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#48 キャリアコンサルタント活躍の場(その4)

1.人材版伊藤レポート2.0発表

5月13日、経済産業省のホームページで、「人的資本経営の実現に向けた検討会(座長 伊藤邦雄)」の「人材版伊藤レポート2.0」(正式版)が公表されました。
3月に発表された「案」とほぼ同内容であったものの、正式版に追加された冒頭の伊藤邦雄氏の挨拶と19社の実践事例集(好事例)は注目されます。

伊藤氏は、冒頭の挨拶の中で、「人材版伊藤レポート2.0」策定にあたって重視した3点を挙げています。
第1:コーポレート・ガバナンス改革の文脈で捉えること
第2:持続的な企業価値創造という文脈で議論すること
第3:人事・人材改革を起こすのに、資本市場の力を借りること

人材版伊藤レポート2.0における3つの視点と5つの要素

レポートの中で提起された「3P・5Fモデル」は、上の相関図に示されていますが、実践事例集には19社の取組のエッセンスが紹介されています。

中でも「経営戦略と人事戦略の連動」を最重視したと伊藤氏は語っています。下表は、19社が採用した、経営・人事戦略施策の総括です。

19社の経営・人事戦略に見る「3つの視点と5つの要素」(実践事例集をもとに作成)

【経営戦略と人事戦略の連動】(実践事例集から抜粋)
・M&A、CVC、マイノリティ投資による人財ポートフォリオ拡充(旭化成)
・企業価値の直結する人材戦略とその期待される成果を明確化(伊藤忠)
・社員活力の最大化に向けた人財開発活動(花王)
・経営戦略と一体となった人材戦略推進のため「人材KPI」を設定(双日)
・成長をドライブする「事業の多様性」に応じた人事運営(ソニー)
・「MYパーパス」の追求を土台とする企業文化変革(SOMPOホールディングス)
・若手優秀層を含む経営リーダー候補の選抜・育成(日立製作所)
・経営陣から社員まで、戦略的なダイバーシティの向上(三菱ケミカル)
・会社と個人の成長を両立させる人財マネジメント(ロート製薬)

2.国家資格キャリアコンサルタント登録者数(2022年4月末基準)発表

伊藤レポート2.0の発表の3日前(5月10日)に、国家資格キャリアコンサルタント登録者数(2022年4月末基準)が発表されました。(当該数字は、厚労省所管のキャリアコンサルタント登録センターが発表しています。)

昨年から、登録者数の推移をフォローしていますが、2021年度は年間を通じて伸び悩み、4月の数字も、前月比減少(▲238人)となりました。

「資格更改終了者」>「新規合格・登録者」:昨年来続いているこの状況は、今年も続いており、「2025年3末でキャリアコンサルタント10万人」を掲げた厚労省の目標達成は、かなり厳しい状況になって来ました。

国家資格キャリアコンサルタント登録者数(出典:キャリアコンサルタント登録センター)

最近、社員のキャリア開発を担当されている人事の方(複数)とお話する機会がありました。人事部の社員には、キャリアコンサルタント資格を取得するよう、奨励しているとのこと。

ただ、社内キャリアコンサルタントだけでは、対応に体力的な限界があること、また、社内社外両方のキャリアコンサルタントを、選択肢として提供する必要性を感じる、とお話されていました。

3月に発表された厚労省 労働政策審議会(人材開発分科会)の報告書でも、キャリアコンサルティングの重要性が謳われました。今年4月からは、厚労省所轄の人材開発支援助成金(人への投資促進コース)が新設され、人(=「人的資本」)への投資という意味では、伊藤レポートと平仄が合っています。

人的資源管理から人的資本へ経営」:人のキャリアに関わる話は、これまで厚労省が主導していましたが、経営戦略と人事戦略とが連動することで、政策としても、経済産業省と厚労省の動きが連動し、キャリアコンサルタントにも新たな風が吹くのではないか、と期待しています。

3.ミドル・シニアの伴走者として

下表は、世代別の生年、出生数トータル/年平均、2022年度末年齢等をまとめたものです。(分類基準は第一生命経済研究所「ライフデザイン白書」に依っています。)

第一生命経済研究所「ライフデザイン白書2018」をもとに作成

ざっと、世代ごとのボリューム感がわかります。これを当時の世相、時代背景と併せて見ることで、それぞれの世代が生きて来たイメージを感じることができます。追体験とも言えるものですが、決して予断を持つことなく、想像力を働かせるのです。

今、「バブル世代」の方たちが、50代の前後半になっています。また、私のセミナー受講者のメイン層にあたる「団塊ジュニア世代」は、昨年から50代入りしました。

「団塊の世代(1947年~1949年生まれ)」は、3年間で800万人が生まれ、人口の最大のボリュームゾーンとして、日本経済に多大なインパクトを持つ存在でした。
一方、「団塊ジュニア世代(1971年~1974年生まれ)」は、4年間で800万人というボリュームゾーンにあって、親の激しい生き方を見ながら、大学卒業/入社時には就職氷河期に突入します。
ある意味、親が示した生き方のモデルとは、全く別の形での生き方の選択を余儀なくされた世代です。

4.新しい自分に会いに行く

「ミドル・シニアのキャリアの伴走者」を自認する私は、支援する方々が、セミナーを通じ、或いはキャリアコンサルティングを通じて、「新しい自分に会いに行く」お手伝いをするのが仕事、と思っています。

ジョハリの窓

上図はキャリア論の中でも良く引用される「ジョハリの窓」ですが、セミナーのグループワークやキャリアコンサルティングを通じて、受講者/クライエントが、今まで気づかなかった自分を発見する場に遭遇すると、なんとも嬉しい気持ちになります。

「安心、安全な場」で、これまでと違った時間と場所に自分を置くことで、新しい自分に気づくことがあります。
「越境学習」、副業・複業、学び直しやボランティアの取組も、新しい自分に会う場所と言えると思います。

「新しい自分に会いに行く」:キャリア支援のプロセスは、自身の可能性と自分で作り出せる選択肢、に気づいていただく場と考えています。

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