ふくだまさと

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今月の詠草

卯月詠草 さわやかな季節を迎えて外出が多くなりました。 昨日より空が青いとそれだけで幸せになる燃えるごみの日 三十年住まゐし大和郡山お城の枝垂れ車窓をよぎる 蛇行剣ひとめ見むとてさまざまな顔並びたる畝傍のふもと 一丈の大剣(おおつるぎ)にて伝へしはヤマトを統べる気概にあらむ 赤さびの混じりし剣(つるぎ)置かれしを意外に薄いとひとの言いたり 〈筑前〉に〈福島太夫〉〈正宗〉と町名たどり街あるきをり 喫水のぎりぎりにして水脈をひき屋形船ゆく花吹雪くなか 濠川を押し流れくる水圧をう

    • 三月の詠草

      三月の詠草 (三月詠草) HAND OFF RAFAHと掲げる人人の声届けよとルミネの空に 昼食はフルーツゼリー君の卓たまに塩パンひとつくはへり 強風に千切れしはぐれ雲ひとつぐんぐと往く山背のそら 黒土の古墳の縁を登りゆく春の陽ざしの青谷梅林 ベンチにはシニア夫婦の語りをりお花見セットを分けて酒酌む 枝さきの地につくほどに枝垂れたる梅の古木は爛漫に咲く 田の畦にオオイヌノフグリは真つ先に空より青く散らばりて咲く ぬれ落ち葉をさし貫きて水仙の細き葉先に春の陽さしぬ チューリッ

      • 令和六年二月の詠草

        (二月詠草) ほの昏く常夜灯つく境内に五年ぶりなる旧友のかを くじ引けば待ち人の項嬉しかり「連絡もなく来る人がいる」 おたがひに顔窺ひて交はしをり「いよつ」「おお」とは味気なきかな 仕舞屋のやうな蕎麦屋のゆずの香の五十年経てよみがへりくる 「うっちー」の名で逃れたる桐島の来し方思ふ、同年なれば ゆつくりと尽きる温もり感じつつ「貼る用」剥がす午前四時ごろ 「行」の字を「様」に書き換へ今月も介護利用票返送したり 暖冬と思へば寒波くるべしと気象予報士芸人のごと 春の日に語るでもなく

        • 令和六年一月の詠草

          元旦から地震や飛行機の事故など大荒れの幕開けとなった。穏やかな年であれかしと思う今日この頃である。 (一月の詠草) 冬枯れの花壇のすみに辣韭のひと群のこるむらさきの花 大地震に飛行機事故と立てつづくデジャブのよふな映像やまず 警報に「逃げろ」と叫ぶ女子アナの子を叱るごと繰り返し言ふ 若き日の「ランプの宿」に泊まりしを妻と語らふ元旦の夜 ゆるやかに波打つ丘の上下する君の寝息に余韻の残る ふるさとに日頃の無沙汰かへりみず無事を確かむ従弟ら三人 五日目に救出されし九十歳は雨を啜り

          令和5年自選歌集 できました。

          恒例の年末自選歌集を作成しました。 令和五年 自選歌集     (春) 淡雪を秀先にのせる美山杉渓(たに)のなだりに無音の満ちる(角川短歌5月号) ひらひらとひかりをかへす葉群れには山茶花笑ふ一休の寺 薄紅の衣を纏ふ蕊のふさ陽射しにむかふ甘南備の径(京都短歌2/2) 能楽の発祥の地とふ薪社に詣でる人とちらほら出会ふ 百円の柚を土産に帰り来てミサイル繁き映像を見ゆ (夏) ぬばたまの遮光シートに包まれしお茶の新芽の摘まれるを待つ(京都文芸6/5) 梅雨明けを待ってたように

          令和5年自選歌集 できました。