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「博士論文の書き方」覚え書

はじめに

 博士論文執筆作業をふり返り,今後より良い論文を作るための自分なりの「博士論文の書き方」を記しておきます。
 私は,早稲田大学大学院で博士論文を完成させるまでに多くの時間を費やしました。特に,仕事や子育てをしながら博士論文を書くというのは,私にとって本当に難しくて…様々な人の協力を得て書ききることができました。
 恩師の本田恵子教授,妻と息子,両親,同期の塚原望先生からは,数えきれないほどの協力をいただきました。この場を借りて,皆様に感謝の意を伝えさせていただきます。本当にありがとうございました。

 もう一度,博士論文を書く機会があるならば,今より執筆作業はスピードアップするでしょうし,内容もさらに深く鋭いものができ上がることでしょう。

 人生一度きりということで,2024年度から,大学教員をしながら東京大学大学院博士課程に進むことにしました。

 春からまた忙しくなるので,この時期に,これまでの博士論文執筆作業をふり返り,さらに良い論文を作るために,自分なりの「博士論文の書き方」を記しておきます。

 読んでくださった方にも何かお役に立つのであれば幸いです。

1.私が博士論文を書くのに時間がかかった理由

(1)分野選びに時間がかかったため
・現場での心理教育実践を分析する際の切り口を探すのに試行錯誤した
・自分の興味関心と親和性の高い心理学分野を探すのに時間を要した
(2)博士論文のお作法を知らなかったため
・先に実践,後にレビューだったので論理展開を調整するのに時間を要した
・章同士のつながりをスムーズにするのに何度も試行錯誤した
(3)じっくり思考出来る時間がとりにくかったため
・仕事や子育てをしながらの執筆となると,じっくり考える時間がとりにくかった

 私の場合は,上記のような理由から博士論文を書くのに時間がかかりました。しかし,(3)「じっくり思考できる時間がとりにくかったため」以外は,むしろ十分時間をかけることが必要不可欠だったと感じています。なぜならば,自分で試行錯誤することで,分野の定め方や論文の書き方を覚えることができたからです。これをふまえ,2.では自分なりの「博士論文の書き方」を記しておきます。

2.スムーズに論文執筆するための自分なりの「博士論文の書き方」

私にとっては,博士論文を書くために以下6つがポイントでした。
(1)環境調整
 ▶︎執筆に集中・没頭できる環境を整える

・カフェのように人目のある所で,時間制限を設けて執筆する
  程よく緊張感を持って,集中して執筆が可能
・子どもと一緒に早く寝て,深夜1時位から執筆する 
  子育てと睡眠時間を両立しつつ,その後,静かな環境で執筆が可能
・追記:これからは,電車通学の間が論文執筆の時間にできる
(2)全体把握
 ▶︎1つのストーリーになるよう目次をデザインする

・目次を読んだら論理展開がスッと頭に入ってくるような目次を目指す
・最初から完璧な目次を作るのは難しいので,次第にブラッシュアップしていく(3)レビュー
 ▶︎先行研究のレビューは一番はじめに行う

・(自分の研究領域の場合)海外の文献研究,次に日本の文献研究をした方が,研究上のロスがない
・学術雑誌に載る完成度のレビューが作れると,自信を持ってその後の研究を進められるので,学術雑誌に掲載する論文を作る
(4)実践研究
 ▶︎実践研究はレビューで明らかにされた課題を解決するために行う

・研究目的が明らかになるような研究計画を立てることが大事
・早めに倫理申請の準備をしておくことが大事
(5)公開審査準備&論理展開の精緻化
 ▶︎概要書や公表会資料の作成は,博士論文の執筆と同時並行で作成する

・公表会用の資料を作成することで,博士論文の論旨がより明確になる
・具体と抽象といった複数の次元を行き来する思考を絶えず行うことが,良い論文作成のキモになる
(6)文明の利器を有効活用
 ▶︎文明の利器ー例えば,文献収集ツールEndNote,文字起こしツールNottaーを効果的に使用する
・質的研究でインタビューを文字起こしする際は,必要に応じて,文字起こしアプリ「Notta」などを有効活用する。特に「Notta」は,文字起こしだけでなく,要約機能もあるため便利。
・引用文献の作成には,EndNoteを使用する。EndNoteは,読んだ論文を収集保管できるだけでなく,そこにコメントをつけることもできる。それだけでなく,各学術雑誌が定めた文献の掲載ルールに応じて,文献の必要情報を並べ替えてくれる(らしい)。これは,これから慣れることにします。

3.おわりに

 2023年度は,仕事も家庭も研究も忙しくなってきて,個人的に激動の1年でした。その中で,睡眠大事!ということに気づきました。今更ですが…。
 私は,これまで睡眠時間が少なくても頑張れる,いわゆる,ショートスリーパーだと思って日々生活してきました。これまではそれでも良かったのですが,今年は(特に,40歳が見えてくると)そうではなくなってきました。睡眠時間を削って仕事したことで,風邪や体調不良を理由に病院にお世話になることが本当に多くなったのです。病院で診察してもらう時間,薬局で薬を処方してもらう時間,点滴や療養に要する時間を考えると,しっかりと睡眠をとった方が,実は効率がいいのではないか,そう思うに至りました。そうそう。他にも,睡眠時間を確保するメリットがあったので書いておきます。よく寝たほうが,頭も回るし,気分もスッキリするし,集中力も持続するしなどなど,いいことが多いのです。
 ということで,2024年度は,睡眠をしっかり摂りつつ,自分なりの「博士論文の書き方」で,博士論文を作成していきたいと思っています。東京大学大学院では,3年で博士号取得します。

 皆さんもお身体に気をつけて,お仕事をなさってください。

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