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エッセイ「香りから蘇る記憶たち」

結婚をすると基本的に当然のことながら、人生における恋愛対象は、そのパートナーで終了宣言となる。

20代の頃、夫との結婚を決めた理由は、「少しでも長く一緒に居たかった」から。若かりし頃の恋とは、人を盲目にさせるけれど、あの決断をしたあの頃の自分を褒めてあげたい、とは常日頃感じている。

川の水が高い所から低い所へ流れるような、自然な流れで結婚するに至った、と私は思っている。(夫がどう考えていたかは、もはやよくわからない笑)

この歳になるまでは、人生が怒涛の展開で、ここ最近やっと頭が忙しさから少しだけ解放されて、周りを広く眺めることが出来てきたように思う。

そんなこんなでホロ苦い記憶が呼び覚まされた、いつだったか、少し前の出来事。

恐縮ですので、昔ばなしにお付き合いいただける方に、読んでいただけますとありがたいです。

街中を歩いていると、ふと横を通り過ぎた人から、遥か昔である過去に好きだった人と同じ、ほのかでやさしい香りが香って来た。

香りの記憶って、しつこく残っているものなんだな……

あんなに昔のことなのに。すっかり忘れていたはずなのに。

香水とかではなくて、今思うとあの人の着ていたYシャツから香っていた柔軟剤のにおいだったのだろうか。とにかくやさしくて柔らかな香りだった。

その瞬間、走馬灯のように当時の切なさや、苦しさや、焦る気持ちやら、色々がまざった複雑な思いの記憶たちが蘇って来て、みぞおちの辺りが締め付けられるように痛くなる。

今思い返すと、「あの頃の自分は何であの人に惹かれたんだろう?」と冷静に疑問に思ったりするのだけれど。

年齢がかなり上の、憧れの仕事が出来る先輩だった。さほど女性慣れしていない感じの、誠実で不器用な雰囲気がまた惹きつけられる要因だったのかもしれない。

同僚が集う飲み会の席で、私が抱いていた憧れ的な好意が、お酒の力も手伝ってにじみ出ていたのだろうか、彼もよく話してくれるようになり、どんな流れからだったかいつしか二人で会うようになった。

最終的にはその人とは離れることになったけれど、今でもその記憶が私の中に色濃く残っている。

未練があるとかではなく、むしろ、若くて無茶していたな、とどちらかと言うとホロ苦い記憶だ。

あの人とは、いずれはダメになるだろうことはわかっていた。それでも止められなかったのは、若さ故だったのだろう。

あぁ……葬り去りたい記憶なのに。

歳を重ねると、自分のことが理解出来てくるせいか、「あ、私こう言う人好きだ」と言うことが瞬間的にわかるようになって来る。

性別、年齢関係なく、多分恋愛とかではもはやなくて、それはもう本能レベルで。

文章を見ていても同じ。それはもう、ピンと来ることがある。

『香り』と言うものは、記憶を呼び戻すスイッチになりえるんだなぁ。皆さんにもそんなホロ苦い記憶たちはありますか?

ここまで昔ばなしにお付き合いいただき、ありがとうございました。

先日、いつも記事を拝読させていただいている三束さんに、私の記事を取り上げていただきました。
尊敬するフォロワーさんの一人です!
ありがとうございます!




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