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#52  『秘密の窓』を開く「対話」の力

1.本日は「夏至」

 本日は二十四節気の「夏至」。黄経90度、北半球では、1年で最も日照時間が長くなる日です。
  1年で最も日照時間が短い「冬至」から181日が経ちました。1年の半分が過ぎたことを感じる日でもあります。 

東京の日の出 日の入り(国立天文台暦計算室)

 先週、東北地方北部を含め、全国で梅雨入りが発表されました。「梅雨本番」の鬱陶しい時期ではありますが、色どりあざやかな花菖蒲や紫陽花の開花に、心が和みます。

 つい「鬱陶しい」と書いてしまいましたが、昨日の日経新聞のコラム「春秋」が取り上げた「子ども科学電話相談」の話を思い出し、”雨=天気が悪い、鬱陶しい”は、「紋切型の思考停止状態」だと反省しました。
 コラム「春秋」でお薦めのジーン・ケリーの雨中でのあざやかなタップダンスの場面を思い返して、またほっこりしました。
 Youtubeで、雨中に歌ってダンスするシーンが公開されています。(
1952年の米映画「雨に唄えば “Singin’ in the Rain. ジーン・ケリー」

4月20日付 日経新聞「春秋」

2.5月に発表された注目の2つのレポート(経済産業省1、厚生労働省1)

 5月に経済産業省と厚生労働省からそれぞれ1つずつ、注目レポートが発表されました。
 経済産業省:「人材版伊藤レポート2.0」(5月13日発表)
 厚生労働省:「社会人の職業に関する学び・学び直し促進ガイドライン」(5月30日発表)

出典:人材版伊藤レポート2.0
6月13日付労働新聞

 人材版伊藤レポート(経済産業省)については、note#48でも触れましたが、同レポートが、”2022年は人的資本開示元年”として、各種メディアで取り上げられているのに比し、厚生労働省発表のレポートを取り上げたのは、私の知る限り、労働新聞(6月13日付)のみです。

 両レポートの注目度には温度差を感じますが、厚生労働省のレポートは、決して軽視できないものと考えています。

 労働新聞は、「学びなおしガイドライン」としていますが、厚生労働省(労働政策審議会人材開発分科会)では、「社会人の職業に関する学び・学び直し促進ガイドライン(仮称)」としています。

 同ガイドラインでは、「学び・学び直し」の労使「協働」が重要、としています。5月に発表された両省の施策は、両省が互いに「協働」して推進すべきものだと思います。

2-1 「ルビコン川を渡った!?」(SOMPOホールディングスの取組)

「人材版伊藤レポート2.0」には、人的資本経営の好事例として19社が紹介されていますが、私はSOMPOホールディングスの動きに注目しています。

 経済産業省は、metichannelという動画配信サイトを公開しています。①SOMPOホールディングスCHROの講演と②原氏と伊藤邦雄氏の対談は、
かなり衝撃的な内容でした。伊藤氏は「ルビコン川を渡った!」と表現しています。
①CHRO講演、②対談の動画は下記のサイトで視聴できます。
(①17分弱、②20分弱)
国内先進企業の経営戦略と人材戦略(SOMPOホールディングスCHRO原氏講演)
国内先進企業の経営戦略と人材戦略(原氏vs伊藤邦雄氏対談)

会社と自分の人生の関係(原氏講演資料より)

【SOMPOホールディングスの経営/人材戦略】
●「会社の中の自分」から、「自分の中の会社」へ抜本的な意識改革を図る(上図のイメ―ジ)
●WANT(内発的動機)-CAN(保有能力)- MUST(社会的責務)の重なる部分がMYパーパス➡MYパーパスとSOMPOのパーパスが重なる働き方を実践
●キャリアは社員自らが作るもの➡人事部門主導の人事異動は原則やらない(←ルビコン川を渡った(伊藤氏))
①トップの発信:タウンホールミーティング
②現場の取組み:MYパーパス1on1
③浸透の測定:エンゲージメントサーベイ

 同社の人的資本経営(経営/人材戦略)は、これまでのパラダイムを180度転換させるものとして、今後も動きを注視したいと思います。

3.『秘密の窓』を開く「対話」の力

ジョハリの窓

 ワークショップでもよく使われる心理学モデル「ジョハリの窓」ですが、これまで、なかなか「開放の窓」が開かなかった理由として、かたくなな「秘密の窓」の存在があったと思います。

 今回のSOMPOの取組(①トップの発信:タウンホールミーティング
②現場の取組:MYパーパス1on1)は、『対話』が軸になっています。
 「対話」には、「盲点の窓」を開くだけでなく、頑なだった「秘密の窓」をも開く力がある、と思います。
(これは、仕事に限らず、自分の生い立ちを含めた「MYパーパス」を語ることに、その意味があります。)

ライフシフトⅡより

ライフシフトⅡ(原著:The NEW LONG LIFE) は、人生100年時代(と呼ばれる)時代を生きていくための羅針盤として、大変有用な本ですが、唯一の難点は、「物語-関係-探索」と「名詞」に翻訳してしまっていることです。(note #32にもそのことを書きました。)

ここは原著通り、「動詞」で訳すべきと思っていた所、野中郁次郎先生の最新刊「『失敗の本質』を語る なぜ戦史に学ぶのか」に、”これは我が意を得たり”という一文を見つけました。

"「物語り」とは物語(ストーリー)ではなく、ナラティブである。
物語(ストーリー)は初めと終わりがある完結した構造を示す「名詞的な」概念であるのに対し、「物語り」(ナラティブ)は「動詞的な」概念である。単一の物語に収束せずに多様に発展していく。"(同著より引用)

 3つの動詞、Narrate(物語る)、Explore(探索する)、Relate(関係を作る)が、動的な相互作用を通じて化学反応を起こすことが期待されます。
 キャリア支援の現場では、化学反応の一助を担う触媒の役目を、キャリアコンサルタントとして担っていると考えています。



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