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#32 「LIFE SHIFT2」の注目キーワード ”ナラティブ”

1.LIFE SHIFT2(日本語版)を読み直す

昨年10月末、「LIFE SHIFT 2」(日本語版)が発売されました。すぐに買い求め、集中して一回目を読み終えました。「LIFE  SHIFT 1」(2016年10月刊)よりも、より具体的で実践的なテーマに踏み込んでいます。コロナを経験した今、新しい生き方のヒントを見つけようと、本書と格闘しています。

「LIFE SHIFT 2」は全編330ページ、第1部(人間の問題)・第2部(人間の発明)・第3部(人間の社会)に分かれ、中でも第2部が全160ページと、本書の半分を占めます。作者の最も伝えたかったメッセージが、ここにあるのだと思います。

LIFE SHIFT2(日本語版)目次

現在、読み直しの途上ですが、特に第2部(人間の発明)に力を入れて読み直しています。”物語、探索、関係”という本書の核となる三つのキーワードには、新しい生き方のヒントがちりばめられています。

第2部第3章の「物語」では、3つの提案~①年齢に対する考え方を変える ②時間に対する考え方を変える ③仕事に対する考え方を変える~について書かれています。シンプルな表現ながら、『考え方』を変えることで、『生き方』も変わる、ということに腹落ちする感覚がありました。

日本語版を読み直しながら、翻訳にはない原書のニュアンスを確認したくなり、原書"THE NEW LONG LIFE"を併せて読み始めました。原書が2020年5月の発刊で、コロナ禍前に書かれたことは驚きでした。しかし、コロナ禍を経た今でも、その内容は、十分な先見性をもって心に響きます。

第2部(人間の発明)で示された3つのキーワード(物語・探索・関係)は相互に作用するものとして重要な意味を持ちますが、その中でも、「物語」に本書の最も重要なメッセージ性を感じます。

ただ、原書では、”Narrate、Explore、Relate”、とタイトルが「動詞」になっていたにも関わらず、日本語訳では、”関係、探索、関係”と「名詞」になっており、原書が伝えようとしたニュアンスやメッセージ性が、少し損なわれているのではないか、と感じました。

第2部3つのキーワード(LIFE SHIFT2 と原書)

特に、第3章「物語」では、日本語版と原書との比較の中で、若干の違和感を感じ、原書で伝えようとした本来のメッセージは何かを考えてみようと思い立ちました。

2.日本語版と原書(THE NEW LONG LIFE)との比較

原書では、”NARRTIVE"が58か所、”STORY”が22か所で使われています。(Kindleで読んでいますので、容易に検索できます。)
それだけ、”NARRTIVE"が原書の一貫した「キーワード」ということだと思います。

下図は、第3章の冒頭部分(LIFE SHIFT 2:P64)と原書の該当部分を比較したものです。原書の”Narrate”が、日本版では「物語」と訳されています
また、原書では、”NARRATIVE”と”STORY”が使い分けられているのに対し、日本語版では、一様に「ストーリー」と訳してしまっています。そのため、本来原書で伝えたかったメッセージがぼやけてしまっているのではないか、と感じます。

日本語版と原書との比較

ライフシフト2」を、原書(THE NEW LONG LIFE)に立ち帰って読み返した時、改めて、”NARRATIVE”を捉え直す必要があると考え、次項で、そのことについて書きます。特に、キャリア支援の現場では、重要な意味を持つと思います。

3.キャリア支援におけるナラティブ(narrative)の意義

日本語版では、”NARRATIVE"を、「物語」「ストーリー」と訳していますが、ここは、あえて”ナラティブ”というカタカナ語を使っても良かったのではないでしょうか?

”ナラティブ”は、一般に、「語り」または「物語」と訳され、近年は、医療現場やマーケティング、ブランド戦略においても、その手法が使われています。(NBM(ナラティブ・ベイスト・メディスン)、ナラティブマーケティング等)

”ナラティブ”には、「語る」という『行為』と、「語られたもの」という『行為の産物(物語)』の2つの意味(両義性)があります。しかし、その両義性と連続性を同時に表わす日本語がないため、そのまま、”ナラティブ”というカタカナ表記が用いられる、という考え方が一般的です。

”NARRATIVE”を、「ストーリー」(=物語の内容や筋書き:起承転結あり)と訳してしまったことで、原書にあったメッセージ性が弱まってしまった感があります。原書のタイトル、”Narrate"(動詞)には、「物語」だけでなく、”「語りなさい/語ろう」という著者の強いメッセージが込められている”と思うのです。

4.ナラティブ・カウンセリングの手法を活かす

昨年来、キャリアコンサルタント仲間と共に、サビカス博士のナラティブキャリアカウンセリング理論を学んでいます。

昨年の秋、サビカス博士のJCDA(日本キャリア開発協会)向け特別講演のビデオを視聴しました。講演の中で、サビカス博士は、ナラティブカウンセリングの理論的な説明と共に、具体的なケーススタディを紹介され、その内容は、コロナを経験した我々にとって、非常に示唆に富むものでした。

機会を改めて、ナラティブ・カウンセリングについては、noteに書いてみたいと考えています。

「LIFE SHIFT 2」の著者の最大のメッセージは、”Narrate”(語りなさい/語ろう)。「語り手自身が主人公となり、現在進行形で自由に物語を紡いでいこう」とのメッセージとして受け止めました。”ナラティブ”をキャリアカウンセリングの現場でも、活かして行きたいと考えています。




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