五月詠草

ひきこもる子らの育てし綿の実を摘む我の手に棘の刺さりぬ
真白なるつつじの花に露おりて蕊の末まで白くさわやぐ
四枚の総苞片(そうほうへん)に抱かれし花水木咲く白のまぶしさ
爪立ちてひと房よせて匂ひ合うライラック花あはき甘さよ
わた雲は五月の空に病む妻を残す散歩をためらひてゐる
車椅子のきみと愉しむはじめてのふたり散歩は公園までの
草の名を当てっこしつつ川べりに車椅子こぐきみ蝶のごと
タンポポとシロツメクサは知ってても草フジの名を君は知らざり
朝がきてきみの紅茶にとろみ付く増粘剤をゆるく溶きつつ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?