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近藤 真弥
2023年2月14日 08:01
2023年2月9日、韓国ドラマ『愛と、利と』の最終回が放送された。KCU銀行ヨンポ店で働く4人の男女を中心としたメロドラマである本作は、恋愛至上主義ではない恋愛ドラマと言える作品だ。スヨン(ムン・ガヨン)、サンス(ユ・ヨンソク)、ミギョン(クム・セロク)、ジョンヒョン(チョン・ガラム)はそれぞれの恋愛模様を見せてくれるが、4人とも誰かと結ばれることなく物語は終わる。 本作を観て特に興味深いと
2022年9月12日 17:09
2022年9月6日、イギリスの保守党で党首を務めるリズ・トラスが第78代首相に就任した。就任後すぐトラスは組閣に取りかかり、主要閣僚を順次発表していった。 トラスの人選は大きな注目を集めた。ガーナ系のクワーテング財務相、ケニアとモーリシャスがルーツのブレイバーマン内相といった面々を登用し、多様性をアピールしたのだ。 白人男性以外が要職を担うトラス政権は、一見すると進歩的に見えるかもしれない
2021年7月19日 06:58
『ウォーターマン』は2020年のアメリカ映画。同年の第45回トロント国際映画祭でプレミア上映後、2021年5月にアメリカの一部劇場で公開された。現在はネットフリックスを介し全世界で観られる。監督は俳優のデヴィッド・オイェロウォが務め、脚本はエマ・ニーデルが書いた。オイェロウォにとっては初の監督作品である。 物語は、ロニー・チェイヴィス演じるガンナーの切実な想いが軸だ。ガンナーの母親メアリ
2021年5月23日 17:37
『ムーブ・トゥ・ヘブン』は、今年5月にネットフリックスで配信が始まった韓国のドラマ。監督は映画『お料理帖 息子に遺す記憶のレシピ』(2018)などで知られるキム・ソンホ、脚本はユン・ジリョンが務めている。 物語は、アスペルガー症候群のグル(タン・ジュンサン)と、グルの後見人サング(イ・ジェフン)を中心に進む。遺品整理士として、2人は故人の想いや人生を解きあかしていくというのが基本的なストー
2021年3月31日 13:53
コーラル(ヴェロニカ・サンチェス)、ウェンディー(ラリ・エスポジット)、ジーナ(ヤニ・プラド)という3人のセックスワーカーが逃亡劇を繰りひろげる『スカイ・ロッホ』は、ネットフリックス作品のなかでも特に配信を楽しみにしていた。ドラマ『ペーパー・ハウス』(2017〜)でも良い仕事を果たしたアレックス・ピナやエステル・マルティネス・ロバトなどが制作/脚本に関わり、劇中で使われる音楽は筆者が好きなポ
2021年2月24日 10:51
『この茫漠たる荒野で』は、2020年に公開されたアメリカの西部劇映画。監督には『ブラディ・サンデー』(2002)などで知られるポール・グリーングラスを迎え、主演はトム・ハンクスが務めている。アメリカ以外の国々では、2021年2月10日からネットフリックスで観られるようになった。 本作は1870年のアメリカを舞台に、ニュースの読みきかせで日銭を稼ぐ退役軍人のジェファーソン・カイル・キッド(
2021年2月8日 10:31
『スペース・スウィーパーズ』は韓国のスペースオペラ映画だ。地球が荒廃した2092年の世界を舞台に、宇宙のゴミを収集する宇宙船、勝利号のクルーが活躍する様を描いている。 監督は、『私のオオカミ少年』(2012)や『探偵ホン・ギルドン 消えた村』(2016)などで知られるチョ・ソンヒ。主演はソン・ジュンギとキム・テリが務めた。 本来は2020年に韓国で封切りを迎える予定だったが、新型コロナの
2021年1月12日 19:32
『都会の男女の恋愛法』は、2020年12月22日から韓国のkakaoTVで放送されているウェブドラマ。チ・チャンウクとキム・ジウォンを主演に迎え、都会で生活する男女の複雑な恋愛関係や気持ちを描いた群像劇だ。日本でもネットフリックスを介し、ほぼリアルタイムで観られる。 筆者は基本的に、ドラマ評は全話放送されてから書くようにしている。ある回だけがおもしろくても、全体で観たら微妙な作品も少なく
2021年1月7日 12:27
『保健教師 アン・ウニョン』は、韓国の作家チョン・セランによる小説『保健室のアン・ウニョン先生』を原作としたドラマ。アン・ウニョン役には映画『82年生まれ、キム・ジヨン』でも主演を務めたチョン・ユミ、ウニョンと共に行動する同僚教師ホン・インピョ役にはナム・ジュヒョクが迎えられている。 物語は、赴任中の学校で起こる不可思議な現象を、ウニョンとインピョが解決していくというもの。 ウニョンは
2020年10月26日 09:21
燃える信号機と、火炎放射器を手にするエマ。チリの映画監督パブロ・ララインの最新作『エマ、愛の罠』は、観客の目を引きつけるシーンばかりだ。多彩な色使いに明暗を上手く使いわけた照明など、“おもしろい絵”を作りあげる技法は匠の域に達している。 物語は、エマ(マリアーナ・ディ・ジローラモ)とその夫・ガストン(ガエル・ガルシア・ベルナル)が中心だ。2人は養子を迎えいれるが、とある事件せいで子供は施
2020年10月12日 07:41
チョ・ナムジュによる小説『82年生まれ、キム・ジヨン』が発表されたのは、2016年10月のこと。韓国で生活するジヨンという女性に降りかかる抑圧と、それを巧みに描写した筆致は瞬く間に注目を集めた。こうした特徴の影響か、フェミニズム小説と紹介する者もいる。2018年12月には邦訳版が出版されるなど、盛りあがりは韓国以外の国にも広がった。 『82年生まれ、キム・ジヨン』といえば、アイリーン(レ
2020年8月12日 19:39
イギリスのラップ・シーンは、おもしろさが増すばかりだ。スークースといったコンゴの音楽をUKガラージやUKドリルと接合するバックロード・ジーなど、興味深いラッパーが次々と出てくる。その一方で、マイク・スキナーは久々にザ・ストリーツ名義のアルバム『None Of Us Are Getting Out Of This Life Alive』(2020)を発表し、健在ぶりを見せつけてくれた。若手からベテ
2020年8月11日 07:58
ベルリン国際映画祭2018において、アディナ・ピンティリエ監督の初長編映画『タッチ・ミー・ノット』が大きな注目を集めた。最優秀新人作品賞のみならず、ウェス・アンダーソン監督の『犬ヶ島』(2018)といった有力なノミネート作品を抑え、金熊賞(同映画祭の最高賞にあたる)も獲得したのだ。 本作はローラ(ローラ・ベンソン)の視点を中心に物語が進む。人に触れられると拒否反応を起こしてしまう障がいが
2020年5月11日 21:26
映画やドラマを観るとき、あなたはどこに注目していますか? 役者の演技、制作陣のスキル、脚本のおもしろさなど、さまざまな楽しみ方があると思います。 今回筆者が取りあげるのは、“色”の視点から楽しむことです。徳井淑子さんによる著書『黒の服飾史』(2019)などが示すように、“色”は時代ごとに異なるイメージを纏っています。たとえば、中世以前の黒は“貧しさ”や“醜さ”を象徴する色でした。ところが