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#80 キャリアコンサルタント活躍の場(その7)

1.キャリアコンサルタント登録者数、2022年度は+5,317人(前年度比)

 2023年3末基準の国家資格キャリアコンサルタント登録者数が、65,879人と発表されました。2022年度(2022年4月~2023年3月)は、前年度比+5,317人(増加)です。(下の【表1】ご参照)
 私がこの数字に関心を持ったのは、同数字が初めて前月比減少を示した2年前(2021年7月)でした。
 2016年4月の国家資格化以来、毎年8-9千人ペースで増加し、月次ベースでも連続して右肩上がりの増加を続けていた登録者数に「何が起きたのか」「単月だけの特殊要因なのか」等、理由が分かりませんでした。
  その後、3か月連続の減少を確認した2021年9月から、「キャリアコンサルタント活躍の場」として定点観測の意味でnoteに投稿しています。今回は、「その7」です。

【表1】キャリアコンサルタント登録者数推移(2017年3末~2023年3末)

1-1 合格者数推移と登録者数推移

今回、改めて、初年度(2016年度)の第1回試験からの合格者数(JCDAとCCAの合計)にまで遡って、合格者数と登録者数の推移/相関を見てみました。(JCDA:日本キャリア開発協会/CCA:キャリアカウンセリング協会
※共に特定非営利活動法人
 キャリアコンサルタント試験「合格者数」は、「登録者数」とは一致しません。①試験に合格しても登録しない人がいる一方、②キャリアコンサルティング技能士(合格者)の登録があるからですが、大まかな趨勢はわかります。(※キャリアコンサルティング技能士(1級/2級)数:11,794人(2023年3末現在))
 2016年度末(2017年3末)の登録者数は25,518人でした。同年度の新規合格者数を勘案すると、”2万人以上(8割以上)の新制度導入前の民間資格保有者”が「登録手続きを経て国家資格を取得した」と推測されます。
 資格が失効する5年後(=2021年度)の前年比の増加数が+1,105人と、それまでの8-9千人の増加ペースから『急減』した要因は、上記の2万人のうちの3-4割(7-8千人)が、資格を更新せずに失効させたからと思われます。
 「2022年度の合格者数と登録者数」と「2017年度の合格者数と登録者数(5年前の数字)」を比べてみると、2022年度の数字(+5,317人)は、2017年度の新規合格者のうち、4-5千人(約半分)が未更新のまま、5年で資格を失効させたものと推測できます。(下の【表2】ご参照)

【表2】キャリアコンサルタント試験合格者数/登録者数推移(2016年度~2022年度)

【連載】キャリアコンサルタント活躍の場(その1~その6)
#68キャリアコンサルタント活躍の場(その6):2022/11/11
#57 キャリアコンサルタント活躍の場(その5):2022/7/30
#48 キャリアコンサルタント活躍の場(その4):2022/5/24
#43 キャリアコンサルタント活躍の場(その3):2022/4/8
#24 キャリアコンサルタント活躍の場(その2):2021/11/16
#15 キャリアコンサルタント活躍の場 (その1):2021/ 9/13

1-2 2025年3末着地見込み(目標比)

 厚生労働省は、本制度導入前から国家資格キャリアコンサルタント10万人を2025年3末の目標数字として掲げています。あと、2年になりました。
 今後も一定数の更新見送りによる資格失効者が続くとすると、今後2年間の登録者数は、5千人台の増加に留まると思われ、2025年3末の着地は、約8万人(目標比▲2万人)と予想します。(下【図1】ご参照)

【図1】厚生労働者公表資料をもとに筆者作成
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12602000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Roudouseisakutantou/0000052927.pdf

 そもそも、国家資格導入時点での人数見積もり(発射台)を「4万5千人」と2万人以上過大に見積もっていたことに加え、更新期間(5年)での未更新の発生を過少に見積もっていたことが、未達の要因ですが、この辺りは、厚労省、或いは、JCDA/CCAから、総括的な調査報告が欲しいところです。

1-3 どの領域が足りないのか?

 厚労省は、国家資格キャリアコンサルタント導入時に、4つの領域を念頭に、その役割と必要人数を試算しました。(下【図2】ご参照)
 ①企業領域(現状〔当時〕8千人➡63千人必要)
 ②教育・訓練機関領域(現状〔当時〕10千人➡12千人必要)
 ➂需給関連機関領域(現状〔当時〕15 千人➡17千人必要)
 ④地域における支援機関等(現状〔当時〕5千人➡8千人必要)
 メインの領域は①企業領域であり、制度導入時点から、大幅な不足が問題視されていました。
 4つの領域の該当者数には、信頼できるデータがありませんが、恐らく、企業領域での大幅不足の状況は変わっていないと思われます。改めてこの制度は「社内コンサルタント」を想定したもの、だと感じます。

【図2】「キャリア・コンサルティング関係資料」厚生労働省職業能力開発局(2014年7月)
/www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11801000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku-Soumuka/0000051241.pdf

2.人的資本経営/人的資本開示に感じる危惧

 2022年は「人的資本経営元年」と呼ばれ、経済産業省と厚生労働省の施策がタイアップして動き始めた年と認識しています。その前提となる「キャリアコンサルタント」の役割についても、2021年の6月の厚労省の報告書で、重要な位置づけとして確認されています。(下【図3】参照)
 2023年3月期決算から、上場企業などを対象に人的資本の情報開示が義務化されますが、最近の論調に「KPI」や「メルクマール」重視の形だけ整える風潮、「人的資本」と言いながら、「人(ヒト)」がおざなりになっていないか、危惧を感じるのは私だけでしょうか?

【図3】2021年6月厚生労働省・キャリア形成支援室公表資料(筆者赤線囲み、網掛け
https://www.mhlw.go.jp/content/11805001/000792846.pdf

2-1 見逃されがちな職業能力開発促進法一部改正

 2016年4月に施行された職業能力開発促進法は、労働者と企業の責任について、明記しました。
◆労働者:職業生活の設計(キャリアプラン)と能力開発に自ら責任を持つ
◆企業:従業員に対するキャリアコンサルタントの機会確保と能力開発支援に対する責任
 これと同時に、キャリアコンサルタントが国家資格化され、2019年4月には、企業の「職業能力開発推進者」はキャリアコンサルタント(有資格者)から選任するものとされました。これを契機に、キャリアコンサルタント資格を持つ、社内コンサルタントの増加に弾みがついたと思われます。
 あくまで、「努力義務」ではありますが、この対応いかんで、企業の「人的資本経営」にも大きな差がついて来るものと思います。

 職業能力開発促進法は昨年3月に一部改正が実施されました。見逃されがちですが、改正の中でも、第十条の三、第十五条の二は、特に重要だと思います。(下【表3】赤字部分ご参照)
 条文の追加/新設を受けて、企業がどこまで具体的な取組に深く関わって行くのか、企業のスタンスが問われるところです。

【数字】職業能力開発促進法の一部改正(2023年3末実施)

3.キャリアコンサルタント活躍の場

 制度面でもキャリアコンサルタントの役割や位置づけが高まる中で、「活躍の場が増えて行くのか?」資格保有者の多くが感じていると思います。
 企業のニーズが高まる一方で、社内コンサルタントは依然大幅不足の状態であり、従業員への選択肢を増やす意味でも、社外のキャリアコンサルタントを求めるニーズはあると思われます。
 今年度から、旧キャリア形成サポートセンターは、「キャリア形成・学び直し支援センター」と名前を変え、受託事業者が交代、パソナが事業を受託しました。昨年度の同事業には停滞感がありましたが、今年度は順調な滑り出しのように感じます。

 この事業を再受託する立場でキャリアコンサルタントとして関わるのも一法だと思いますが、「ジョブ・カード普及サポーター企業(本日現在3,573社)」のホームページから、活動状況を見て、直接アプローチするの一法だと思います。
 キャリアコンサルタントとしての草の根運動ではありますが、小さな動きが少しずつ、広がっていくことを願って、活動中です。



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