ふくだまさと

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記事一覧

水彩画

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九月の詠草

独りだけほんとうの友を持ちなさい、上京の朝母は云ひたり くずの葉に夏枯れはなく繁茂する思案の末のつるの絡まり 車窓から昔に住みし街を過ぐ三本松の太さの時間 …

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八月の詠草

(八月の詠草) まる文字の絵日記残る子ども等と一度っきりの沖縄旅行 熟睡の赤子の首を仰け反らし母はスマホに指はしらせる 鶴橋の赤身にロースカルビ肉焼肉ランチに友ら…

ふくだまさと
1か月前
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歌集「あふれよ」道浦母都子を読む

歌集「あふれよ」道浦母都子を読む 道浦さんは小池光さんや永田和宏さんと同年であり、小生ともほぼ同年代である。何度か歌会に参加させていただき親しみを持っている歌人…

ふくだまさと
1か月前
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七月の詠草

(七月詠草) ワイシャツの襟の型紙外しつつ何年ぶりの余所行きとなす 同世代の訃報を聞くたび延びちぢむゴム紐のやうな余命を数ふ(NHK短歌) 月見草萎れる花のをちこちに…

ふくだまさと
2か月前
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六月の詠草

六月の詠草 一年に十日ほどなる快晴に白山嶺の雪は眩しき 陶板を並べたやふな見張田を新幹線は切り裂きて行く 面会にわが息と分かる母なれど我に解らぬ昔話りす 一時間噛み…

ふくだまさと
3か月前
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五月詠草

ひきこもる子らの育てし綿の実を摘む我の手に棘の刺さりぬ 真白なるつつじの花に露おりて蕊の末まで白くさわやぐ 四枚の総苞片(そうほうへん)に抱かれし花水木咲く白のまぶ…

ふくだまさと
4か月前
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今月の詠草

卯月詠草 さわやかな季節を迎えて外出が多くなりました。 昨日より空が青いとそれだけで幸せになる燃えるごみの日 三十年住まゐし大和郡山お城の枝垂れ車窓をよぎる 蛇行…

ふくだまさと
5か月前
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三月の詠草

三月の詠草 (三月詠草) HAND OFF RAFAHと掲げる人人の声届けよとルミネの空に 昼食はフルーツゼリー君の卓たまに塩パンひとつくはへり 強風に千切れしはぐれ雲ひとつ…

ふくだまさと
6か月前
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令和六年二月の詠草

(二月詠草) ほの昏く常夜灯つく境内に五年ぶりなる旧友のかを くじ引けば待ち人の項嬉しかり「連絡もなく来る人がいる」 おたがひに顔窺ひて交はしをり「いよつ」「おお…

ふくだまさと
7か月前
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令和六年一月の詠草

元旦から地震や飛行機の事故など大荒れの幕開けとなった。穏やかな年であれかしと思う今日この頃である。 (一月の詠草) 冬枯れの花壇のすみに辣韭のひと群のこるむらさ…

ふくだまさと
8か月前
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苗木城跡

ふくだまさと
10か月前
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令和5年自選歌集 できました。

恒例の年末自選歌集を作成しました。 令和五年 自選歌集     (春) 淡雪を秀先にのせる美山杉渓(たに)のなだりに無音の満ちる(角川短歌5月号) ひらひらとひかり…

ふくだまさと
10か月前
5

九月の詠草

独りだけほんとうの友を持ちなさい、上京の朝母は云ひたり

くずの葉に夏枯れはなく繁茂する思案の末のつるの絡まり

車窓から昔に住みし街を過ぐ三本松の太さの時間

たっぷりとフリーズドライに湯を注ぐケヤキ並木に野分たつまで

揺れる時カツンと鳴らすつり革の市電は軋む銀閣寺道

バス停は<上終町・瓜生山京都芸術大学前>に

週二回バケット買ひし<DОNQ>閉じ解体中の看板が残る

自画像

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八月の詠草

(八月の詠草)
まる文字の絵日記残る子ども等と一度っきりの沖縄旅行
熟睡の赤子の首を仰け反らし母はスマホに指はしらせる
鶴橋の赤身にロースカルビ肉焼肉ランチに友ら集へる
肉食のけもののごとく噛みしめる甘き脂を滴らす夏
溶炉から吹く風のごと炎熱に父の職場を思い出したり
鉄の〈湯〉を鋳型に注ぐ仕事なり菜つ葉服にはの汗染む
桑の木を教へられたり葉うらには太く隈なく葉脈のあり
桑の木の夏の陽ざしに繁る葉は

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歌集「あふれよ」道浦母都子を読む

歌集「あふれよ」道浦母都子を読む

歌集「あふれよ」道浦母都子を読む

道浦さんは小池光さんや永田和宏さんと同年であり、小生ともほぼ同年代である。何度か歌会に参加させていただき親しみを持っている歌人のひとりである。これまでにアンソロジーでは歌に接してきたが、歌集を一冊鑑賞したのは「あふれよ」が初めてだ。
通読して感じたのは、母、父、姉といった家族との葛藤、多くは記憶の中で詠われている。二つ目は全共闘世代のイメージにいつまでも引っ張ら

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七月の詠草

(七月詠草)
ワイシャツの襟の型紙外しつつ何年ぶりの余所行きとなす
同世代の訃報を聞くたび延びちぢむゴム紐のやうな余命を数ふ(NHK短歌)
月見草萎れる花のをちこちに昨夜の宴の名残りのごとし
蟹萬寺八尺八寸の釈迦如来くちをへの字に渋き顔なり
亡き友の声に似ている人のゐて播州人かと聞けずに別る
花咲けば花の名前の寺になるあじさい苑の料金加ふ(文月歌会)
「おめでとう」に素直になれずいちごケーキのうす

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六月の詠草

六月の詠草
一年に十日ほどなる快晴に白山嶺の雪は眩しき
陶板を並べたやふな見張田を新幹線は切り裂きて行く
面会にわが息と分かる母なれど我に解らぬ昔話りす
一時間噛み合わぬまま面会を終へて川面に鯉はゆらぎぬ
桜木の青葉あをあを繁りゐてひと葉ひと葉に雨滴(うてき)をとどむ
アイライン鮮やかに描く六弁花(ろくべんか)庭石菖(にわぜきしょう)は外来種なり
紅をひくきみの背中は何時やらむ川辺に摘みぬ夕化粧花

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五月詠草

ひきこもる子らの育てし綿の実を摘む我の手に棘の刺さりぬ
真白なるつつじの花に露おりて蕊の末まで白くさわやぐ
四枚の総苞片(そうほうへん)に抱かれし花水木咲く白のまぶしさ
爪立ちてひと房よせて匂ひ合うライラック花あはき甘さよ
わた雲は五月の空に病む妻を残す散歩をためらひてゐる
車椅子のきみと愉しむはじめてのふたり散歩は公園までの
草の名を当てっこしつつ川べりに車椅子こぐきみ蝶のごと
タンポポとシロツ

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今月の詠草

卯月詠草
さわやかな季節を迎えて外出が多くなりました。

昨日より空が青いとそれだけで幸せになる燃えるごみの日
三十年住まゐし大和郡山お城の枝垂れ車窓をよぎる
蛇行剣ひとめ見むとてさまざまな顔並びたる畝傍のふもと
一丈の大剣(おおつるぎ)にて伝へしはヤマトを統べる気概にあらむ
赤さびの混じりし剣(つるぎ)置かれしを意外に薄いとひとの言いたり
〈筑前〉に〈福島太夫〉〈正宗〉と町名たどり街あるきをり

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三月の詠草

三月の詠草

(三月詠草)
HAND OFF RAFAHと掲げる人人の声届けよとルミネの空に
昼食はフルーツゼリー君の卓たまに塩パンひとつくはへり
強風に千切れしはぐれ雲ひとつぐんぐと往く山背のそら
黒土の古墳の縁を登りゆく春の陽ざしの青谷梅林
ベンチにはシニア夫婦の語りをりお花見セットを分けて酒酌む
枝さきの地につくほどに枝垂れたる梅の古木は爛漫に咲く
田の畦にオオイヌノフグリは真つ先に空より青

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令和六年二月の詠草

(二月詠草)
ほの昏く常夜灯つく境内に五年ぶりなる旧友のかを
くじ引けば待ち人の項嬉しかり「連絡もなく来る人がいる」
おたがひに顔窺ひて交はしをり「いよつ」「おお」とは味気なきかな
仕舞屋のやうな蕎麦屋のゆずの香の五十年経てよみがへりくる
「うっちー」の名で逃れたる桐島の来し方思ふ、同年なれば
ゆつくりと尽きる温もり感じつつ「貼る用」剥がす午前四時ごろ
「行」の字を「様」に書き換へ今月も介護利用票

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令和六年一月の詠草

元旦から地震や飛行機の事故など大荒れの幕開けとなった。穏やかな年であれかしと思う今日この頃である。

(一月の詠草)
冬枯れの花壇のすみに辣韭のひと群のこるむらさきの花
大地震に飛行機事故と立てつづくデジャブのよふな映像やまず
警報に「逃げろ」と叫ぶ女子アナの子を叱るごと繰り返し言ふ
若き日の「ランプの宿」に泊まりしを妻と語らふ元旦の夜
ゆるやかに波打つ丘の上下する君の寝息に余韻の残る
ふるさとに

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令和5年自選歌集 できました。

恒例の年末自選歌集を作成しました。

令和五年 自選歌集    

(春)
淡雪を秀先にのせる美山杉渓(たに)のなだりに無音の満ちる(角川短歌5月号)
ひらひらとひかりをかへす葉群れには山茶花笑ふ一休の寺
薄紅の衣を纏ふ蕊のふさ陽射しにむかふ甘南備の径(京都短歌2/2)
能楽の発祥の地とふ薪社に詣でる人とちらほら出会ふ
百円の柚を土産に帰り来てミサイル繁き映像を見ゆ

(夏)
ぬばたまの遮光シート

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