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#2 コアバリューと行動規範 − ベンチャー起業家の経営学の活かし方 −

ベンチャー企業の初期の武器は人のみ

前回の投稿では、歯科医療に専門特化したヘルスケアベンチャーのWHITE CROSS株式会社のビジョン経営について描きました。

起業して7年、ベンチャー企業が如何にヒト・モノ・カネ・情報の全ての経営資源において脆弱であるかを知りました。社会人1日目からお金を稼がせていただける仕組みが確立されていた歯科医師時代には想像すらできなかったほど、ベンチャー企業がお金を稼げるようになるまでのハードルが高いことを知りました。

WHITE CROSSの様に、自社プロダクトを育てながら成長していくベンチャー企業であっても、創業初日から商売が始まります。しかしながら、そもそもの売り物がないため、その売り物を設計し、作り始めるところから始まります。そこに、ドラマや映画で描かれるような華やかな世界はありません。あれは幻想です。

LinkedInの共同創業者であるリード・ホフマン氏は、起業について

 崖から飛び降り、落ちるまでに飛行機を組み立てるようなもの

と表現しています。現実は、地道で泥臭く、精神を削られる日々です。しょっちゅう、会社の存続を根底から揺るがす様な壁が立ちはだかります。

一見キラキラに見えたとしても、成功しているベンチャー企業であればあるほど、雷雨だろうが猛暑の日照りだろうが不撓不屈の心で毎日休まずに歩き続け、壁を登り続けてきたのだろうと思います。同時に喉元に切っ先を突きつけられている様な焦燥感や危機感の中で、「生きている」と実感させられる日々です。アントレプレナーシップとは、自分が作り上げようとしている社会のイメージを誰よりも信じ、ジリジリとした感覚から逃れられない生き方を楽しめる偏狂質的な "人としてのあり方" なのではないかと思います。そして、"人としてのあり方"は、起業家として生きる日1日の蓄積の先に徐々に形作られていくものではないかと思います。

話はそれましたが、ないない尽くしのベンチャー企業にとって、唯一武器となるのがヒトです。詳しくは、人の熱量の高さです。


人の問題とビジョン経営

人の熱量の高さ以外に武器がないにも関わらず、ベンチャー企業が例外なく足を突っ込むのが人の問題です。

小さなチームに所属する人の熱量を高め、寄せ集め、活かす以外に成長への道がないにも関わらず、根源たる人そのものが別個の性格や感情を持っています。そして、異なる人生の状況・優先順位・正義があるため、おいそれと一枚岩にはなりません。

そのような矛盾を孕む人の問題に、根源的に対応できる唯一のソリューションが、ビジョン経営ではないかと私は考えています。そこにおいて厄介なのは、ビジョンそのものが育つに時間がかかるものであり、とってつけた美辞麗句では意味をなさないということです。

5年生存率15%とも言われるベンチャー企業をなんとか生き残られせながら、創業時に起業家が持っていた純粋な「ビジョンの卵」を真の「ビジョン」へと育て、その時々にレバレッジを効かせていくことが求められます。


WHITE CROSSの研修指定図書である「ビジョナリー・カンパニー ZERO」においては、ビジョンの主なメリットについて、

1 ビジョンは通常では考えられないほどの努力を引き出す
2 ビジョンは戦略的、戦術的判断を下すコンテクストとなる
3 共通のビジョンは一体感、チームワーク、共同体を生み出す
4 ビジョンは企業がひとにぎりの中心人物に依存した状態から脱却する基盤となる

と記載されています。


WHITE CROSSに重ねて記載すると、社員数7人くらいまでは、お互いに額を突き合わせて1人3役4役で仕事をしていました。そのため、人間関係の良し悪しが思いっきり会社の空気感に影響を与える一方で、「誰かが抜けること = 会社のリスク」でした。会社を回す上で、自分にしかできない領域があることが、良くも悪くも社員の交渉力になっていました。この時期は、人を包み込む優しさと穏やかさを持つ副社長・COOの田代が、私と社員の関係性を維持してくれ、私は多いに救われてきました。

その時期に、私自身に求められたのは 

1 ビジョンは通常では考えられないほどの努力を引き出す

の体現でした。偏執狂的に信じられる「ビジョンの卵」がなければ、そもそも私自身の心が簡単に折れてしまっていました。実際に、創業して最初の数年は私自身が「ビジョンの卵」にしがみついて、己を維持していました。定期的に発生する人の問題に向き合いながら、「ビジョンの卵」の価値について社員に語りかけ続け、1日15時間364日狂ったように働きました。

この時期に辞めた人が1人だけいましたが、それぞれに思うところあれど「ビジョンの卵」の価値を信じてくれ、自らの熱量を高めて寄せ集めてくれた創業期のメンバーとの信頼の絆は深くなります。彼らは現在のWHITE CROSSのコアメンバーになっており、彼らの幸せは私の幸せです。

2017年にアーリーステージの資本調達を経て、社員数が10〜15名になった頃、これまでとは異なる人の問題が発生し始めました。この時期のWHITE CROSSは、誰もが1人3役4役を果たしていた時期を超え、固定の業務と定時出社・定時帰宅を前提とした社員が入り始めました。これ自体は良いことであり、会社として当たり前のことを色々整備し始めた時期でもありました。

しかしながら、熱量が異なる人材の寄せ集めになった結果、自分の機嫌を他人にとってもらわなければ気が済まない・不機嫌でも感じ悪くても仕事さえできれば良いというタイプの社員が、定期的に人の問題を起こしました。

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こちらは、創業期から昨年夏までのWHITE CROSSの社員数の増加ですが、第1拡大期の後半から停滞期前半がその時期に当たります。誰か入れば、誰か辞めていた時期でした。

後から思えば、「ビジョンの卵」でグリップできる人の数を超え、「ビジョン」を育て、組織を育て上げなければならない時期に差し掛かっていたのです。

そのため、停滞期の後半から社員数40名を超える現在までの間、管理部 部長の永畑と私の二人三脚で、後からWHITE CROSSに入ってくれた全社情報戦略室 室長の大浦など組織作りにパッションを持つメンバーを巻き込み、

2 戦略的、戦術的判断を下すコンテクストとなる
3 一体感、チームワーク、共同体を生み出す

ことができる「ビジョン」を育てながら、組織構築を行うことに熱中しました。

「ビジョン」も組織も、一朝一夕では育ちません。四半期単位で様々な改善を繰り繰り返してきました。そして「ビジョナリー・カンパニー ZERO」に出会い、その型を導入して現在に至ります。


コアバリューの具体を示す行動規範

WHITE CROSSのコアバリューは、

真摯さを最重視する/質実剛健に成果を追求する/be nice

です。しかしながら、例えば"真摯さ"一つとっても、その解釈は人それぞれです。そのため、コアバリューの設定後、その解釈の違いから新しいタイプの人的トラブルが生まれました。

コアバリューをWHITE CROSSの社員同士で共有される考え方・価値基準、つまり企業文化の源泉として機能させるためには、コアバリューをより具体化させた「WHITE CROSSにおいて何が正しいか」を語るための言葉が必要でした。

そこで生まれたのが、WHITE CROSSの行動規範です。

現在のWHITE CROSSでは、「行動規範」の中で記載された言葉で、社員同士が話をしています。代表取締役である私自身も、それに反する言動をとると一切の忖度なく注意され、修正が求められます。


WHITE CROSSの行動規範(2022.07.10更新)

コアバリューは不変です。行動規範はその時々に、組織としての必要性に合わせて微調整されていきます。以下が、WHITE CROSSの行動規範です。

前文

私たちのコアバリューは、真摯さを最重視する/質実剛健に成果を追求する/be nice です。

営利企業である以上、儲けることができなければ誰も幸せにすることはできません。売上の最大化、経費の最小化による利益の追求は絶対です。その一方で、利益の追求のみを成果とし、不機嫌で息苦しい職場にはいたしません。多様な社員一人ひとりの心理的安全が確保され、活躍できる環境もまた私たちが追求する成果です。利益と善い企業文化の追求は、私たち全員の義務であることをここに宣言し、WHITE CROSS社員の行動規範を定めます。

企業文化とは、社員同士で共有される考え方・価値基準です。WHITE CROSSの企業文化は、幼少期より諭されてきた道徳、経営学の定石、及びWHITE CROSSの歴史から醸成されてきたものです。企業文化を司る行動規範は、集団としての規律ある思考・判断・行動の指針の枠を超え、社員一人ひとりの人格形成を促進します。

WHITE CROSSは、永続性のある偉大な企業になるため、善なる動機に基づいた事業を行います。「人は城、人は石垣、人は堀」です。私たちは真面目さを美徳とします。挨拶を徹底します。功ある者には禄を与え、徳ある者には地位を与えます。長く働いている社員を大切にし、終身雇用の実力主義の実現を目指します。そして、現在そして次世代の社員が、等しく挑戦・成功する機会を得られるような仕組みを作り続けます。

私たちはWHITE CROSSの名誉にかけて高い目標を掲げ、使命感を持ち、不屈不撓の一心で、気高く仕事に邁進します。その先に、社会に真の価値をもたらし、社員一人ひとりの人生に豊かさと幸福をもたらします。


行動規範

#1 誰をバスに乗せるか

正しい人材なくして、偉大な企業はつくれません。あらゆる企業活動のなかで、正しい人材をWHITE CROSSというバスに乗せることが最重要です。WHITE CROSSにおける正しい人材とは、各分野におけるハードスキルでの優秀さ/潜在能力と、WHITE CROSSの企業文化に共感・体現しソフトスキルを高めら続けられる可能性を兼ね備えた人です。

採用に携わる人は、正しい人材について理解した上で、自分より優秀な人を仲間にします。自分より優秀な人を採用し、活躍してもらうことは、自分自身の評価にもつながります。逆に、自分より優秀な部下を恐れることは、組織を弱体化させることにつながります。

また、どれだけ優秀であっても、企業文化とフィットしない人材は、コントロールが効かず事故を起こすスポーツカーと同じです。短期的に成果を上げられたとしても、中長期的に見れば、私たちが大切にしている企業文化を損なうことになります。

#2 善なる動機と正しさに基づく行動

「勝てば官軍、負ければ倒産」の厳しい世界だからこそ、善なる動機/利他の心に基づき始めた事業が軌道に乗った時、社会に受容され、安定した成長を描き大樹に育つ可能性が高まります。

また、何かに迷った時、人としての正しさを基準に考え、行動します。短期的には小さな損でも、中長期的な大きな信頼となります。どれほど企業が大きくなっても、仕事は人と人が行うものであり、信頼は財産です。得ではなく、徳をとります。

#3 人格によるリーダーシップ

リーダーシップとは、間接的影響力です。役職を問わず日々、企業文化を体現し、その背中で示せる人がリーダーです。人の心を動かし、影響力を与えることのできるリーダーは自然体であると同時に担うべき役割を果たしており、「本来の自分」と「役割の自分」が高い次元で統合されています。「本来の自分」を見せず、仕事の間だけ「役割の自分」としてふるまう本音が見えない人の言葉では、人の心は動きません。

”Corporate value is our life value.”

「本来の自分」と「役割の自分」は不可分ですが、リーダーシップは才能ではなく、後天的に身に付けられる能力です。WHITE CROSSは、社員一人ひとりが企業文化を媒介として、「本来の自分」と「役割の自分」をより高い次元で統合し「人格を高める場」です。メタ認知し、あるべき姿に向かい思考・判断・行動を習慣化し、人格化することで、人は変われます。

特に上司となる人は、自身の日々の立ち居振る舞いが、自身の意図に関わらず、部下に影響を与えていることを常に自覚して下さい。また、自分の機嫌を他人にとってもらわなければ気が済まない・不機嫌でも感じ悪くても仕事さえできれば良いという考えは未熟であり、真摯さの欠如でもあります。

#4 誰がではなく何が正しいかを見る

仕事よりも人を問題にすることは、易きに流れる堕落です。何が正しいのかを見極める能力を磨き、何事においても事実関係を把握した上で、仕組みで改善します。

「顧客志向」という点において、何があっても顧客を悪く言わず、顧客満足のために努力を惜しみませんが、社内外からの理にならぬ理や理不尽が起きた時は、論理的整理をしたうえで必要に応じて正々堂々と戦います。

#5 ゾウを追い出す

緊急度が低い一方で重要な「気づいているけれど、触れると面倒臭いこと」は、いずれ会社・個人に致命傷を与えるゾウに育ちます。

ゾウには様々なパターンがあり、人である場合もあれば、組織のルール、あるいは、複数部署や会社全体にまたがる構造であることもあります。

ゾウを見つけ、追い出すためには、不愉快・不都合な事実から目を背けないだけでなく、まだ気付かれていないゾウを見つける力を身につける必要もあります。ゾウを見つけた時は指摘し、チーム・組織として追い出す努力をします。役職や所属部署は関係ありません。会社をより良くするために社員全員にゾウを指摘する義務があります。また、WHITE CROSSが社内政治を認めないのは、社内政治はセクショナリズムというゾウを生み出してしまうからです。

ゾウを指摘することで、その人の立場が危うくなることはありません。ただし、その伝え方には建設的な姿勢と具体性を求めます。単なる否定や個人レベルの不満・愚痴で終わる話は、私たちが大切にしている企業文化を損なうため控えてください。

#6 自己変容を通じたチーム変容

WHITE CROSSが偉大な会社になるためには、個人・チームの両方の成長が必要です。個人の成長のためには、自身の強みを伸ばすだけでなく、弱みにも向き合い克服する必要があります。両方あっての自己変容です。心理的安全が確保されたチームにおいて、個人が強みも弱みも開示し、仲間と共に個を磨き自己変容をしていくことが、チームを変容させ高めていくことにつながります。

会社は「凡人をして非凡なことを行わせる場」であり、「チームとして個人ではなし得ない成果を上げ、その成果を皆で享受する場」です。そこにおいて、WHITE CROSSでは一人2役・3役が当たり前です。自ら機会を創り出し、どんどん自分の仕事の幅を広げていくことが評価されます。

WHITE CROSSには、多様性に富んだ素晴らしい才能が揃っています。自分の可能性を信じ、勇気ある挑戦をしてください。

#7 顧客中心思考・「美しい」の追求・参入事業でNo1

顧客からの売上があって初めて、社員とその家族の生活を支えることができます。常に「顧客」を中心に考え、満たされていないニーズを満足させ続けることに徹頭徹尾、集中してください。

参入した事業においては、いかなる困難にも負けず果敢に突き進む強い意志/何があっても成し遂げるという凄まじいまでの熱意を持ち、成功するまでやり遂げます。想像力と創造力を働かせて、顧客が良い物と感じ、自分達がそのファンになるプロダクト/サービスを追求します。今、できないことがあったとしても、将来の自分達ならできると言う未来進行形で考えます。

「神々は細部に宿る」「手が切れるものを作れ」「本物は世界を貫く」

成功している先人達は、基準を高く持つことの意味を様々な言葉で表現しています。「自分なりにできている」ではなく、一番厳しい顧客の目線に立って、「美しい」と思えるレベルにまでプロダクト/サービスを高めることが成果につながります。「美しい」とは見た目だけを表現する言葉ではありません。背景となる思想、設計、機能、運用する私たちの日々の姿勢、そして成果に繋がってこそ「美しい」と言えます。私たちは、良識を持って常識を疑いながら成果を伴う「美しい」を追求し続けます。

#8 遠くのビジョンと近くのゴール

ビジョンは、社員全員で共有する見果てぬ夢です。ビジョンを見つめ続けることで、不屈不撓の一心が生まれ、気高く仕事に邁進することができます。小事に捕われて、道を誤ることもなくなります。同時に、近くのゴールを見つめ続ける事で、成果に至るまでのマイルストーンを認識でき、会社と個人の成長を重ね合わることができます。

ゴールを高く定めると、既存の延長線上では出てこない発想が生まれ、仕事の基準が高まり、実行することができます。それには覚悟が必要ですが、恐れず進んでいきましょう。

定めたゴールに執着し、妥協とあきらめをしないで追求しましょう。経営的に「自分なりにできている」は全く意味がありません。「何があっても達成する」という熱意が大切です。ミーティングの開始時に、毎回ゴールを宣言し、社内での認知を高めましょう。役職や所属部署を問わず、その挑戦を応援し合います。

また、自問自答して内省し続けなければ、会社はすぐに社会に通用しなくなります。個人においても、「前任者がやっていたから」で仕事をすると、単純な作業員になってしまいます。作業は必要ですが、楽でもあります。作業に逃げてはいけません。ゴールに至る道を考え、社員一人ひとりが成果をあげる実践家になり、学び続けましょう。

#10 締め切り厳守・スピードの追求

経営戦略を卓越した戦術に落とし込んで遂行することが、成果につながります。一つひとつの仕事を自分ごととし、やるべきことを明確にし、具体的な締め切り日時を設定し、厳守しましょう。全ての部・室において、定時・定点・必達です。

締め切りは適切かつ勇気を持って設定しましょう。世界は急速に変化しており、ユーザーに刺さるサービスも変化し続けます。正しい危機感を伴うスピードを維持できない企業は、いずれ倒産します。

スピードの追求とは、仕事を早くするだけでなく、サービスの改善や組織としての意思決定などあらゆるものに関わります。自らの関わる仕事のスピードは適切か、そのスピードを落とすものは何かを常に問い、スピードを追求して下さい。

#10 データドリブンで1日1%の改善

1日1%の改善を繰り返すと、1年で38倍優れたサービスとなり、その5%を売上につなげると、年率2倍の売上が達成できます。本当の儲ける力は、あたり前のことを徹底して積み重ねることでのみ得られます。あたり前の改善とは、データをはじめとした根拠に基づいた改善のことです。

社員一人ひとりの日々の積み重ねが、WHITE CROSSの経営体力を高めます。過去30年、バブル崩壊・ITバブル崩壊・世界金融危機・東日本大震災・コロナ禍がありました。6年に1度は、会社の永続性を脅かす何かが起きると考え、備えるべきです。WHITE CROSSは、有事においても社員とその家族を支える大樹となります。

個人も同じです。有事に慌てふためき自らの境遇を嘆くのではなく、危機の中に勝機を見出そうとする姿勢を保ち、考え、行動し続ける日々を重ねれば、最悪は最良への転換点となります。仕事がうまくいかなかった時、キーパーソンだと思っていた上司や同僚が辞めた時、それらの一つ一つが成長の機会です。憂鬱さを乗り越えて、必死に考え、行動し続ける日々は必ず良い成果につながります。

良いときも悪いときも、小さなことを確実に積み重ね続けることが、とんでもないところへ行くただ一つの道です。

#11 質の高いオーバーコミュニケーション

仕事を通じて起こるトラブルの大半が、コミュニケーション不足が原因です。「あの人は大丈夫」「言わなくても分かるだろう」は通じません。常にオープンに、オーバーコミュニケーションを心がけます。

同時に、コミュニケーションの質を意識してください。コミュニケーションは、伝えるべきことが、相手に正確に伝わってこそ意味をなします。質の高いコミュニケーションを行うには、伝えたいことを口頭・文章・資料などで効果的かつ効率的に伝えられるスキルに加えて、互いの人格を持って醸成してきた信頼関係が必要です。日々のコミュニケーションを通じて、自らのスキルを磨き、人格を高めてください。

#12  勇気ある挑戦・誠実な失敗・適切な改善

企業文化を体現した勇気ある挑戦の結果であれば、誠実な失敗、そして適切な改善を称賛します。仕事は実行であり、挑戦です。「こう言う仕事をしたい」「こう言うキャリアを歩みたい」と言う思いは、口にして、ゴールに定めて、 「まずはやってみる」と言う意識を持ちましょう。

挑戦せずに諦めると何も得られません。成果が得られることが理想ですが、誠実な失敗もまた次につながる糧になります。人は挑戦することで成長していきます。

社員一人ひとりが挑戦意識を持つことで、WHITE CROSSは学習する組織になり、永続性のある偉大な企業へと近づくことができます。


コアバリューと行動規範を練り込む研修制度

2020年、世界がコロナ禍に突入し、経営環境は刻一刻と変化していきました。その対応に追われながら、同時に人の問題に直面した私は、

このような危機的な状況でなおも、一人一人のわがままが通じる会社のままでいると必ず倒産する。

なんとか会社を維持しながら、基礎から組織を作り直さなければいけない。

と考えました。そして、「ビジョン」を育てながら、同時に練り込むように共有していく仕組みを作ることを決意し、永畑と私で様々な書籍に目を通し、企業研修について調べました。

アウトソーシングも考えましたが、結局、私自身が正しいと信じる社会人・職業人のあり方や信念について、ストレートに伝えていくことから始めました。

研修指定図書として、「人を動かす」「経営者になるためのノート」を社員全員に配布しました。


まずは幹部からということで、毎週月曜日の経営ミーティングの時間の一部を使用して、研修を開始しました。その冒頭で私は、「これは皆さんと、私の真剣勝負です。私は皆さんに対して、一切ひよりません。皆さんも、私に斬りつけるつもりで研修に臨んでください。」と伝えました。そして、幹部はそれを真正面から受け止めてくれました。

その日を起点にWHITE CROSSにおいて、「幼少期より諭されてきた道徳、経営学の定石、及びWHITE CROSSの歴史からの学び」をベースとした経営・運営が始まり、道半ばではありますが私自身が誇りに思える文化を持つビジョン経営企業へと少しづつ成長して行きました。

2022年3月現在では、この研修は幹部研修、ユニットリーダー研修、メンバー研修へと分化・発展しており、ロジカルシンキング研修など私がタッチしない新しい研修も行われるようになってます。

「正しさ」について定義がなされていない所に人が集まれば、どれほど優秀な人でもやすきに流れる可能性があります。そして、優秀な人がやすきに流れた時ほど、手に負えないものはありません。その一方で、「正しさ」を定義し、繰り返し諭し、向かい合うことで人は確実に成長して行きます。そして、人の集団が組織です。

私の尊敬する経営者である稲盛和夫さんは、その著書で「心がすべてを決めている」と述べています。研修を進めながら、私自身もまた経営学を人間学として捉えるようになり、不完全ではありますができるかぎり善い「心」に基づいた経営を心がけるようになりました。

不思議なもので研修が進むにつれて、あれほど手を取られてきた人の問題が一気に減少してきました。具体的には、組織の第2拡大期に突入したにも関わらず、過去1年での退職者は1名、私が対応に追われた人の問題は0件でした。少しづつ、

2 ビジョンは戦略的、戦術的判断を下すコンテクストとなる
3 共通のビジョンは一体感、チームワーク、共同体を生み出す

を体感し始めています。その一方で、

4 ビジョンは企業がひとにぎりの中心人物に依存した状態から脱却する基盤となる

は、まだまだこれからです。

そのために現在、
・ 抜擢・権限移譲制度
・ 新規事業創出制度
などの構築を、現在進行形で行っています。



「ビジョンにレバレッジを効かせる必要がある」と記載しましたが、WHITE CROSSにおいて「ビジョン」を育てると同時に企業文化に練り込み、レバレッジを効かせるための仕組みが研修制度でした。

次回、WHITE CROSSの社内研修について、詳細を記そうと思います。

恩師からの言葉

今の私を形作ってくださった恩師の一人に、田中道昭先生がいらっしゃいます。シカゴ大学でMBAを修学し、立教大学ビジネススクールで教鞭をとられている田中先生は、WBSのコメンテーターを務められています。また、「アマゾンが描く2022の世界」などのベストセラー著者としても知られている一流の経済人です。


このNoteを書いている3月12日、田中先生から

結局はバリューが最後は重要ですね。そしてバリューとは文章や言葉ではなく経営者が本当は潜在意識で信じている価値観。究極の困窮状況でも優先される価値観や基準。そこまでの覚悟で人格に投影していってください。期待しています。

という言葉をいただきました。自分が定めたコアバリュー&行動規範に対して、覚悟を持ち人格に投影するための努力を続けること・・・それは、とてつもなく、厳しく克己心を持って歩み続ける、終わりのない道だと感じています。

必要な時に、経営者としての私に正しさの道を示してくださる恩師の期待に答えるためにも、株主や社員への責任としても私はやり続けなければいけません。


WHITE CROSSにご興味をお持ちの方へ

WHITE CROSSは、京セラ、トヨタ、リクルート、ファーストリテイリングのような永続性のある偉大な企業を目指しています。そして現在、ベンチャーステージの真っ只中にある小さな苗木です。

今回のNoteで記載したことについても、日々、改善が重ねられていきます。未来視点に立って大樹を育てていこうとするWHITE CROSSのあり方に共感してくださる方からのご応募を、心よりお待ちしております。カジュアル面談も大歓迎です。気になられた方は、ぜひ採用ページを覗いてみてください。


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