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なぜメタルやロックには "ストーリー" が必要なのか?

みなさんはスケベだろうか?

僕はドスケベだ。教授じゃないけど、起床している時間帯のほぼ2/3はエロいことを考えている。本当にアナがあったらハメてしまいたいほどお恥ずかしい話なのだが、僕は中学生のころ WHITE ZOMBIE のショーン・イスールトが好きすぎて、彼女の載った BURRN! 誌をペロリと舐めてみたことがある。もちろん、ショーンの味などするわけもなく、カラー印刷の苦味だけが舌に残ったわけだけど、それでもギリギリでそのページを食べてしまわなかった僕を今となってはほめてあげたい。

もちろん、僕もいい大人だ。ここ10年ほどは節度を守ったエロイアレイターを貫いている。チンポの皮を被った誠実の異名を持つまでになった。だけどまあ、男性女性、人によって程度の差こそあれ、ほとんどの人がどこかにスケベや変態性を抱えながら生きているはずなんだ。

さて、ではあなたはどんな時、猛烈に興奮するだろうか?

実をいうと、僕は突然パッと裸を見せられてもそんなに興奮しない。むしろ、えー…なんなん…ちょっとやめてもらえます…無理なんですけど…警察呼びますよ…とドン引きしてしまうタイプだ。だから、出会って5秒で合体とかもまったく意味がわからないし、共感もできない。だってそれ、THE FACELESS のメンバー選びくらい雑で誰でもいい感があるし、もうスポーツとか競技の領域ではないのだろうか?

僕にとってのエロとは物語だ。侘び寂びがなければいけない。

だから、エッチなビデオも絶対に早送りしたりはしなかった。GEO の店員さんに気味悪がられるほど念入りに吟味し、選出した珠玉の一作。この女の子には、こんな背景があって、こんな仕草がかわいらしくて、こんな話し方で、こんな理由でエッチなビデオに出ることになった…そのすべてを享受しておかなければ、僕のバナナがメルトすることはなかったからだ。そこに嘘が混ざっていても構わない。むしろ僕は騙されたいんだ。

小説にしても、アニメでも、ゲームでも、ストーリーがあるからこそエロが際立つ。もしかしたら、その究極が実際の恋愛なのかもしれない。

同様のことが、ロックやメタルにも言えないだろうか?

つい先日、僕はダウンロード・フェスに行ってきた。本当に久々のメタルフェスということもあり、打ち震えるほどの快感と幸福感をおぼえたよ。セロトニンとドーパミンが交互に分泌された中で、こるぴ様にオッパイを揉みしだかれ「肩車してやるから、STEEL PANTHER でオッパイ出せよ!」 とエッチなご褒美をいただき軽く昇天してしまった。

ただ、なぜそこまで快感と恍惚を享受できたのかといえば、やっぱり "ストーリー" を知っているからなんだよね。

例えば、THE HALO EFFECT は当然楽曲も演奏も素晴らしかったけど、僕たちはそこに立つ漢たちが (イェスパーは不在だったが) かつて IN FLAMES という巨大なバンドに大なり小なり関わって、メロディック・デスメタルという珠玉のジャンルを打ち立てたことを知っている。そのバンドを離れてからの苦難や葛藤、そして成功も知っている。互いの友情も知っている。だからこそ、再びこの地で相見えた英雄たちに震えたんだ。

ストーリーがあるのはなにも彼らだけじゃない。

AT THE GATES は今の PANTERA や MESHUGGAH くらいの "大きさ" になっていてもおかしくない存在だった。メロデスの始祖なんて呼ばれているけど、"Slaughter of the Soul" は唯一無二のアルバムで、後の定型化体系化されたメロデスとは一線を画す怪物だった。だけど、アンダースが "ビッグ" になることのプレッシャーに耐えかねて絶頂で解散してしまい、育てた果実の美味しいところを全く享受せずに去ってしまった。だからこそ、今、あのアルバムを引っさげて世界を回る彼らに圧倒される。だからこそ、今、あのアルバムを全曲叩きつけてくる彼らに涙が出る。

僕がベスト・アクトに勝手に選んだ CODE ORANGE は、シンプルで退屈なメタルのライブ、新たなアイコンのいないメタル世界を変えようとがむしゃらに突っ走っているし、MASTODON は様々な喪失と向き合いながら美しいエピックを完成させた。

そうした背景、バンドの物語、アーティストの "テーマ" を知っておくだけで、CD を流す時、MV を視聴する時、ライブを楽しむ時の深みが全く変わってくるんだよ。世界がちがって見えるんだよ。

残念なことに、日本の音楽メディアやレコード会社はそこを理解していなさすぎる。ただでさえ、メディアやレーベルの役割、意義、存在感は昔と比べると途方もなく小さくなっている。コンテンツ自体も、文章から動画へと完全に移行しつつある。聴けばわかる、見ればわかる、語ればわかる、スクロール一発のインスタントな文化に変わりつつあるんだよ。そんな中で、文章で何かを伝えるべき僕たちに残された使命は、ストーリー・テラーとなることだけなのに。

逆手に取らなきゃ。音だけじゃ、動きだけじゃ、語りだけじゃ伝わらないことを伝えなきゃ。文章じゃなきゃできないことをやらなきゃ。でもこの国には、"テーマ" のないインタビューや記事があまりに多すぎる。雑談するだけなら、動画に勝てるわけがないんだよ。「このアルバムはどうやって制作されたんですか?」お決まりだからって、もう別に聞かなくてもいいよ。興味深い答えなんて返ってこないよ。ググればわかるようなことを聞かなくてもいいよ。このバンドはここ、あのバンドはこれって、テーマを一つに絞っていれば、むしろ質問なんて5つくらいでも面白いインタビューになるのに。

ただし僕も、聴けばわかる、見ればわかる、語ればわかるのインスタントな文化へ世界が流れることに抵抗がないわけじゃない。たしかに、インスタ美女や TikTokダンスは永遠にスクロールしてしまうよ。だけどね、こう思うんだ。ああ、この美女たちの性格や、生き様や、住んでいる場所や趣味、好きな食べ物、好みのタイプが知れたらなあって。そうしたら、この無限スクロールの一期一会な世界はどれだけ色鮮やかになるだろうって。うんうん、そうだね。わかってる。皆まで言うな。ネトスト、ダメ絶対!!!



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