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夜明け前

電子レンジであたためるまでの間
真夜中に遠雷の遠吠えを尻目に
マイクロ波の温もりを抱く

パルスしながら届く星数を凌ぐことば
古の人達は星座にでもしたであろう物語のかずかず
蒼白のモニターに映る我が像を気にかけぬように
指を滑らせて吐き出される ことば
やがて取るに足らぬ 宇宙の夜明け
削ぎおたさねば届かぬ ことば

私も一人 孤独の壁に囲まれ 何千年もの間 地層に眠る化石のような息を吐く やがて陽が昇れば 稲妻のような言葉を放ち 雨のような涙を流して 心に青葉と花を咲かせる ミツバチがやってきて それらの花粉をまだ見ぬあなたに届け 空想の森は広がる 

人々の流した涙はそれぞれの川を流れて海を作る 様々な生命(声明)が生み出され それぞれの秩序をつくる

地球がそうやって生きてきたなら 私達は使い古された言葉ではあるが ウイルスに過ぎない もはや 生命と物質のあいだの存在になりつつあるのだ

ひきつづき緊張感を持って 動向を見守る
瞳孔が開いたままではいけない まばたきをしてドライアイを防ぐ
ひきつづき緊張感を持って 何もしない
引きぎわが気になり 緊張感で 身動きが取れない
引きつ戻りつ前へ進まぬ臆病風に晒されて

仕方がないので 外に出て旅に出る 温泉に浸かりにいくのだ
稲妻のように放たれる言葉たちに別れを告げる 
未来への不安の叫びと メジロの鳴き声を取り違えていた
示し合せて鳴くカラスを 神の悪巧みと取り違えていた

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静寂を取り戻し 耳をすませば風に揺れる竹藪の音
川のせせらぎに加わる掛け流しの水音
雨上がり雲の切れ間から飛び込んでくる太陽の光

目の前に飛び交う無数の靄を振り払い 私は竹藪の中を進む決意を胸に歩き始めた 驚くほどに筋力が落ちていたが 歩き始めた赤ん坊の記憶は刻み込まれている 恐れることはなく今からでも遅くはないのだ


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