九月の詠草

独りだけほんとうの友を持ちなさい、上京の朝母は云ひたり

くずの葉に夏枯れはなく繁茂する思案の末のつるの絡まり

車窓から昔に住みし街を過ぐ三本松の太さの時間

たっぷりとフリーズドライに湯を注ぐケヤキ並木に野分たつまで

揺れる時カツンと鳴らすつり革の市電は軋む銀閣寺道

バス停は<上終町・瓜生山京都芸術大学前>に

週二回バケット買ひし<DОNQ>閉じ解体中の看板が残る

自画像を下宿の壁に描きし君おもてを伏せてロダンを想ふ

いちめんの葱畑なりし岩倉の病院の窓ひとつ灯れり

最後まで友と思ひし君なればウメバチソウに騙されて善し

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