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#87 キャリアコンサルタント活躍の場(その8)

1.国家資格キャリアコンサルタント登録者数7万人突破(2023年9月末基準)


ー「キャリアコンサルタント活躍の場」は、定点観測的なシリーズものとして、2年前から連載しています。今回は”(その8)”です。ー

 2023年9月末基準の国家資格キャリアコンサルタント数が、70,397人と発表されました。「万人台」の大台替わりは2021年4月(6万人)以来、2年半ぶりです。2021年に急激に伸び悩んだ同数字も、年間純増ペース5-6千人程度で落ち着いてきたように思います。「年3回の試験-合格発表後の登録」が集中する5月・9月・1月に2千人前後の登録があり、その他の月は、微増減となっています。

キャリアコンサルタント登録者数推移(登録センターの公表数字をもとに筆者作成)

  このペースで行くと、2024年度末(2025年3末)の数字は、目標の10万人には未達ですが、8万人程度の着地と予想します。

厚労省資料をもとに、筆者作成
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12602000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Roudouseisakutantou/0000052927.pdf

 そもそも、計画の発射台時点でのキャリアコンサルタントの人数の認識相違や、資格の有効期限(5年)での未更新者の発生など、当初計画策定時にはない誤算がありました。そのあたりのことは、このシリーズの「その1から~その7」に書いていますので、ご参照下さい。

【連載】キャリアコンサルタント活躍の場(その1~その7)
#80キャリアコンサルタント活躍の場(その7):2023/4/22
#68キャリアコンサルタント活躍の場(その6):2022/11/11
#57 キャリアコンサルタント活躍の場(その5):2022/7/30
#48 キャリアコンサルタント活躍の場(その4):2022/5/24
#43 キャリアコンサルタント活躍の場(その3):2022/4/8
#24 キャリアコンサルタント活躍の場(その2):2021/11/16
#15 キャリアコンサルタント活躍の場 (その1):2021/ 9/13

JILPTの研究報告書(第2回キャリアコンサルタント登録者の活動状況等に関する調査)によれば、前年(2022年7-8月)のデータですが、キャリアコンサルタントの活動の場として、”「需給調整機関領域」が減少し、「企業領域」が増加”したことが、指摘されています。
 国家資格制度発足時の人数の見積もりの誤りはあったにせよ、キャリアコンサルタント有資格者の属性は、「企業領域」にシフトしているようです。
  私の推測ですが、2021年に多数の「2016年4月の国家資格化に伴う制度の切替登録者」(主に「需給調整機関領域」)の登録未更新(=減少)があった一方、「企業領域」(社内コンサルタント)は増加を続け、キャリアコンサルタントの数は、当初計画策定時に目指していた方向(=「企業領域」の強化)で推移している、と言えます。(下表ご参照:但し、国家資格化前の2013年の数字は、多くの民間資格が乱立する中での「寄せ集めベース」の数字であり、正確さを欠いているのは否めません。)

出所:第2回キャリアコンサルタント登録者の活動状況等に関する調査(JILPT 2023年6月21日)
※赤字囲み破線枠筆者
https://www.jil.go.jp/institute/reports/2023/0227.html

2.キャリアコンサルタント活躍の場~今後の方向性

2-1 経産省ー厚労省:両省の施策の動き

私は、ミドル・シニアを中心にキャリア支援業務を行っています。2020年以降の3年間で、制度的なインパクトという意味では、経産省-厚労省がタイアップして方針を示して来たと言えます。これまでは、両省で「バラバラ」に出て来た印象が強いものでしたが、両省が相互に協働する過程で、『経営戦略と連動した人事戦略』の方向性が示されました(下表ご参照)

経産省-厚労省の示達方針等(2020年~2023年)

今年3月末決算から、上場企業(約4千社)には人的資本開示の義務が課されることになりました。いくつかの主要企業の決算書の記載を見てみましたが、気になるのは、形式的な定量指標(KPI)が目立つことです。(5項目の人的資本開示:①人材育成方針②社内環境整備方針③女性管理職比率④男性の育児休暇取得率⑤男女賃金格差)
 私は、「仏作って魂入れず」と感じました。

2-2 注目の「職業能力開発促進法」改正(今月から施行)~キャリアコンサルタントの位置づけがより重要に~


「職業能力開発促進法」の改正を通じて、雇用者による従業員に対するキャリアコンサルティングの機会確保が義務化(努力義務)されました。
しかし、『人的資本』の意味を更に実効性のあるものにするためには、より「定性的な取組」として、キャリアコンサルティング(1on1)の充実が、一層重要になります。社内キャリアコンサルタントだけではなく、外部のキャリアコンサルタントを使って対応して行く所だと思います。
 今月(10月1日)から施行された職業能力開発促進法(一部改正)では、キャリアコンサルタントの活用について、より踏み込んだ内容になっています。

職業能力開発促進法の一部改正(2023年10月1日施行)

「人的資本開示」はKPIを使った数字での定量評価・可視化だけでなく、個人の顔がみえるような定性的な内容の開示が必要ではないか、と考えます。
 『人的資本開示』は、個人のキャリアコンサルティングを通じた『自己開示』と不可分の関係にあると言ってもよいでしょう。数字を一人歩きさせるのではなく、個々人のキャリアへの取組が見えるような形での開示です。

 キャリアコンサルティングのやり方として、私が心掛けているのは「ナラティブ」です。「人的資本開示」のベースになるのは、個人の「自己開示」だと思います。
 キャリアコンサルティング(ナラティブ)を通じて、「自己開示」を促し、キャリアを「語ってもらうこと」ーナラティブ(サビカス博士)はキャリア理論の中でも新しいキャリア論ですが、奥が深いです。引き続き、実践を通じた学びを続けて行きたいと思います。


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