架空の海外D2Cブランド事例① EVER TEA(お茶)

D2C・・・Direct to Consumerの略。Amazon等のECプラットフォームを利用せずに、SNS等を活用してユーザーを獲得・育成し、自社製品を自社ECで販売するビジネルモデル。2010年前後からアメリカのスタートアップを中心に世界各国でその存在感を強めている。ユニリーバに10億ドルで買収された髭剃りブランド”Dollar Shave Club”、非上場ながら時価総額が14億ドルを超えたスニーカーブランド”Allbirds”等が代表的。

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「ティータイムのあるべき姿を取り戻す。それが私たちのミッションなの。」
-ジェシカ・ヘンドリクス, EVER TEA Inc. CEO

EVER TEAはニューヨーク発のお茶のD2Cブランド。紅茶から緑茶やプーアル茶まで、世界中のお茶を幅広く取り揃える。茶葉単体での販売は行っておらず、販売しているのはティーバッグに入った茶葉だけだ。
その特徴はなんと言っても、淹れてから時間が立っても味が濃くならない特殊なティーバッグにある。

創業者のジェシカ・ヘンドリクスは大学時代に留学したイギリスで紅茶の奥深さに出会い、帰国後ニューヨークでWEB編集者として働き始めてからも毎日オフィスでも家でも色々なお茶を飲むことを習慣としていた。

そんな日々の中で彼女はある義憤を感じるようになる。それは、せっかくお茶を淹れても、ちょっと目を離したすきにお茶が出すぎてしまい、濃くなりすぎてしまうことだった。
「せっかくお茶を淹れてこれからティータイムって時に、なんでティーバッグや茶葉を取り出すタイミングを気にしなきゃいけないの?私のティータイムを返してよっていつも思ってたの。」

放っておくとお茶が濃すぎて美味しくなくなってしまう。かといって、タイミングを見計らってティーバッグや茶葉を取り出すのは面倒だし、何よりもせっかくのティータイムが邪魔されてしまう。
ジェシカが考えついた解決策は、ティータイムを邪魔しない理想のティーバッグを作ることだった。アメリカ各地の繊維工場にコンタクトを取り、リサーチを開始したジェシカは、ミシガン州のアイアンウッドという小さな町に特殊な繊維を製造している工場があることを突き止める。

それが、今のEVER TEAに使用されている"ヒート・リアクト・ファイバー"だった。熱を加えることで繊維の網目の大きさを調整できるこの素材を使って、淹れて一定時間が経つと網目が閉じてそれ以上お茶が出てこないティーバッグを作れないかとジェシカは考えたのだ。

2017年にクラウドファンディングで8000ドル(約86万円)を調達したジェシカは、200回を超える試作を経て、遂に時間が立ってもお茶が濃くなりすぎないティーバッグの開発に成功する。
当時運営していたお茶に関するブログ"Jessica’s Tea Life"上での販売を始めると、SNS上でたちまち話題となり、最初に製造した2,000パックは3日足らずで売り切れた。その後も約半年間、ブログ上で個人事業としての販売を経て2018年に法人化。"The best tea time comes from the best tea bag."(最高のティータイムは最高のティーバッグから)をキャッチフレーズに、D2CブランドEVER TEAを立ち上げた。

現在、取り扱うお茶の種類は世界各国のお茶、計37種類にまで広がっており、それぞれのお茶に最適なティーバッグが使用されている。立ち上げ当初は単品販売だけだったが、現在は2019年8月から開始した月額29ドルのサブスクリプションプランの販売が売上の4割を占めているという。

2020年1月にはVC5社からシリーズAラウンドで計900万ドル(約9.7億円)を調達。2020年内はアメリカ国内でのさらなる拡販、2021年内には海外展開を目指している。

「私たちはやっとあるべきティータイムを取り戻しつつあるわ。でもまだまだこの世界には取り戻さなきゃいけないティータイムがたくさん残ってるの。それをどうやって取り戻すかしか今は頭に無いわ。」

いまや60名の従業員を抱えるジェシカは、月に一回のEVER TEAユーザーとのファンミーティング"EVER TEA Party"を楽しみにしながら、今日もより良いティータイムを作り出すために邁進している。


企業情報
EVER TEA Inc.
2018年ニューヨークにて創業。"ヒート・リアクト・ファイバー"を応用した、時間が立っても濃く・渋くなりすぎないティーバッグのお茶”EVER TEA”を販売している。単品購入と、月額29ドルのサブスクリプションプランを提供。2020年1月にシリーズAラウンドで900万ドルの調達を完了。

CEO略歴
ジェシカ・ヘンドリクス(31)
アメリカ ワシントン州カークランド出身。コーネル大学卒。
留学先のイギリスで紅茶の奥深さに出会い、以後様々なお茶を年に1000杯以上飲むようになる。ニューヨークでWEB編集者として働いていた2017年にEVER TEAの原型となる個人事業を開始し、2018年に法人化。
口ぐせは「ティータイムを取り戻す。」
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フィクションです。
実在の人物・団体とは関係ありません。

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