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リードナーチャリングを理解する

リードナーチャリングとは

そもそもリードとは

リードとは、BtoBマーケティングにおける見込顧客やその顧客情報のことです。
例えば、セミナーによる集客で得られた顧客リストや、自社HPから資料ダウンロードした人、実際にアポイントをとって商談した人などを指します。
最終的に受注につなげられる可能性がある顧客は全てリードということになります。

リードナーチャリングとは

獲得したリード(見込顧客)の全てが購入してくれるわけではありません。
受注に繋げるためには、獲得したリードに対して、段階的かつ効果的にアプローチし、信頼関係を構築しながら購入意欲を高めていく必要があり、その一連の手法をリードナーチャリングと言います。

このように顧客の購買プロセスに沿って、自社のプロダクトを認知していない潜在顧客層から、購買意欲の高い顧客に徐々に絞り込んで受注につなげていくイメージです。

一連の流れ

顧客の購買プロセスに沿ってリードを絞り込んでいくことになります。

それでは各プロセス別に必要になる施策やアクションについて説明します。

「認知」

まずは「未だ認知すらされていない潜在顧客層」に向けて、プロダクトの認知を促進する必要があります。
この段階では対象となる潜在顧客数は膨大であるため、広告、SNS、セミナーなどの手段を使ってリードを獲得していくことになります。

「興味」

認知促進により、潜在顧客層の一部が「興味」の段階へ移行していきます。
それらの顧客は、そのプロダクトについて問合せをしたり、参考資料をダウンロードしたり、無償トライアルに加入したりといった行動をとるでしょう。
よってこの段階のアクションとしては、問合せ対応や、行動履歴(資料DL履歴やトライアル履歴など)からテレアポを行ったり、メールや電話やビデオ会議などでコミュニケーションを取り合う中でキーマン(購買決定権を持つ人)の把握を行い、さらに絞り込んでいくことになります。

「比較検討」

この段階では、実際に営業部隊が商談を進めていくことになります。
ここでは、購入を検討している理由や、自社プロダクトがニーズや困りごとに対しての要件を満たしているか、他社製品も含めた検討状況などをヒアリングし、このまま購入につなげていくためにどのような情報の提供が必要か、なにか協力できることはないかなどを考えてアクションしていく必要があります。
ヒアリングを進める中で、先方の要求する仕様や価格など、折り合わない部分がみえてきた場合は撤退判断も見極めていくことになります。この段階では顧客側の「買わない理由」を徹底的に洗い出して精査し、解消していくことが求められます。

「導入」

比較検討を経て、いよいよ顧客が購買の意思決定をするフェーズになります。
B to B ではよくあることですが、プロダクトの要件がニーズにマッチしていたとしても、顧客側の承認プロセスの関係で発注時期が遅れたり、案件が発生するまで購入ができないといった時間のズレが発生します。よって、営業マンはそれらの事情を把握して、タイミングを逃さないように案件フォローし、受注につなげていくアクションが求められます。

「定着」

購入後、プロダクトによっては、実際に顧客が現場で使っていく中で、製品知識の不足によってうまく使えなかったりするケースが発生します。
この時、顧客から直接問合せがくることもありますが、問合せすらせずに使用を諦めてしまうケースもあります。そうならないように顧客の使用状況はしっかりと把握し、定期的に連絡をとったり、使用履歴が自社で確認できる場合はそれを確認して、自主的にフォローをしていく必要があります。
とくにサブスクモデルのプロダクトは、数ヶ月かけて営業コストを回収するモデルであるため、解約されないように定着をフォローしていく事が求められます。そして定着が確認できたら、上位プランへの切り替えやクロスセルを提案していくことで顧客単価の向上を推進していくことになります。

実行体制

実行体制としては、認知促進のプロセスについてはマーケティング部門、それ意向は営業部門が担当する体制が一般的です。
営業部門について、日本の法人営業の多くは、アポ獲得や訪問、購入後のフォローまで一人の営業マンが担っているケースが多いと思います。
顧客にしてみれば、一人の営業が一気通貫でフォローしてくれるという安心感があるのはメリットですが、営業マンにとっては各プロセスを全てカバーする必要があるため、各プロセスでのフォローにムラがでてしまったり、顧客管理が属人化したりといった弊害があるのも事実です。
そこで最近では、営業を分業体制で行うケースも増えてきています。

具体的には、アポイント取得フェーズをインサイドセールス、提案~クロージングを訪問営業、購入後の定着促進(オンボーディング)をカスタマーサクセスがそれぞれ分業することにより、各プロセスに専念できるため、フォローのムラや顧客管理の属人化を解消できます。

営業分業体制の注意点

確保可能なリードの規模による影響

まずは、そもそも分業体制を導入するかどうかを見極める必要があります。分業体制は、ある程度の規模のリードが確保できるビジネスに適した手法になります。
分業するということは、これまで一人でコントロールできていた活動を複数名で分担することになるため、部署間での情報連携や、各プロセスの稼働コントロール(後ほど説明)、オペレーションのルール制定などのマネジメント工数が発生します。よって、ある程度のリードの規模が確保できないビジネスにおいては、分業のメリットをマネジメント工数の方が上回るリスクがあります。

プロセス滞留による影響

上流から下流にリードを渡すフローのため、上流プロセスが滞留すると下流プロセスに悪影響が発生します。
例えば、インサイドセールスが獲得したアポイント数が不足すると、商談を担う営業マンのリソースに余剰が発生し、営業効率が悪化してしまいます。

プロセス個別最適化の弊害

分業体制をとると、各プロセスを担当する部門がコミットできるKPIが限定されます。
例えばインサイドセールスはアポ取得数にはコミットできますが、成約数については担当外のためコントロールできません。
この場合、営業へ渡すリードの質まで考慮されないリスクがあり、リードの質が低下すると営業側の成約数に悪影響が出ますが、インサイドセールスにとっては「関係ない」ということになりってしまいます。このように上流プロセスが下流プロセスのKPIに責任を負わない組織設計になっていると、個別最適化に走り、全体としてのパフォーマンスが低下するリスクがあります。

うまく回すためのポイント

これらの注意点を踏まえ、押さえておきたいポイントとしては以下になります。

営業を分業体制すべきか見極める

一定の規模のリードを確保できるかどうかが見極めのポイントになります。
分業によって得られるメリットと調整工数を比べてメリットが大きいかどうか見極める必要があります。

プロセス別の稼働をコントロールする

プロセスにボトルネックが発生していないかを把握する必要があります。そのためには定量的にリードの受け渡し状況を可視化する必要があります。
そのためには各プロセス毎に目標値を設け、充足状況を監視できるようにすることが必要です。

https://keywordmap.jp/academy/inside-sales/

SFA ( Sales Force Automation )の導入

上記を実現するためには、営業プロセス別のデータ管理が肝になります。
しっかり設計すればExcel帳票でも管理は可能ですが、集計分析の工数はそれなりに見込んでおく必要があります。

このような営業プロセスの管理ツールとしてSFA ( Sales Force Automation )というものがあります。具体的には、企業の営業部門における情報及び業務プロセスを自動化することで、営業活動が管理する情報全般をデータ化して、蓄積・分析することができるシステムを指します。SFAでは顧客管理、案件管理、行動管理、予実管理、レポート表示といった管理と集計分析をサポートする機能が搭載されており、営業活動の可視化や標準化の助けになるでしょう。メジャーなツールとしては、「Sales Force」や「HubSpot」といったものがあります。

また、活動管理する上で押さえておきたい項目についても一例を紹介しておきます。

営業組織を活用すると顧客情報を細やかに収集して分析ができるため、フリーテキストではなく、分析を想定した項目による管理をおすすめします。

リードを「リサイクル」する

あらゆるビジネスにおいて、新規リードはいつか頭打ちになります。最初のうちは、セミナー、展示会、ウェブサイトからのコンバージョンなどから十分な量のリードを確保できますが、徐々に時間が経つにつれ、セミナーも以前参加した人の数が増えてきますし、ウェブサイトも同様の事象が起き、純粋な新規リードは減少してくのは避けられません。

一方、B to B 向けの検討型・高額商材では、リード獲得段階で具体的に検討しているのは全体の10%、25%は将来的にも購買に至らない見込みなし層、残り65%が「将来購買の可能性はあるが今すぐではない」という顧客層である、というデータがあります。

書籍「THE MODEL」より引用

また、一度商談まで進めても途中で失注するものもあり、それらの未商談・失注を含めるとかなりの規模になります。

書籍「THE MODEL」より引用

これらのリードは獲得コストがかからないため、再アプローチすることによって大幅にマーケティングコストを圧縮しつつ、不足するリードを補うための極めて有効な手段になります。

このような既存リードに再アプローチする方法を「リサイクル」といいます。

書籍「THE MODEL」より引用

効率的にリサイクルを行うためには顧客管理や案件管理の精度を上げていく必要があるため、こちらについても上記同様にSFAツールの活用は有効です。

協力せざるを得ない KPI・ルール を設計する

分業体制においては、各プロセスの個別最適化による弊害が発生するリスクがあります。

これを回避するためには、各部門が協力せざるを得ないKPIやルールを設計するのが有効です。

例えば、インサイドセールスがコミットするKPIにアポ取得数に加え、一定の質が担保された有効リード数する方法などが考えられます。その「一定の質」を定義するためのチェック項目を設け、それを満たす有効リード数の目標値を設定すれば、リードを渡される営業側の成約数パフォーマンスへの悪影響を取り除くことができます。または、渡したリード(アポイント)に対する成約率などを目標値にするといった方法も有効でしょう。

このようにKPIやルールを工夫して、協力せざるを得ない状況を「仕組みとして」構築していくことで個別最適の弊害は回避可能です。

情報連携を強化する仕組みをつくる

上記にも通じる話ですが、「椅子職人の話」というものがあります。

 < 椅子職人の話 >

手作りの椅子をまるごとひとつずつ組み立て、それを自分で売る職人は「顧客満足」に敏感だ。だから技術やデザインを磨く努力を重ねる。

ところが「分業」が導入され、工場で毎日、椅子の「脚」だけしか作らない作業者が生まれると、他の部品とピタリと合うように、規格や品質基準が重要になる。それに従い、作業者は機械のように働くことが重要になる。

そうなると個人はモノ作りの楽しさから遠ざかる。
顧客の不満にも鈍感になる。
完成した椅子が売れるかどうかよりも、自分の賃金さえもらえればいいという人が増える。

分業の弊害についてのメタファーですが、分業すると全体として目的意識が希薄になりがちです。

本来は顧客を増やす、売上を増やすという目的の下に分業という「手段」をとっているはずなのに、いつのまにか個別の「手段」を果たすことに目的がすり替わる「手段の目的化」が往々にして起こりがちです。また組織を分けると対立するケースも起こりがちで、

営業部門
「渡されるリードの質が悪いから成約できない。マーケ部門のせいだ。」

マーケ部門
「営業のパフォーマンスが悪いから売上が伸びない。営業のせいだ。」

みたいなのはよくある話です。これに対して「もっとコミュニケーションとろうよ」とか「相手の事情も考慮して、うんぬん」みたいな話は根本的な解決策になりづらいのが実情だと思います。

このような精神論的な打ち手ではなく、仕組みとしてデザインすることで情報連携を円滑化する工夫が必要です。

例えば、営業側でメーリングリストを作り「~~のような属性の顧客は成約確率が高い」といった情報を投稿する社内キャンペーンを行い、投稿数に対してインセンティブを付与したり、営業とマーケの両者で毎月「お互いに改善・強化をした方が良いアイデアをディスカッションする」ような機会を設けたりと、個人に依存しない仕組みを構築するのが有効です。

参考記事/書籍


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