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今、世界で日本のメタルが沸騰している!

「沸騰しているのはオマエの頭だろ!!」

いや、しごくごもっとも。SNS で真面目な (時々不真面目な) 音楽記事の隙間隙間に、サブリミナル効果のように好き勝手に弾いた SAVATAGE やアイ・サレンダーの熱唱を挟み込むこのイヤラシさね。まさに姑息。まさに承認欲求の悲しきモンスター。まさにカマキリ先生。だけど、母さん仕方がないじゃないか!チミチミチミチミとフォロワー様を増やしてきたのは、最終的に SAVATAGE に加入するためなんだから。まあ、僕のことはどうでもいい。聞いてくれたまえ。先日、BRING ME THE HORIZON のオリヴァー・サイクスがこんなことを言っていたんだよ。

「15年前、俺たちはロックやメタルの世界で散々バカにされていた。でも今では、作り手も受け手も自然に多様性を尊重している。だから恨みは全然ないよ。ロックは流行を作るより、常にカウンター・カルチャーであるべきだ。だから今は健康的だよ」

ロックやメタル世界は昔に比べて健康的になってきている。うん、これはまちがいないよね。手前味噌だけど、Marunouchi Muzik Mag を読んでもらえれば、どれだけメタルが寛容で多様な文化になっているのか伝わると思うし。かつて、ボーイズ・クラブで欧米のものだったロックやメタルの世界、つまり "門番" が "異物" を排除していた閉鎖的な集団は確実に変わりつつある。"ありのまま" を受け入れられる文化にね。

かつて、世界で成功を収めた日本のメタル・バンドといえば LOUDNESS 一択だった。異論はあるだろうけど、一般的に、彼らは英語で歌い、限りなく欧米のヘヴィ・メタルに寄せることでその成功を掴んだと言えるのではないだろうか。もちろん、極東の島国から世界でリスペクトを集めるためには、寄せる以上の "スペシャルな" 努力と才能があったことは言うまでもないけれど。

LOUDNESS の成功によって、世界で認められるためには英語が必要だと信じられるようになった。実際、かつてはそうだったのだろう。流暢な英語でなければ相手にされない、西洋的なメタルでなければ売れていかない。事実、基本的に日本語で歌い、日本的なメロディーを紡ぐ ANTHEM が世界的な成功を収めることはなかったからね。

潮目が変わり始めたのは、Babymetal が世界中で賛否両論大論争を巻き起こしながらも、大きな注目を集め始めたころだろうか?それから、人間椅子や COFFINS、それに LOVEBITES や BANDMAID も海外誌、ネット空間で話題になり始めた。

日本のメタルが世界で存在感を放ちつつある。僕の中で、そんなフワッとした期待が確信に変わったのは、THY LOW のミカ・サロに行ったインタビューだった。

「僕が日本の音楽に惹かれたのは、メロディーなんだ。日本のメタル・バンドは、曲の中を走る赤い線のように、常にメロディーに焦点を当てていると感じるよ。これは、僕自身の音楽においても非常に重要なことなんだ」

ミカは ANTHEM, GALNERYUS の名を挙げてハッキリとメロディーに惹かれると言った。これまで世界では受け入れられないとされてきたコード感の豊かな "邦楽的な" メロディーに。ましてや、日本語詞を主軸としている両バンドにだ。

インターネットのおかげで、世界が "小さく" なった。そして、"特別" インターネットを愛するメタル世界の人々は、世界中の文化を、異物を排除するのではなく、あるがままに受け入れるようになった。英語も西洋的な音像も必須ではなくなった。それは BLOODYWOOD や THE HU のブレイクが証明しているだろう。

そして今年、日本のメタルが世界で沸騰している。

先に取り上げた SIGH の "Shiki" は、海外各誌で大絶賛状態だ。今回の SIGH はアートワーク、歌詞、音楽、そのすべてが "和" を中心としたアルバムとなっている。そして、その世界観がこれまで以上にメタル世界で愛されている。(もちろん SIGH は、弊誌の "人生を変えた5枚のアルバム" でも度々登場するほど、海外での評価は高かったわけだけど) 

記事を読んでいただければ、それが "セルアウト" ではなく偶然の産物であることは容易に伝わるはずだけど、そもそも一昔前まで "日本的な" メタルは決してセルアウトのためでさえなかったのだ。日本語で歌い、和楽器を奏で、百人一首と怪談を諳んじる。海外の人にとって、そんな "日本らしさ" "伝統文化" が今ではヘヴィ・メタル最高の "スパイス" になっているわけだよ。

だけどね、受けているのは SIGH や 人間椅子のような歴史と伝統だけじゃない。

僕は伝える者の端くれとして、毎日無数の世界中のウェブサイト、コミュニティに目を通している。すると、そこでは現在、日本のメタル・バンドが本当に沢山、絶賛され、大きな話題になっているんだ。いつ目を通してるのかって?仕事中だよ!オッサンとパチンコやボートやカマキリ先生の話なんかしてもしょうがないでしょ?時間の無駄。

中でも、IMPERIAL CIRCUS DEAD DECADENCE, 明日の叙景、ZEMETH は実に良く見かける。耳の早い読者の皆様ならすでにチェック済みだろうけど、彼らの音楽性はユニークで、非凡で、クオリティーも非常に高い。だからこそ、世界で賞賛されている。そこは大前提として覚えておいてほしい。

だけど、それだけじゃなくて、彼らはアートワーク、リリック、メロディー、世界観にモダンな日本らしさを加えているんだ。

ある者はアニメや同人に厨二心を、ある者は小説や映画を、ある者はV系の血統を、ある者は空気や叙景を個性の一つとして、自らの音楽やアトモスフィアに織り込んでいる。"クール・ジャパン" じゃないけど、現代日本を投影したメタルは、そのクオリティと相まって、憧れを伴って世界中の欲しがりなリスナーの心を捉え、好奇心をくすぐっているんだろう。そうそう、先日行なった CAVE IN のインタビューの中で出た、ENDON から影響を受けたという話も印象的だったな。

一方で、真っ直ぐに本格的メロデス道を追求しているように思える THOUSAND EYES の名がなかなか挙がらないのは歯痒い限りだ。素晴らしい作品を生み出しているだけにね。皮肉なことに、日本では人気、知名度ともにかなり大きな存在となっているのに。もしかすると、海外のリスナーからすれば逆に、そうした "日本らしさ" が足りていないのかもしれない。だから目にとまるところまでいかないというかね。

「OK、世界で日本のメタルが沸騰しているのはわかった。でもアンタ、最近日本のバンドに全然インタビューしてないじゃない? やっぱその汚い色の頭、沸騰してんじゃないの?」

ごもっとも。仰る通り。まあでも、なんだろう…日本のバンドにかんしては、僕がやらなくてもやる人は沢山いるから。僕は僕にしかできないことをやりたい。だからって、応援していないわけじゃないんだよ。というか、心の底から応援している。

あとは伝える側として、あんまりベタベタしたくないというかね。アーティストと一定の距離感がなきゃ、やっぱりリスナーからは信頼されないでしょ?いきなりブラジャーを剥ぎ取ってニオイを嗅ぐような無法者にはなりたくないからね。僕はね、「すいません、ブラジャーのニオイを嗅いでいいですか?」とお祈りしながら礼儀正しく尋ねる、慎ましい変態紳士を目指しているんだよ。まさにプレイング・マンティス。誰がパイ返しじゃ!








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