六月の詠草

六月の詠草
一年に十日ほどなる快晴に白山嶺の雪は眩しき
陶板を並べたやふな見張田を新幹線は切り裂きて行く
面会にわが息と分かる母なれど我に解らぬ昔話りす
一時間噛み合わぬまま面会を終へて川面に鯉はゆらぎぬ
桜木の青葉あをあを繁りゐてひと葉ひと葉に雨滴(うてき)をとどむ
アイライン鮮やかに描く六弁花(ろくべんか)庭石菖(にわぜきしょう)は外来種なり
紅をひくきみの背中は何時やらむ川辺に摘みぬ夕化粧花
セルフレジに話し相手のひとり減り収容所のごと並びをリ
単弦のアーチで支ふ大橋を土砂満載のダンプが揺らす
目覚むればホワイトアウトの朝にして昨夜(よべ)の時雨の霧となりしや

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