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教育心理学が専門の大学教員。博士(教育学)(早稲田大学)。公認心理師,教員免許等所持。…

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教育心理学が専門の大学教員。博士(教育学)(早稲田大学)。公認心理師,教員免許等所持。東京大学大学院教育学研究科(博士課程)在籍。学習や人間関係,子育てについて知見を発信。著書(共著)『インクルーシブ教育で個性を育てる 脳科学を活かした授業改善のポイントと実践例』。

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能登半島地震でつらい思いをしている方へ

 こんにちは。かけだし教育心理学者の遠田将大です。大学教員になる前は,私立学校の常勤スクールカウンセラー,早稲田大学の教育総合クリニックで相談員(非常勤)をしていました。その経緯から,「心をケアするための資料」を作成しました。この資料は,つらい思いをしている方が,自分の心の状態をチェックし,応急処置ができるものとなっています。個人の使用の範囲でご自由にお使いください。 能登半島地震を受けて(追記)  事件や事故,地震など突然,悲しい出来事が起きると,はじめはショックで感情が

    • 授業で対話するのはなんのため?

       この記録は,対話する素地を作る研究に注力してきた男が,東京大学大学院教育学研究科で学ぶことを通して,その先にある大切なことに気づき,これまでの研究に,新たな視点を関連づけていく記録である。 ある男のこれまで  ある男のこれまでを簡単におさらいしておく。男はこれまで,学校心理学という領域から,公立学校の高学年児童の授業をたくさん見てきた。そこでは,児童同士の対話が成立しておらず,その先にある深い学びに至っていない状況があった。  「このままでは,対話を介して深い学びに至る

      • より良い親子関係をつくるヒケツ「親業」って?

        1.親業(訓練)とは  親業(訓練)とは,アメリカの臨床心理学者トマス・ゴードン博士(1918-2002)が開発したコミュニケーションプログラムのことです。このプログラムは,カウンセリング,学習・発達心理学,教育学などの研究成果を基礎に作られています。日本では,1979年に初めて講座が開かれ,これまでに延べ12万人以上が講座を受講しています。 2.親業訓練の歴史  以下の説明は,親業訓練協会のホームページサイトから引用したものです。当初,親業訓練は,非行少年などの治療のため

        • 東大大学院教育学研究科のとある初回講義

          東京大学大学院教育学研究科(博士課程)のとある科目の初回講義  「深い学び」とは何か?,教育心理学では,それをどのように研究するのかが紹介された。オリエンテーションの色合いが強かったが,教員の話から”ここでは,足りないところは自分で補っておく貪欲さが必須”と感じた。学びに飢えていた私としては,願ったり叶ったりである。きっと,ここで今の自分に必要なことが見つかる。そう感じた初回講義であった。 1.深い学びとは何か? ▶︎提示されたのは,やはりSawyer(2006)。  S

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        能登半島地震でつらい思いをしている方へ

          心理学(基礎ゼミ)✖️「デザインの学び」#1

           上田女子短期大学総合文化学科では,基礎ゼミと卒業研究ゼミの2つがあります。1年生は基礎ゼミ,2年生は卒業研究ゼミが必修となっています。教員は,自分の専門性を活かしてこの2つのゼミを運営しています。  これまで私は,基礎ゼミで心理学やグループアプローチ(例えば,構成的グループエンカウンターやプロジェクトアドベンチャーなど)を活用して,ゼミ運営をしてきました。例えば,良好な人間関係を構築することを目的に,みんなでハイキングに行ったり,BBQをしたりしていました。他には,学園祭に

          心理学(基礎ゼミ)✖️「デザインの学び」#1

          「心理学✖️デザインの学び」春のオープンキャンパス

          2024年3月23日(土)春のオープンキャンパス  春のオープンキャンパスでは,高校生を対象に心理学の講義を行いました。テーマは,心理学でもポピュラーな「ストレスマネージメント(ストレスをコントロールする方法に関するもの)」です。これまでも,このテーマを扱った授業はしてきましたが,今回は,私なりに”ある”チャレンジをしています。ここでは,その成果を報告します。 私なりの”ある”チャレンジ  ”ある”チャレンジとは何か?それは,「あなたの感覚と心理学の理論が結びつく体験」を

          「心理学✖️デザインの学び」春のオープンキャンパス

          「博士論文の書き方」覚え書

          はじめに  博士論文執筆作業をふり返り,今後より良い論文を作るための自分なりの「博士論文の書き方」を記しておきます。  私は,早稲田大学大学院で博士論文を完成させるまでに多くの時間を費やしました。特に,仕事や子育てをしながら博士論文を書くというのは,私にとって本当に難しくて…様々な人の協力を得て書ききることができました。  恩師の本田恵子教授,妻と息子,両親,同期の塚原望先生からは,数えきれないほどの協力をいただきました。この場を借りて,皆様に感謝の意を伝えさせていただきま

          「博士論文の書き方」覚え書

          「デザインの学び」プログラム開発1年目を終えて

          パワーのある先生たちに引っ張ってもらって  三菱みらい育成財団の助成を得たチャレンジが1年目を終えました。思えば本当に濃い時間でした。大学での従来の学びを変えるためのチャレンジが,様々行われたからです。下の写真は「デザインの学び」プログラムの1つ。裏山の木を切り,製材し,2〜3年ほど乾燥させたのち,授業で家具作りやウッドデッキ製作に活用する試みです。写真を見るとわかるように,参加者は,実に様々でした。年齢層も,職業も異なる方が参加されました。活動前は,単に木を切るという活動

          「デザインの学び」プログラム開発1年目を終えて

          もうすぐ生成AI”Notta”を用いた文書が一般公開される。AIとの付き合い方を模索するためにも,これからもこのようなチャレンジを大切にしていきたい。

          もうすぐ生成AI”Notta”を用いた文書が一般公開される。AIとの付き合い方を模索するためにも,これからもこのようなチャレンジを大切にしていきたい。

          大学の学びに変化を! デザインの学びの開発

          こんにちは。かけだし教育心理学者の遠田です。 現在は,面白い人たちと大学の学びを変える試みにチャレンジしています。新しいことで,ワクワクドキドキしています。 1.三菱みらい育成財団2023年度助成事業専攻結果  助成事業に申請したプロジェクト名は,「デザインの学びの開発」:今日の大学教育の中心をなす「知る」学びと芸術やデザイン分野で培われた「行う(表現する)」学びを編み合わせる営み,です。私は,このプロジェクトに協同研究者として参加しています。1年目の私の役割は,心理学的な

          大学の学びに変化を! デザインの学びの開発

          研究者が生成AIを使ってみた

          2023年度ChatGPT出現の衝撃   2023年はChatGPTが一般公開され,話題を席巻しました。どうしてこれほど話題になっているかというと,ChatGPTが,具体的な要望に対応して回答を生成することができるからでしょう。例えば,「〜についての問題を5問作成してください」とお願いすれば,その要望に沿った問題を作成したり,「以下の文章で論理の飛躍がないか,論点として不足している点がないかをチェックしてください」とお願いすれば,それについてチェックしてくれたりします。また

          研究者が生成AIを使ってみた

          教育実習日誌の書き方

           こんにちは。大学で教育心理学を教えている遠田将大(えんたまさひろ)です。現任校では,心理学系講義の他に,中学校の国語教師になる課程(教職課程)を担当しています。  今回は,教育実習日誌の書き方についてお伝えします。大学で学生指導のために作成した資料も公開します。個人使用の範囲内で,ご自由にご利用ください。  さて,教師になるためには3〜4週間教育実習にいく必要があります。この実習先で毎日使うのが,教育実習日誌(教育実習ノートという呼び名の場合も)です。使用頻度がとても高

          教育実習日誌の書き方

          「ホスピタリティ論」という講義を2名で行なっている。初回,A先生の進め方が参考になった。私ならホスピタリティの定義を先に話してしまう。だが,A先生は,ディズニーランドとチェーン店のサービスの違いについて書き出すところから始めていた。学生は主体的に学びに参加していた。これいい。

          「ホスピタリティ論」という講義を2名で行なっている。初回,A先生の進め方が参考になった。私ならホスピタリティの定義を先に話してしまう。だが,A先生は,ディズニーランドとチェーン店のサービスの違いについて書き出すところから始めていた。学生は主体的に学びに参加していた。これいい。

          アンガーマネージメントの実践家として

          10年目の出会い  「これは先生の専門分野(学校心理学)に関係する記事ではないですか?」学科長がある新聞記事を渡してくれました。「自分の怒り 上手に制す」と題されたその記事は、アンガーマネージメントに関するものでした。  本田恵子教授(早稲田大学教育総合科学学術院)がアンガーマネージメントとはどのようなものか,なぜ子ども達に必要なのかを解説し,先輩の高野光司先生(帝京平成大学)が奈良県の私立学校でアンガーマネージメントを実践した様子が紹介されていました。この実践には,私も参画

          アンガーマネージメントの実践家として

          資格取得は学びのはじまり

           こんにちは。かけだし教育心理学者の遠田将大(えんたまさひろ)です。  2023年1月中旬,同僚の先生から「准学校心理士の資格を得た学生に研修を行ってほしい。」と依頼をいただきました。  今回は,その研修を企画する時に考えたことを言葉にしておきます。 心理職に携わる学生に何を伝えたい?  依頼を頂いたのはいいのですが,何を伝えたらいいのでしょうか。「皆さん,がんばってください!」だと抽象的すぎる感じがしますし,がんばり方を間違えてただがむしゃらにやると相手が見えなくなって

          資格取得は学びのはじまり

          2つの顔ー教育心理学者と…ー

          みなさん,こんにちは。かけだし教育心理学者の遠田将大です。 私には,二つの顔があります。1つは,教育心理学の研究者。もう1つは,「寝かしつけ士」です。聞きなれない言葉かもしれませんね。私が勝手に名付けました。「寝かしつけ士」は,子どもを寝かしつけることを仕事にしている人のことです。今日は,その寝かしつけ士のお仕事をほんの少しご紹介します。  ※この記事は,以前,大学の自己紹介文に掲載したものを一部改変したものです。  寝かしつけ士に必要不可欠なのは絵本です。私には,間もな

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