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ショートショート(掌編)集

47
短いお話たちです。
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#日常

なるほど、そうか

なるほど、そうか

頭の上から、何かが落ちてきた。
それはつむじにフワリと着地したかと思えば、脳内いっぱいに広がる。

「なるほど、そうか」
口からこぼれ落ちたその一言は、確かな感触をもって空中に漂ったかと思うと、次の瞬間には綿あめのような淡い甘さとなって消えていく。

僕はメモを取り出す。
まだ、間に合う。まだその尻尾を舌先にとらえている。
こういうのはスピードが命なのだ。
僕はそいつの尻尾をペン先に引っ掛けて、紙

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よる寝【掌編】

よる寝【掌編】

「よる寝しちゃった」

「よる寝?」

「うん、よるに寝ちゃったってこと」

「よるに寝るのって普通じゃない?」

「いやわたしってヴァンパイアだから基本的に昼に寝て夜に仕事するのよ。だから夜にも寝ちゃったら、作業時間が減っちゃうの」

「そういえば、あなたってヴァンパイアだったわね」

「そうよ、日中の時間はわたしにとって《命取り》なんだから。ところで、あなたはいつ寝てるのよ?」

「いや、それ

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意味を探して、1万里【掌編】

意味を探して、1万里【掌編】

テクテク、テクテク、歩く、歩く。

もう一万里ほど歩き続けている。
風景や町並みはゆっくりと変わっていくが、さすがにここまで来ると眼前には《まったく知らない世界》が広がっている。

右、左、上、下、そして後ろを向いてまた前に視線を移す。

「何か探しものですか?」
・・・そんな呑気なことをわたしに聞いてくる人などいない。

わたしはよそ者で、ただの通行人。
異様に周囲をキョロキョロしてはいるが、迷

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野菜を切る世界線【掌編】

野菜を切る世界線【掌編】

ニンジンを切る。
この作業が料理の醍醐味であり、かつ面倒くさいところである。

チョキチョキチョキ・・・

包丁が野菜を切る音。

うん? チョキチョキチョキ・・・?

わたしは包丁の手を止めた。
すると、チョキチョキという音も止まった。

そしてまたニンジンを切り始めると、
ニンジンと包丁の切断面からまたチョキチョキと発せられた。

「ああ、そういう世界線なのね」

わたしは引き続き、チョキチョ

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バットを振る【掌編】

バットを振る【掌編】

野球はやめた。
何年前だ?
かれこれ10年近く前になるな。

それでも夜の8時になると、自然とバットを持って近くの公園にでかける。
なにかの力に引き寄せられるように、無意味だと知っていながら私はバットを振りに行く。
立つべきバッターボックスも、対戦するピッチャーもいないのに、その前段階の準備作業を何度も何度も繰り返す。

バットを振る。
体重移動を確認する。
腰の動きを繰り返して、体全体を連動させ

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