いいモノ探し《徳島県神山町 隠された図書館》

こんにちは、マサラチャイです。

暮らしにまつわるコラムやエッセイを趣味で書いている百貨店員です。

いいモノ探し。
こちらの記事では、マサラチャイが日常生活で見つけたいいモノについて自由気ままに語っています。

最近、ポッドキャストにハマっています。
J-webのtakuramラジオのポッドキャスト版をよく聴いているのですが、パーソナリティの渡邉康太郎さんが徳島県神山町のある取り組みについてお話されていて、興味を持ちました。

<神山アーティスト イン レジデンス>
(以下略KAIR)

KAIRは公募により世界各地から選ばれた毎年3名から5名のアーティストが、8月末頃から2ヶ月間ほど神山町に滞在し、滞在期間中にアート作品を製作し、10月にアート作品の展覧会を行うというプロジェクトです。

この取り組み自体も、神山町面白いことしてるなーと思ったのですが、ある作品について、とても興味を持ちました。

<隠された図書館 hidden library>

作家の出月秀明さんにより制作された「隠された図書館」です。
本を借りるのではなく、預ける図書館。

本を預けられるのは、神山町の方々だけで、しかも卒業・結婚・退職という人生の節目の3回だけ。
1回でも本を預ければ、図書館の鍵をもらえて、いつでも中に入れるというもの。

ちょっと気になる図書館ですよね。
まず、人生で3冊だけしか預けられないというのが面白いなと思いました。

人生の節目に選ばれる本って、その人物の思想とか人生の選択に少なからず影響を与えた本なのではないかと思います。

だから、自分が再び図書館を訪れた時に、預けた本を読み返してみて、当時のことを思い出したりとか、単に本を読むこと以上の体験が生まれる。

また、本を預けられるのは、人生に3回だけと決めることによって、本を預ける前に自分の中の傑作選を選ぶ作業をしなければならない。
本を預ける前から思考がはじまり、自分の記憶を辿っていく。

それから、不特定多数の方々が本を預けているわけなので、たまたま手に取った本が、誰かの思想や人生に影響を与えたのかもしれないと、知らない人の人生を想ったり、誰かの思考の中を覗き込むような感覚になる。

まさに、自分の、誰かの思想や人生の選択が隠されているような図書館。

わたしは神山町には住んでいないので、中に入ることはできませんが、一度でいいので訪れてみたい図書館です。

<体験を生む新しいデザイン>

「隠された図書館」の面白さって、本来ある図書館のシステムとは逆のことをして、自分自身を再確認する体験や本を通して他者の思想と繋がる体験を生んでいるということ。
従来の図書館とは別の価値が生まれていて、モノづくりって面白いなと感じました。
モノを作ってるけど、結果的にコトの提供もしている。
そんなデザインをこれからも探してみたいです。

わたしが隠された図書館に、今、本を預けるとしたら、何を預けるか考えてみました。
江國香織さんのウエハースの椅子です。
この本を読むと、幸福な絶望を、絶望的な幸福と言った方がいいのか、それを味わえます。
人を好きになることの機微を美しく、繊細に描いていて、いつも泣いてしまいます。

マサラチャイ


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