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黄色の傘を買った日
いつもは選ばない黄色の花の傘を買った。
ずっと使っていた紺の折り畳み傘が壊れてしまったのだ。いつも傘を買う時私は紺色を買う。黒だと重いし、でも明るい色は気が引けるからだ。
紺の小花柄を右手にレジに向かおうとすると、マネキンに飾られている大振りの黄色の花が鮮やかな傘が目に入った。
不思議だった。
胸がひきつけられる。
急にその傘を見たらなぜか今まで選ばないような華やかな傘を買いたくなった。
店員さんが私に近づき、「この傘華やかでかわいいですよね~。去年のタイプなので、ラスト一点でもう入ってこないんですよ~」
とセールストークのようなことを言われると、
「お客様が手に持っている紺の傘は一番新型で、再入荷したものになるんですよ~。雨と日傘兼用でUV加工が最高のものになっています」
と同時に言われ、やっぱり思い直して私はいつもの紺を買おうとした。
「よろしければ、お鏡で合わせてみますか?」
隣にあった鏡。レジに紺の傘をもっていこうとしたが、店員さんの言われるまま、おもむろに鏡の前にたった。
黄色の傘を開く。
バサッ
ぱぁっと世界が明るくなった。
「お客様、黄色お似合いです。かわいいですよ!」
「たしかに素敵ですね!」
始めて手にした黄色の傘は思った以上に華やかで私の世界を彩った。
「雨だと暗くなりますからねぇ~。やっぱりこれぐらい華やかなものだと明るくてかわいいですよね」
「そうですね。これにします」
私はいつもなぜか人の目を気にして一番気に入ったものを手に取ってこなかった。これだったら、目立たない、無難だ、万人受けする。そんなことばかり。
でも休職して、人に会うことが減ったからかな。
自分が惹かれるものを選びたくなった。
華やかで、自分の心を明るくしてくれるアイテムが良かった。
店員さんはにかーっと笑う笑顔が黄色の傘のようでとても素敵だったなぁ。
自分が本当に気に入ったものを気持ちのいい店員さんから買うことが出来て、今日はいい日だ。
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