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最初から手分けしたのでは議論は深まらない(1/2)

【ポイント】

  • 全体像を合わせ込まずにいきなり分担を決め、各人が成果を持ち寄ってレビューする。よくある光景だが、これではレビューはかたちだけになってしまいよいものはできない。

  • 考え方の枠組みを揃えておかないと、成果物は単なる「寄せ集め」に終わってしまう。これは単に見てくれの話ではなく成果物の質の話である。

  • まずはテーマの特性を見極めよう。いていきなり分担してもよいのか、それともイメージや枠組みをつくり上げてから分担すべきなのか、リーダーはその見極めが大事。


大きな仕事は、ひとりですべてをやることはできません。数人、数十人のメンバーで作業を手分けすることになります。そして、メンバーが担当分野の成果を持ち寄って、互いにレビューし合い、それらをまとめることで、仕事を遂行するわけです。
多くの企業において当たり前の光景ですが、実はそこに危険が潜んでいます。仕事を開始するとすぐに分担を決めて、メンバーがそれぞれ作業を開始するからです。

このやり方では、メンバーは自分以外の担当分野について何の知識も持たないままに、お互いの成果物をレビューし合うことになります。これでは、その良し悪しを判断しようがありません。

すべての意見を鵜呑みにするならレビューなんて意味ありません。

もう1つ問題があります。
それは、成果物を作成するにあたって考えた枠組み(整理や分析の枠組み)がメンバーごとにバラバラだということです。そのため、成果物をまとめる際にはどのような枠組みでまとめていいのかわかりません。つまり、成果物は単なる「寄せ集め」に終わってしまいかねないわけです。
単に見てくれの話をしているわけではありません。
枠組みとは着眼点であり考え方の軸です。メンバー全員で事前に枠組みを考えれば、たくさんの着眼点が生まれます。それらを各々のメンバーが持ち帰ることで、様々な角度から考えを深めることができます。これが、全員の腹落ち感にもつながるのです。

大切なことは、取り組む仕事の特性を見極めることです。

これから取り掛かる仕事は、メンバー全員が経験や知識を持っていていきなり分担してもよいテーマなのか、それとも議論を通じて全員で考えを深め、共通のイメージや枠組みをつくり上げ、勘所を養ってから分担すべきテーマなのかを見極めるのです。

ひとつ、例を紹介しましょう。

私はあるとき、クライアント企業の特命チームと事業の立て直しに取り組むことになりました。
チームリーダーのA氏は関係者を集めて今回の活動の背景や目的について説明しました。ひと通りの話したあと、A氏は次のように切り出しました。

A氏 「質問もないようなので、次回までに担当領域の実行計画を作成してください。 「次回はそれをもとに議論しましょう」

その日、集まったメンバーにはすでに担当領域が割り振られていました。B氏は営業領域、C氏は開発領域、D氏は購買領域といった具合です。
メンバーの誰ひとりとして言葉を発しない様子に不安を感じた私は、口を挟む機会をうかがっていました。

私  「このまま解散して、皆さんは大丈夫なのですか?」
B氏 「なんとなくなら作ってみることはできると思いますが…」
  「計画書のイメージはありますか?」
B氏 「いいえ、イメージはないです」
A氏 「たたき台くらいなら作れるだろ?」
  「経験上、このやり方では有意義な議論はできないと思います。まずは全員で、議論 してみませんか? どんな現状なのか、何がいけなかったのか、どうあるべきなのかなど について…」
A氏 「いい提案だとは思いますが、私たちにはあまり猶予がありません」
 「それなら、今日これから議論してはどうでしょうか?」
C氏 「私は大丈夫です」
D氏 「今日は特に予定はないので、これから議論するのはありがたいです」
B氏 「この会議室も、次の予約は入っていないようです」

私たちは、全員参加のワイガヤ形式で意見を出し合いました。立場の違いから、時にはヒートアップするシーンもありました。そろそろお開きというタイミングでA氏は言いました。

A氏 「もう少し議論しておきたいですね」
B氏 「次回も、この議論の続きをしませんか?」
  「時間の猶予もないようなので、全員での議論は次回を最後にしましょう」
A氏 「各自、今日の議論を振り返って自分の考えを整理してきてください」
 「各人の理解のもとに変革の『全体像』をまとめてみるということでいいですか?」
A氏 「そうです、それを持ち寄って効率的に議論しましょう」
D氏 「『急がば回れ』ですね」
B氏 「ていうか、こんな議論をしておかないと、自信をもって上層部に提案できないですよ」

かくして、途中で空中分解することなく、事業の立て直しは進みました。


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