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吉田
2022年9月9日 18:05
私には苦手なものなんてない。中学生の私は無敵だった。誰に媚びる必要もない。スポーツも勉強も友人関係も何一つ困ることはなかった。男子たちはみんな情けないし、先生は信用なんかできない。私は自分を一番信じてきた。「トモちゃん、描くの早いよね」「ヨリが遅いんだって」「……やっぱり?トモちゃんの下絵は線に迷いなくていいよね」 私なんてほら、と言って見せてきたヨリの下絵にはガタガタの鉛筆の線。何
2022年8月7日 19:12
私は悩んでいた。ホームルームが終わって何分経っているのだろうか。一枚の紙を目の前に、わざとらしく頭を抱えてみたりもした。ここが運命の別れ道。大げさでもなんでもなく中学生の私にとっては死活問題だった。「あれ?ヨリ、まだ帰ってないの」「まぁね」「まだ決まんないの?」「……まぁね」「だから一緒のにしよって言ってんじゃん」「だってさ、」「無理だよ」と言葉を続けようとした時、彼女は「もぉ
2022年7月30日 15:02
小学生の頃の私にとって家族は決して温かい存在ではなかった。怖かった。特に父がこの世の誰よりも怖かった。父の言いなりの母も、父に可愛がられていた兄2人も、誰よりも近いはずの家族の心は誰よりも遠い場所にあった。というより、私だけが遠い場所に置いていかれたんだ。 兄2人は欲しいものを何でも買って貰えていた。私に来るのはいつもそのお下がり。女の子らしいものを何も持っていなかった。リボンのついた髪留めも