令和六年二月の詠草

(二月詠草)
ほの昏く常夜灯つく境内に五年ぶりなる旧友のかを
くじ引けば待ち人の項嬉しかり「連絡もなく来る人がいる」
おたがひに顔窺ひて交はしをり「いよつ」「おお」とは味気なきかな
仕舞屋のやうな蕎麦屋のゆずの香の五十年経てよみがへりくる
「うっちー」の名で逃れたる桐島の来し方思ふ、同年なれば
ゆつくりと尽きる温もり感じつつ「貼る用」剥がす午前四時ごろ
「行」の字を「様」に書き換へ今月も介護利用票返送したり
暖冬と思へば寒波くるべしと気象予報士芸人のごと
春の日に語るでもなく陽ざしうく「家族ゲーム」の家族のやふに
念仏寺、犇めきて咲く紅梅を撮る人のゐて、我も撮りたり


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