廣内 眞文(Masafumi Hirouchi)

1996年生まれの編集者/コピーライターです。

廣内 眞文(Masafumi Hirouchi)

1996年生まれの編集者/コピーライターです。

マガジン

  • 映画の"瞬間"

    チケット片手に所定のシートを探す瞬間。じれったい予告を眺めつつ、スクリーンに溶け込める喜びを感じる瞬間。そして、クライマックスを迎えた高揚感とともに真っ暗なシアタールームを飛び出す瞬間……。そのどれもが、大切な映画の"瞬間"なんだ。

  • 歩きながら考えたこと

    僕にとって歩くことは、何ものにも代え難い喜びの一つだ。噛みしめるように、一歩ずつ。たとえ時間がかかろうとも、行為そのものを楽しみながら、今日も、明日も。そして、明後日も。

  • ビスケットの缶。

    「その人を知りたければ、その人がつきあっている親しい友人が誰なのかを知れば、ひとつやふたつは、その人の本性を垣間見れるだろう。」(『ナジャ』アンドレ・ブルトン) 酸いも甘いも、一緒くたになった思い出深いヒト・モノ・コトを、自由に気楽に書き連ねます。

最近の記事

命の旨味を思う。|『僕は猟師になった』(2020)

最近、伊丹十三の『ヨーロッパ退屈日記』という本に書いてあった「スパゲティ・アル・ブーロ」という食べ方にハマっている。 名前だけ聞くと何だかすごそうな響きを持っているが、なんてことはない、ただのスパゲティのバター和えをそう呼んでいるだけ。でも、これがなかなか美味しい。本のなかでも書いてあるけれど、これにチーズをかけるとすごく満足した気持ちになれる。作り方も、茹で上がったパスタにバターを一欠片くわえて混ぜるだけだからすぐに作れるし、皆さんも興味があったら試してみると良いと思いま

    • 決定論的世界観を進むのは、意志?|『TENET(2020)』

      このあいだ、友人と街をぶらぶら散歩していたら、突然その人が空を見上げ、両手でカメラのフレームをつくるような仕草をし始めた。何をしているのだろうと思って聞いてみたら、「飛んでいる飛行機を100回フレームに収められたら願いが叶う」とのこと。へぇ、そんなおまじないがあるんだと思って「でも、100回なんてすぐに達成しちゃうんじゃないの」と言うと「ただ、一度でもヘリコプターを見てしまったらリセットになってしまう。それが意外と難しいの」だそうだ。確かに、たまに緊急搬送か何かでヘリを見るこ

      • 目の前の1人に向けた、モノ・コトをつくり続ける。|『シンドラーのリスト(1994)』

        前は新年の抱負を手帳の1ページ目に書いたりしていたんだけど、今年からきっぱり辞めました。そもそも、手帳も持たないようにした。結局書かなくなるし、手帳とは別に日記帳があるから、それで事足りるとも思うし。なので、今年のお正月は特に何か新しいことを始めたりはせず、積読していた本や観たかった映画で時間を過ごしていました。年々、お正月の特別感が無くなっているような気もするんだけど、まあ、それはそれとして。 映画『シンドラーのリスト(1994)』ただ、そんな僕だけど1つだけ継続している

        • ちょっとした風向き、ボタンの掛け違いで。『ムーン・パレス』ポール・オスター/著

          あとから振り返ってみて「もしあのとき、ああしていたら(していなかったら)死んでいたかもな」と思うことってありませんか? 普段、「死」なんてものを全然意識しない僕だけれど(疲れちゃうので)、あるときふと、何かの成り行きで僕は消えて無くなってしまうんじゃないかと背筋が凍ることがある。食べているハンバーガーが喉に詰まったら、横断歩道に暴走した自動車が突っ込んできたら。まあ、その程度のことなら予期できるものの、ちょっとした風向きの変化やボタンの掛け違いで簡単に消滅してしまう存在なの

        命の旨味を思う。|『僕は猟師になった』(2020)

        マガジン

        • 映画の"瞬間"
          31本
        • 歩きながら考えたこと
          8本
        • ビスケットの缶。
          1本

        記事

          ディストピアとユートピアを分けるものを考えていきたい。

          ちょうど一週間前の9月24日、新しいSNSとして『DYSTOPIA』のβ版がリリースされた。何でも、誹謗中傷が含まれる文章をAIが検閲し自動的に表現を変えてしまうといったSNSで、コンセプトは「誰も傷つかない」ということらしい。人を傷つけるのは何も直接的な誹謗中傷だけではないとも思うのだけれど、僕が面白いと思ったのはこのアプリの「検閲」システムの見せ方。不適切な内容の投稿をするとジョージ・オーウェルの『1984年』に登場するビッグ・ブラザーさながらのシステムが、有名な『BIG

          ディストピアとユートピアを分けるものを考えていきたい。

          仕事のお供といえば、リーガルパッド。

          無くてはならない仕事道具のひとつに、リーガルパッドがある。 クリーム色のメモ用紙で、大きさはちょうど僕の手のひらと同じくらいのサイズ。厚さも台紙があるからカバンの中でよれにくいし、かといってかさばるほどでもない。もともとはアメリカで弁護士や裁判官など法律関係の人たちがメモ書きとして使っていたらしく、色も普通の紙と区別するために「黄色」くしたのだとか。パッと思いついたことを書き留めても良し、頭の中にあるアイデアを図やイラストで整理しても良し。さらにはそれを点線にそってピリピリ

          仕事のお供といえば、リーガルパッド。

          中途半端の真っ只中を走る27歳の僕。|『フランシス・ハ (2012)』

          27歳って、どんなイメージを持っていますか? 僕は今年で27歳になる(なった)んだけれど、どうもいまいち「27歳とは何か」が掴めていない。だんだんと管理職とか責任のある立場を任され始めたり、結婚して子どもができはじめたりするような年齢というのは自分も分かっているのだけれど(事実、自分も管理職をしていたりするが)、大学生の延長というか、もっと言えば「子ども」のような気さえする。自分が認識する「27歳」と実態の「27歳」が、うまくリンクしていないんですね。 だから、たまに年齢

          中途半端の真っ只中を走る27歳の僕。|『フランシス・ハ (2012)』

          都市は誰のもの?|第27回『CITIZEN JANE Battle for the City(2018)』

          ジェイン・ジェイコブスという人を知っていますか? 一般的にはそこまで馴染みのある人物ではないと思うけど、近代都市や都市計画を語る上で、絶対に欠くことのできない重要人物です。代表作はニューヨークの都市計画への批判を綴った『アメリカ大都市の死と生(1961)』や、現代経済を都市の観点で紐解く『都市の経済学(1986)』など。どちらも都市計画研究の重要な古典として知られていますが、もともと彼女は建築を専攻した学者ではなく、イチジャーナリスト・編集者だった。それも、キャリアの最初は

          都市は誰のもの?|第27回『CITIZEN JANE Battle for the City(2018)』

          さよならだけが人生か?

          寺山修司が『ポケットに名言』のなかで「言葉を友人に持ちたいと思うことがある」と言った。僕もこれには全面的に同意する。だから僕はいくつかのフレーズを紙に書いて手帳に挟み、ことあるごとに読み返している。 しかし、一方で「これは友人にはなれないな」というようなフレーズもなかにはある。その1つが「さよなら」という言葉だ。 井伏鱒二文学碑勧酒「さよなら」。 これは言わずもがな、別れ際に交わす挨拶の言葉だ。もともとは「左様ならば、これで…」という言葉が短縮され「さよなら」になったらし

          さよならだけが人生か?

          生唾が出るほどの、食事シーン。|第26回:『ソイレント・グリーン('73)』

          昔に書いた映画のエッセイで美味しそうに食べる姿が印象的だったと話した回があったけど、今回は「もっと」美味しそうに食べる姿が見られる映画『ソイレント・グリーン(’73)』の話です。 『ソイレント・グリーン(1973年)』舞台は2022年のニューヨーク。爆発的な人口増加と環境破壊により都市機能はもはや崩壊し、人々はソイレント社が配給する合成食品「ソイレント」を食べながらなんとか暮らしている状況のなか、同社の社長が暗殺されてしまうことをきっかけに、段々と「ソイレント」なるものの秘

          生唾が出るほどの、食事シーン。|第26回:『ソイレント・グリーン('73)』

          25年目の悲願。今年こそは、ベイスターズが頂点へ。|第25回:『メジャーリーグ』(1989)

          僕は小学校5年生のときに横浜スタジアムを訪れて以来、横浜DeNAベイスターズのファンをやっています。当時はまだ横浜ベイスターズという名前で、とてつもなく弱いチームでした。特に僕が熱心に野球を見ていた2000年代後半は、2006年が6位、07年の4位が最も高い順位でその後は6位、6位、6位と3年連続で最下位だった。しかも3年連続90敗というプロ野球記録のおまけつきで。あまりにも弱すぎて、たまに勝つと涙が出るほど嬉しかったのを覚えています。 どうしてこんなに弱いチームが好きだっ

          25年目の悲願。今年こそは、ベイスターズが頂点へ。|第25回:『メジャーリーグ』(1989)

          僕は勉強ができないけれど……。 第24回:『刑事ジョン・ブック/目撃者』

          音楽は好きですか? 実をいうと僕は、普段そんなに音楽を聞きません。でも何曲かは特別に好きな歌があって、仕事中とか散歩中とかに聞くことがあります。ジャンルも特にこだわりはなく、自分が気に入れば何でもと思っていますが、強いていえば、古い曲のほうが好きだったりします。 今回はそのうちの一曲。サム・クックの『Wonderful world』を紹介します。 Sam cooke 『Wonderful world(1960年)』歴史のことはよく分からない。生物学もだめ。 科学なんても

          僕は勉強ができないけれど……。 第24回:『刑事ジョン・ブック/目撃者』

          第23回:『Hors normes』(2019)

          ふと「なぜこんなに時間をかけてまで文章を書くのか」と思うときがある。 僕はいわゆる「遅筆」という性質で、1本の文章を書くのに3~4時間とか、内容によってはもっとかかることもあります。特に時間がかかるのが、今もこうしてたまにnoteに公開するエッセイの類。書きながら「この文章って何を言いたいの?」とか「この表現、言い回しは意味的に合ってるの?」とか、まるで横からツッコミを受けているような感じで、一向に筆(?)が進みません。 それに、書いたエッセイが読まれるとも限らない。 た

          第23回:『Hors normes』(2019)

          第22回:『バーニング 劇場版』(2018)

          噛めば噛むほど味が出るという言葉があるけれど、いったいどれくらいまで味が出るのか試したことはありますか? 昔、大学のサークルか何かの集まりで飲んでいるときにその話になり、その場にいた4~5人で一斉にスルメを噛んでみた。結果は30秒から1分くらいまでは味が出て、それ以降はただひたすらに顎が痛かっただけというもの。僕もなんとか3分くらいは……と粘ったんだけど、やっぱり30秒くらいが境目だった。 昔読んだ『ホームレス中学生』には、お米をずっと噛み続けていると「味の向こう側を超える

          第22回:『バーニング 劇場版』(2018)

          第21回:『ラーゲリより愛を込めて』(2022)

          くだらない言葉遊びが結構好きだ。 たとえば、ついこの間も映画『メッセージ』のnoteの冒頭で書いた「負けられない戦い」という表現。これを見るとつい「戦いは基本的に負けられないものだろう」とつっこみを入れたくなるし、普段使っている「折りたたみ傘」も、よくよく考えてみれば「傘は全部折りたたむだろう」と思ってしまう。言葉の順番をひっくり返すのなんかも好きで、昨年よく見かけた(今も一部のニュースで見る)「オリンピック委員会」をひっくり返して「委員会オリンピック」と読み、イギリスが風

          第21回:『ラーゲリより愛を込めて』(2022)

          岡本太郎って好きですか?

          岡本太郎って好きですか? 実は言うと僕は、長い間この人が苦手でした。「自分の中に毒を持て」とか「怖かったら怖いほど、逆にそこに飛び込むんだ」とか、そういう言い回しや教訓めいた自己啓発的な雰囲気が馴染まないというか。だから個々の作品は知っていても展覧会に行って絵を見たりすることもなかった。なんとなく、違うテイストの持ち主なんだなという印象で。 毒々しくて、刺々しくて、強烈。なぜ岡本太郎を苦手になったのか。いろいろとその理由を考えてみようと思うんだけど、まずその色彩感覚が自分

          岡本太郎って好きですか?