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東大大学院教育学研究科のとある初回講義

東京大学大学院教育学研究科(博士課程)のとある科目の初回講義
 「深い学び」とは何か?,教育心理学では,それをどのように研究するのかが紹介された。オリエンテーションの色合いが強かったが,教員の話から”ここでは,足りないところは自分で補っておく貪欲さが必須”と感じた。学びに飢えていた私としては,願ったり叶ったりである。きっと,ここで今の自分に必要なことが見つかる。そう感じた初回講義であった。

1.深い学びとは何か?

▶︎提示されたのは,やはりSawyer(2006)。
 Sawyer(2006)は,これからの時代の深い学びについて研究している代表格のようである。Sawyerの研究を見つめることで,深い学びとは何かがわかってきそうである。ちなみに,Sawyerは,以下のようなことを指摘している。

・深い理解とは,既有知識に新しい概念を関連付け,結合し,再び構造化すること
・深い理解とは,情報を批判的に吟味すること
・深い理解とは,そこにあるルールや規則を見つけること など

☆これらの指摘は,メタ認知とも関連が強そうである。関連については,別途まとめておくこととしよう。

2.教育心理学では,教科教育をどのように研究するのか?

 私は,教科教育における学びを教育心理学的に研究する視点・方法を求めていた。以下は,『数学的・科学的リテラシーの心理学(藤村,2018)』より抜粋したものである。
(1)教育という営みや学習者を捉える際,心理学の概念枠組みを用いる
 ▶︎自分なら,関連づけ(体制化,精緻化),再構造化,あたりだろうか。
(2)プロセスや発達のメカニズムについて,実験,調査,観察,面接といった心理学の方法論を用いて,実証的に解明する。
 ▶︎自分なら,統制群を用いた実験,開発した教材を用いた調査研究,行動観察,
  構造化,面接が可能である。
(3)教育効果を客観的に解明するため,測度を開発し,統計的に検定を行う。
 ▶︎SPSSを購入できたので,統計分析が容易になった。

☆特に興味深いのは,開発した非定型問題の信頼性妥当性の検討ができそうなことである。非定型問題の課題は,早稲田大学大学院の頃から自作している。しかし
早稲田大学にいた頃は,その課題について信頼性・妥当性をどのように担保したら良いのか,イマイチ分からなかった。ここでは,そのことについて学べるらしい。とても楽しみである。

3.今の自分に必要なことが見つかる確信を得る

 「今の自分に必要なことが絶対に見つかる!」今回,指導教員と話ができて,そう思えた。
 私は,これまで構造化された心理教育プログラムを作り,実践を行い効果検証を行ってきた。成果もある程度出ていたので,有効な方法の1つと考えていた。しかし,ここ2年ほど,その弊害についても考えるようになってきている。
 確かに,構造化されたプログラムは,やり方が明確だし,誰が行ってもある程度効果が見込めるというメリットがある。しかし,プログラム提供者と受講者という固定化された関係ができやすく,受け身の態度をもつ学習者が生まれやすいのである。この関係性は,研究者と教師との間にも生じる場合がある。例えば,教師は,研究者が提供するプログラムをそのまま受け取るという関係が生じやすい。学習者の主体性を高めるには,どうしたら良いのか?そんなことを考えていると,もしかすると構造化したものを提供するというフレームが,主体を奪っている可能性があるのではないか?そう考えるようになった。
 そんな中で,現在の指導教員と出会えたのである。指導教員は,協同的に学ぶことの本質を私に語ってくれた。自分の経験を元に説明したり,自分なりのやり方で表現したり,他の子どもはそのことを受け止めながら,話し合いが進み,次第に理解が深まっていく(現時点での私の理解)。師匠は,このような学び合いを目指していると話してくれた。この視点やこの方向性は,私が,今悩んでいることの解決の糸口になりそうなのである。東大で,これ学べるのだと思うと,今からとてもワクワクしている。

4.補足ー心理教育プログラムが有効となるタイミングー

 構造化された心理教育プログラムの出しどころについて補足する。現時点では,心理教育プログラムを提供する場合は,目的とタイミングが重要なのだと感じている。具体的には,初学者に対しては,心理教育プログラムが効果的に作用すると考えている。
 私は,協同的な学びが可能となる学習者の育成を目的とした心理教育プログラムを開発している。開発に着手した契機となった出来事は,公立の小学校では,学び合いがなされにくい現状があることを目の当たりにしたからである。
 私が訪問した公立小学校では,教師の「話し合って意見をまとめて」という指示だけでは学び合いは成立せず,児童は授業と関係のない話をしたり,答えを知っている者の意見を丸写ししたりするような状況が起きていた。このことから,協同的な学びが可能となる心理教育プログラムの開発が必要であると感じ,開発したのである。なお,効果については現在まとめ中であるものの,いい結果を報告できそうである。
 長くなってしまったが,要するに心理教育プログラムは,初学者に有効であり,それ以降の学び手には,異なるアプローチが必要になる。現時点では,そう考えている。
 
 


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