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なぜecforceのCMはヒットした?|きんに君とフェルメール

はじめまして。都内の広告代理店でマーケティングやコミュニケーション戦略のプランナー(ストラテジックプランナー)をしている、アルカムックと申します。

まずは、タイトルの問いに対する答え(結論)から。

①分かりやすいインパクトでアテンションをひき、①メジャー感で期待させ②トレンド感と、④ツッコマレビリティの高いクリエイティブで生活者のエンゲージメント(いいね・RT・リプライ)を引き出したこと。

「これだけじゃ何言ってるかよくわからない」って方は是非この記事を読んでみて欲しいです。

そもそも、なぜそんな話をするの?

先日こちらのツイートがタイムラインに流れてきました。

BtoBのSaaSってターゲットがごくごく限られるサービスであるにもかかわらず、めちゃくちゃバズっていて「何事?」と思い、このCMについてちょっとだけ考えてみたくなりました。

どんなCMだったのか?

企画アイディアが秀逸であることはさることながら、このCMがすごいのはほぼ1枚の絵で完結しているところ。非常に分かりやすいので特に解説は要らないですね(笑)

ヒット要因を考察してみる

では、本題です。ヒットした要因は大きく4点に集約されるのではないか?と考えました。改めて冒頭の内容を再掲し、それぞれ解説していきます。

①分かりやすいインパクトでアテンションをひき、①メジャー感で期待させ②トレンド感と、④ツッコマレビリティの高いクリエイティブで生活者のエンゲージメント(いいね・RT・リプライ)を引き出したこと。

①分かりやすいインパクトでアテンションをひく

デジタル時代の広告クリエイティブは「分かりやすいインパクト」がめちゃくちゃ大事です。どういうことか。

いきなりですが、みなさんは普段どんな風にSNSを見ているでしょうか?
Twitterを見るとき、隅々までツイートを確認することなく、さらさらと流し見ているのではないですか?
TikTokを見るとき、全ての動画をきっちり視聴しきるのではなく、スワイプを繰り返しているのではないですか?

殆どの生活者もそんな風に、ほとんど集中せずにコンテンツを見ています。広告なんてもっともーっと鬱陶しくて、関心がないものなので、すぐにスワイプされてしまうのです。

だから、TVCM以上にWeb・デジタルで流すCMには「分かりやすいインパクト」が求められるのです。

冒頭にも述べましたが、今回のecforceのCMは「ほぼ一枚絵」でだいたいの内容が把握できる分かりやすさがあります。
しかも、フェルメールの絵画の中にきんに君がなぜか混ざりこんでいる、見た瞬間のインパクトは二度と忘れられないものがあります。

これが例えば、無名の絵画と、無名の俳優だったらどうでしょう?多分スルーされてしまうでしょう。それがどんなに秀逸な組み合わせだとしてもみんなが知らないものを組み合わせても、自分ゴトとは程遠く、見向きされません。

日本国民なら殆どすべての人が義務教育で習っているはずのフェルメールの絵画と、テレビ、CM、YouTubeに引っ張りだこのきんに君だからこそ、この「分かりやすいインパクト」を作れているのだと思います。

インパクトの出し方はまた別の記事に譲ることにしますが、記憶に強く残っている手法論でいうと、「とにかくデカいものを作ってみる」とかも有効ではないでしょうか。(例えば、貞子3Dのアドトラックはものすごくバスった記憶。)

②メジャー感で期待させる

世は大コンテンツ時代です。
NetflixもhuluもAmazonPrimeもYouTubeも…スマホゲームだって無料で遊べちゃいます。
そんな大コンテンツ時代に広告を見せるのは至難のワザ。
「分かりやすいインパクト」でユーザーのアテンション(関心)を惹きつけたとしても、その後シッカリ見てもらわなければ意味がありません。

視聴してもらうには、そのコンテンツを見ても大丈夫なものであると証明してあげなければなりません。でも、どうやって?

結論、「なかやまきんに君」というタレントの存在がその役割(=このコンテンツは見ても大丈夫なものだと感じさせる)を担っています。

なかやまきんに君は多くのメディアで引っ張りだこの「時の人」ですよね。「売れてる芸人=面白い事が証明されている=見ても時間が無駄にならない、おもしろいコンテンツを提供してくれるだろう」というような事を殆ど無意識のうちに生活者は頭に思い浮かべてしまっています。

この、「見ても自分の時間が無駄にならないコンテンツ」の証明には「メジャー感」が必須です。「王道で外さないであろう雰囲気」とでも言いましょうか。この雰囲気をまとったコンテンツは見られます。広告であっても見られるのです。

人気のタレントを起用する以外にも、例えば、映画や漫画やドラマでよくある定番の表現を取り入れるなどでもメジャー感を出すことは可能です。(ただし、①のインパクトの事もお忘れなく。)

③トレンド感で参加させる

人間は社会性の高い生き物です。一人では生きていけないので、コミュニティを作り、社会との接点を持ちながら暮らしています。

マズローの欲求5段階説にも、「社会的欲求」と呼ばれる社会への帰属欲求がある通り、人間は常に社会と接続していたいのです。

社会と接続し、他者とコミュニケーションするためには、「共通の話題」が必要です。人がトレンドを追いかけてしまうのはこの共通の話題を追い求めているからです。

実際、実はこのCMが制作される以前に、バズっていたツイートがありました。(ecforceのこのCMがタイムラインに流れてきた瞬間「殆どこのネタのパクリじゃねーか!」と思ったのですが、ちゃんとサービスの言いたいことを踏まえた表現に帰着させているのはお見事でした。)

きんに君自体、あらゆるメディアやCMにひっぱりだこだったりするので、トレンドの中心にいるような存在ではあるものの、Twitter上で既にバズった表現をオマージュして、トレンド感を演出したのがこのCMのヒット要因のひとつだと推察します。

みなさん、Twitterでバズった表現は懐にストックしておき、ここぞというときに企画に活かして参りましょう。

④ツッコマレビリティの高いクリエイティブでユーザーのエンゲージメントを引き出した

コンテンツをヒットさせる、バズらせるためには、TwitterやTikTok、YouTube…といったプラットフォームから評価されるコンテンツを投稿しなければなりません。
プラットフォームが評価するコンテンツとは、世の中から耳目を集めるコンテンツです。つまり世の中が反応してくれているコンテンツです。

「なんかいいな、面白い」と思ってもらうだけではユーザーは反応してくれません。「いいねしたい、リプライしたい、リツイートしたい、コメントしたい、クリックしたい、もっと見たい…」といった反応を引き出していかなければなりません。広告であっても、です。

そこで重要になるのが、「ツッコマレビリティ」です。何かで見た言葉ですが、要は「ユーザーにツッコミの余白を提供してあげる」という事だと解釈しています。

ツッコミとは漫才のツッコミの事。あえて「とボケ」て、ツッコミを誘い笑いを誘発するのが漫才ですが、コンテンツの世界では「とボケ」のみが余白を提供するための方法ではありません。

例えば、アニメや漫画のストーリーにあえて説明しすぎずに謎の伏線らしきものを貼っておき、ユーザーに考察や議論させることもツッコマレビリティの一つであると言えます。プレゼンであえて内容をぼかしておき、質問させる事もツッコマレビリティでしょう。

ecforceのCMも、この余白作りが非常に秀逸でした。フェルメールという世界的に認められた知性的な絵画に、なかやまきんに君のパルメザンチーズ芸を組み合わせるというギャップが余白を作ります。

もともとの、きんに君のパルメザンチーズ芸も十二分にツッコマレビリティの高い芸であると言えます。
ただ、フェルメールの絵画という一見、知性を感じるデザインに落としてあげることで、余計にその余白の白さがが際立って、みんながその真っ白なキャンバスにお絵描きしたくなる。つまり「なんだこれww」とツッコミを入れたくなる広告に仕上がっています。

余白を大事にしてエンゲージメントを引き出した、これもecforceのCMがヒットした理由の一つでしょう。

遊び心をもって、余白を意識した企画を作ってまいりましょう。

まとめ

改めてになりますがecforce事例からの学びは大きく以下4点でした。

①分かりやすいインパクトでアテンションをひく
 ・分かりやすいインパクトはデジタル広告で必須
②メジャー感で期待させる
 ・定番の表現や人気のタレントを使う
③トレンド感で参加させる
 ・Twitterでバズった表現をストックせよ
④ツッコマレビリティでエンゲージメントを引き出す
 ・強烈なギャップ、伏線への議論、質問待ち等で余白作りを

どうでしたか?
みなさんのヒットする企画づくりのお役に立てたら嬉しいです。
お役に立てそうであればぜひ、noteやツイッターのフォローをお願いします。

では、また。アルカムックでした。

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