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共感力はビジネスを動かすが、概念化できない人には無理がある(2/2)

【ポイント】

  • 共感とは、自分が創り上げた概念を相手の中に移植する作業である。つまり、概念化する力のない人が周囲の共感を得ることは簡単ではない。

  • 合意形成するには自分の意見をきちんと概念化できるスキルを身に付けなければならない。

  • 概念化とは、考え方の枠組みや結論に至ったロジックなど、物事を構成する要素の相関関係を構造化し、それを図表や言葉で表現することである。


前回の内容を簡単に振り返ります。

前回は、正しいことを正しく理解してもらうのはとても難しいという話をしました。
しかし、現代を生きるビジネスマンにとって、これは欠かせないスキル。

昨今のビジネスは複雑に入り組んでおり、その結果、様々な価値観やタイプのステークホルダーが山ほど存在します。しかも、ビジネスは彼らの合意なしでは前には進みません。まさに悩みの種です。

正解や解法があれば、ステークホルダーとの合意形成はさほど難しいことではありません。ところが、ビジネスの世界では、たいていの問題に正解も解法もありません。そんな中で、自分の意見が正しいことを相手に理解させるために欠かせないのが「共感」です。

「共感なくして成功なし」

これが今のビジネス環境です。


しかし、それが分かったところで悩み尽きません。
そもそも「共感」とはいったいなんでしょうか。
今回は、私の共感論を、事例を交えながら説明します。

私とて、「共感」の意味を明確に言葉にできるようになったのはここ数年のことです。
「概念化」について理解を深める中で概念化と共感がつながっていることに気づき、それをきっかけに、私の共感論は生まれました。
言葉にするとこうです。

「共感とは、自分が創り上げた概念を相手の中に移植する作業である」


そもそも概念とは、物事を構成する要素の相関関係を構造化した図表(=概念モデル)、もしくはそれを言葉で表現したものです。その中には、考え方の枠組みや結論に至ったロジックなども含まれます。
つまり共感とは、皆さんが自分の考えをシンプルな図表や言葉に表現し、それを相手に説明することで、相手が「なるほどね」と頷いてくれることなのです。

例えば、ある幹部に提案をしなければならないとしましょう。

皆さんは、この幹部のことが苦手です。なぜなら、過去に何度も跳ね返されてきたからです。
これまで皆さんは、自分の提案内容を自信に満ちた流ちょうな言葉で、しかしながら長々と説明していました。15分刻みで動いている幹部は苛立ったはずです。

今回、皆さんは、自分の考えを幹部に理解させようとするのではなく、共感を求めます。

皆さんに概念化力が備わっていれば、皆さんは、提案に至った理由や背景を、幹部が理解できるようなシンプルな図表や言葉で表現できるはずです。
幹部には、それらをゆっくりと丁寧な口調で説明すればよいだけです。
ゆっくりと話せるのは、内容をシンプルに概念化できているからです。
幹部は直感的に内容を理解し「なるほどね」と頷くでしょう。
そして「秘書に話して、3日後に私と君の予定を1時間確保しておいてくれないか」と言い残して部屋を出ます。

皆さんが、自分の概念を相手にうまく移植できれば、その概念(正確には概念モデル)をベースに相手と齟齬なく意見を交わせるようになります。

「あなたは、私たちの提案が○○の領域でははほとんど意味をなさず、むしろ××の領域でこそ効果を発揮すると言っているのですね」という風に、同じ概念の上で会話ができるようになればしめたものです。
少なくとも、意思疎通の齟齬から、頭ごなしに意見を却下されることはなくなるはずです

逆に言えば、概念化できていない意見を相手に共感させるのは至難の業です。相手と意思疎通するためのベースが存在しないからです。

合意形成を成功させるには、まず自身の意見をきちんと概念化することが第一歩なのです。



以前に、こんなことがありました。

そのとき私は、新事業開発チームのチームリーダーのプレゼンテーションに同席していました。その場には、役員クラスの錚々たる顔ぶれが並んでいました。

リーダーがひと通り説明を終えると、ひとりの役員が、説明の流れとは辻褄の合わない質問を始めました。リーダーは、その質問に直球で返していましたが、納得してもらえているようには見えませんでした。

私は気付いていました。この役員が頭に描いている概念モデルは、リーダーが拠り所にしているモデルとはかなりズレてしまっていたのです。
ふたりのモデルの齟齬を解決するには、さらに上位の概念化が必要でした。

見かねた私は、その場にあったホワイトボードに上位モデルとなる図表を描き、ふたりのモデルをその中に表現しました。
その後、しばらくは、ホワイトボードを囲んでの議論が続きましたが、最終的には提案内容は承認され、次のステージに進むことが合意されました。

これは概念化と共感のなせる業です。
めでたし、めでたし。


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