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壮大な「選挙へ行こう!」キャンペーンだった『もしも徳川家康が総理大臣になったら』

【個人的な満足度】

2024年日本公開映画で面白かった順位:80/89
  ストーリー:★★★☆☆
 キャラクター:★★★☆☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆

【作品情報】

   原題:-
  製作年:2024年
  製作国:日本
   配給:東宝
 上映時間:110分
 ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ
元ネタなど:小説『もしも徳川家康が総理大臣になったら』(2021)
公式サイト:https://moshi-toku.toho.co.jp/

【あらすじ】

※公式サイトより引用。
時は2020年、コロナウィルスが猛威を振るい日常を奪われた日本。国内どころか世界中が大混乱に陥る中、首相官邸でクラスターが発生、あろうことか総理大臣が急死。そこで政府が実行した最終手段、それは「AI・ホログラムにより歴史上の偉人たちを復活させ、最強内閣をつくる」という前代未聞の計画だった。

総理大臣を託されたのは“江戸幕府を作り上げた伝説の男”徳川家康(野村萬斎)。そして、日本史に燦然と輝く大スターたちが議員バッジをつけて入閣。官房長官を“幕末の風雲児”坂本龍馬(赤楚衛二)、経済産業大臣を“最強にして最恐の革命家”織田信長(GACKT)、財務大臣を“空前の成り上がり者”豊臣秀吉(竹中直人)、ほかにも紫式部(観月ありさ)、聖徳太子(長井短)、北条政子(江口のりこ)、徳川吉宗(髙嶋政宏)、徳川綱吉(池田鉄洋)、足利義満(小手伸也)など、通称≪偉人ジャーズ≫によるドリームチーム内閣が誕生する。圧倒的なカリスマに加え、政策を推し進める“えげつない”実行力に人々は驚愕し、日本中が熱狂していく。

そんな中、テレビ局の新人記者・西村理沙(浜辺美波)はスクープを取ろうと政府のスポークスマンである坂本龍馬に近づくのだが、ひょんなことから偉人ジャーズの活躍の裏に渦巻く黒い思惑に気付いてしまう――。

果たして、陰謀の正体とは?そして、日本史に新たに刻まれる“事件”の真相とは?!

【感想】

※以下、敬称略。
原作小説は未読ですが、これが日本の「What If」かって感じですね。歴史上の偉人たちを現代に甦らせ、日本の政治を立て直してもらうっていうその設定は面白かったんですが、映画としては個人的にはそこまでハマらなかったです(笑)

<キャラクターへの愛着がモノを言う>

これもマーベルやDCと同じで、たくさんキャラクターが出てくるのはいいんですが、結局いかにそのキャラクターのことを知っているか、いかに愛着があるかっていうので面白さが左右される部分はあると思います。今回出てくるキャラクターは徳川家康や織田信長、豊臣秀吉、紫式部、聖徳太子など、普通に勉強をしていればその名を知っているであろう超有名人ばかり。そういう意味では知らない人はいなかったですし、彼らが過去にやってきたことはそれなりにわかってはいるんですけど、個人的に歴史上の人物に思い入れもなければ、人柄も知らないのでね、、、「まあそうだよね」っていう感じにしかならずで(笑)彼らについて書かれた本を読み、大河ドラマをよく観ている人ならば、この偉人たちの意志決定や現代での振る舞いを面白おかしく楽しめたのかもしれません。

<登場人物が多くてひとりひとりの扱いが少ない>

しかも、本作はこの2時間の中に突如として復活した10人を入れ込むので、当然尺の関係でひとりひとりのキャラクターの深掘りはできません。例えば、徳川家康の復活で1つの映画、織田信長の復活で1つの映画、、、とやっていって、最終的に10人が集うような形にすれば、もっとエモみを感じたかもわかりません。要はMCUのアベンジャーズ形式ってことです。まあ、歴史上の偉人たちなので予備知識はすでにあるよねってことなんでしょうけど、僕からしたら『ジャスティス・リーグ』(2017)並みに唐突感はありましたかね。さすがに「誰だお前」っていうようなマイナーキャラはいませんでしたけど、いきなり復活して当たり前のように主要メンバー扱いですから(笑)

<日本人にしか感じ得ないエモさはあるかも>

とはいえ、時代の違う偉人たちが一堂に会する光景はシュールでしたし、各偉人たちの特徴をいじった設定は面白かったです。中でも、聖徳太子がインタビューで複数の記者の言うことを聞き分けるとか、徳川吉宗が暴れていないのに現代では暴れん坊将軍とされているとか、ちょいちょい笑えるのは学校で勉強していたからこそですね。こういうとき、勉強をしていると楽しみの幅が増えるなと感じるので、そういう知識の下地みたいなのもあった方が、この映画を楽しむ上では有利かもしれません。逆に、海外の人にはほとんどこの映画の面白さは伝わらないかもしれません。

<せめて実体が欲しかった>

ただ気になるのは、この偉人たちはタイムスリップして現代にやってきたのではなく、AIとホログラムによる"再現"でしかないということなんですよ。だから、そんまんま"本人"ってわけではないので、本当にそういう考えや行動をするのかっていうのも怪しいですし、そもそもホログラムで実体がないので、そんな虚像に果たしてみんな従えるだろうかっていう気はしました。せめてタイムスリップかクローンかで実体は欲しかったですね(笑)

<よりよい国にするには国民ひとりひとりの意識改革から>

最後のメッセージは大切なんですが、う~ん、映画としての面白さで言うとどうでしょう。確かに徳川家康の「現代の民を信じる」という演説はグッとくるものがあったんですが、本当に彼はそんなことを言うだろうかという疑問が拭えないのと、そこから現代における選挙の投票率がメチャクチャ上がるという持って行き方は、若干恣意的なメッセージも感じてしまう部分はありました。別に投票自体を押し付けているわけではないのですが、、、まあでも国民が政治に介入する一番手っ取り早い選挙しかないので、これはこれでいいのかもしれませんね。なんか、壮大な「選挙へ行こう」キャンペーンに見えてしまいましたけど(笑)

<そんなわけで>

浅く広い感じが映画としての面白さには物足りない印象はありましたけど、日本で超がつくほど有名な偉人たちによる現代政治への揶揄と改革のためのぶっ飛んだ行動力自体は面白かったです。どうせなら、選挙前に公開したり、むしろ選挙キャンペーンの一環として利用してもよさそうだなと思ったんですが、あれ、選挙法に引っかかるんでしたっけ(笑)あと、赤楚衛二の坂本龍馬はかっこよかったです。

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