見出し画像

【読書】対話による停戦・非戦への道~勝手に応援!「ビッグイシュー日本版」(VOL.452 2023.4.1)~

「ビッグイシュー日本版」を勝手に応援する記事、第55弾です。

そもそも「ビッグイシュー日本版とは何か」をご説明した第1弾は、以下をご覧ください。


今号の特集は、「非戦のリアル」です。


伊勢崎賢治さんの話をまとめたこの特集、非常に読みごたえがありました。冒頭に挙げられた「戦争プロパガンダ10の法則」が、まず強烈です。すべて今のロシアに当てはまることばかり。特に4番目の「われわれは領土や覇権のためにではなく、偉大な使命のために戦う」は、ドンバス地方のロシア系住民の保護を「特別軍事作戦」の大義名分にしたロシアの言い分そのものですね。


以下、印象的だったことをまとめておきます。


「1907年のハーグ平和会議で締結された条約の中に中立法規があって、その基本的な考え方は”武器を供与したら中立性が失われる”というものです。なので、自衛隊のヘルメットや防弾チョッキを供与してしまった日本も、参戦国とみなされても文句は言えないのです」

p.9

取り返しのつかないことをしてしまいましたね。


伊勢﨑さんは、ロシアの狙いを「東部ドンバス地方の2つの州と、クリミア半島をウクライナが放棄すること」と「その間にあるマリウポリを陥落し、”陸の回廊”にして、西のモルドバ国境まで延長することで、ウクライナを黒海にアクセスできない内陸国にすること」だと考えている。

p.9

後半の狙いには、なるほどと思いました。石炭などの斜陽産業しかないドンバス地方には、それほどロシアにとって魅力はないはずです。なのに結局併合してしまった理由が、今ひとつ分からなかったのですが、ウクライナを内陸国にするのが目的なら、納得がいきます。


「戦争は始まる前に回避すべきで、敵と対話して戦争を回避するのも、始まってしまった戦争を対話によって1日も早く止めるのも政治家の役割」

p.10

どの国の政治家にも、心に留めておいてほしい言葉です。


「停戦は戦争をしている両国が疲弊し、戦況が硬直した頃に、戦争犯罪をどうするかはとりあえず棚上げして、小康状態が続いている軍事境界線に緩衝地帯を設けて、停戦ラインを引く、という形で行います。そこに国連などの中立的な監視団を置くことで、停戦の継続が可能になります」

p.11

「両国が疲弊し、戦況が硬直した頃」を待たず、早く停戦する方法はないのでしょうか。1つの提案として、「原発から半径何㎞かを非武装緩衝地帯にして、国連の監視団を常駐させることが、国連総会主導の停戦調停に向けた有効な口実になるかもしれ」(p.11)ないと伊勢崎さんは言っています。


特集以外では、瀬尾一樹さんのエッセイ「"スキマ雑草”の攪乱依存戦略とは?」が面白かったです。

攪乱とは、生育地が洪水や火事、草刈りや工事など何らかの原因によって破壊されること。それにより他の植物がいなくなった場所に真っ先に入り込み、いち早く子孫を残すことに特化したのが雑草たちです。攪乱が起こった場所は、生存競争をするライバルたちがおらず、太陽の光や養水分を独占できる理想的な場所。そこで十分に光合成したあとは、競争に強い植物たちが来る前にさっさと種を残し、その場から姿を消してしまいます。

p.20

こう聞くとたくましく感じる雑草ですが、「『街中でたくましく生きている』というよりは、『攪乱の起こる街中だからこそ生きていける』というものが多いです。大きな木が鬱蒼と茂った大自然の森の中では、これらの植物はまず見つかりません」(p.21)というのが正しいそうです。最近読んで面白かったのが、その名も『面白くて眠れなくなる植物学』です。


「ビッグイシュー日本版」のバックナンバーは、街角の販売者さんが号によってはお持ちですし、サイトからは3冊以上であれば送付販売していただけます。

コロナ禍のあおりで、路上での「ビッグイシュー」の販売量が減少しているそうです。3ヵ月間の通信販売で、販売員さんたちを支援することもできます。

もちろん年間での定期購読も可能です。我が家はこの方法で応援させていただいています。

見出し画像は、今号が入っていた封筒のシールです。「小商い」で発送作業をしてくださっている方々、いつもありがとうございます!



この記事が参加している募集

記事の内容が、お役に立てれば幸いです。頂いたサポートは、記事を書くための書籍の購入代や映画のチケット代などの軍資金として、ありがたく使わせていただきます。