、「ママー!」とやってきて
なんだか「ああ、素敵だな。」と思った。
どれも素敵な光景に見えるけれど、実際の事情はわからない。
…もしかしたらその女性は、作る楽しみよりも、疲れの方が勝っているかもしれない。「ママー!」に対する返事はなかったような気がする。
最初のおばさまとご夫婦は、
ご夫婦の方は、本当はあまり乗り気じゃなかったのかもしれない。
スキンヘッドの男性は、子供のためじゃなく、自分用の何かのために買いに来ていたのかもしれないし、手芸が大好きなのかもしれない。
…それも含めて
色々な人が、色々な事情を抱えて、私と同じ場所にやってきた。
そこが、“手芸屋さん”だった。
どんな事情があろうと
これから、彼らの手によって
この無限のようにあるパーツを紡いで
何か新しい作品が、この世界に生まれるのかもしれない。
そのことがなんだか、とても尊いことのように感じた今日だった。
…それにしても
新しいことを始めるというのは何かとエネルギーが要る。お金もかかる。
それでも私はやるぞ。
なんのためにやるのか。
意味はきっと、後からわかるんだろうな。
2024.7.14
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