林 万平/Mampei Hayashi

1981年生まれ、神戸市出身。災害研究者、大学講師。専門は災害復興の政策研究。近著に「…

林 万平/Mampei Hayashi

1981年生まれ、神戸市出身。災害研究者、大学講師。専門は災害復興の政策研究。近著に「災害復興の経済分析ー持続的な地域開発と社会的脆弱性」(勁草書房)。

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災害研究者が新型コロナウィルス感染症について考えてみた(12)オミクロン株と続く緊急対応

1.続くコロナ禍 デルタ株からオミクロン株へと変異株が変遷してきている。 既に東京都は緊急事態宣言を検討しなければならない状況にあるとも言われるが、現在のところ、そういった動きは見られない。 そうした中で、 オミクロン株の致死率がデルタ株と異なる点を問題にしつつ、 経済活動の継続と維持について現実的な対応すべきだという声が見られるようになってきた。 例えば、楽天の三木谷会長はTwitter等で主張をそうした主旨の展開している。 長く続くコロナ禍への疲れだけでなく、 段々

    • 災害研究者が新型コロナウィルス感染症について考えてみた(12)コロナ禍中の総裁選・衆議院選挙で日本は適切なリーダーを選択できるか

      菅総理の総裁選不出馬が明らかになり、自民党は新たな総裁を選択することが明らかになった。 コロナ禍が続く中で2年連続で総理が交代することは、諸外国に比しても異例の事態と言える。 党内で予期していなかったこともあるだろうが、新総裁候補に名乗りを上げる議員が乱立しつつある状況になっている。 さらには、衆議院選挙を意識して、野党も政権奪取に向けてアピールを始めている。 しかし、 与野党いずれのリーダー候補に共通して言えることは、 「長期化するコロナ禍に対する戦略的な政策対応はどの

      • 災害研究者が新型コロナウィルス感染症について考えてみた(11)日本のコロナ対応と東京オリンピックに見る「権力の腐敗」とその問題点

        「災害が起きる時、社会の弱い部分が露わになる。」 こうした言い方は過去から現在に至るまで数多く見られる。 極端に言えば、災害による被害は、究極的には社会の構造や特質に由来しているのであって、 「自然災害」というものは存在しないという主張もある。 これまでのコロナ禍に対する一連の政策対応だけでなく、 東京オリンピックに関わる様々な不祥事、 そして、日本を代表する大企業のスキャンダルといったものを並べて考えると、 日本社会が抱えている深刻な欠陥は「権力の腐敗」に由来するのでは

        • 災害研究者が新型コロナウィルス感染症について考えてみた(10)コロナ禍における菅政権の「賭け」

          1.続くコロナ禍最後の執筆から、半年以上が経過してしまった。感染症の再拡大だけでなく、政策面でも緊急事態宣言の再発令やワクチン接種の開始といった変化が見られたこともあり、いずれ緊急対応のステージを脱した頃に新しい記事を書こうかと考えていたため、しばらく筆を置いていた。 しかし、現実には、その後も「感染症管理サイクル」における緊急対応のステージから抜け出す目処が立たないまま、今日までコロナ禍が続いている。 さらに、2021年7月の東京オリンピック開催が迫ってきたことで、市民

        災害研究者が新型コロナウィルス感染症について考えてみた(12)オミクロン株と続く緊急対応

        • 災害研究者が新型コロナウィルス感染症について考えてみた(12)コロナ禍中の総裁選・衆議院選挙で日本は適切なリーダーを選択できるか

        • 災害研究者が新型コロナウィルス感染症について考えてみた(11)日本のコロナ対応と東京オリンピックに見る「権力の腐敗」とその問題点

        • 災害研究者が新型コロナウィルス感染症について考えてみた(10)コロナ禍における菅政権の「賭け」

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          震災と復興、そして風化

          1.震災から10年、そして「風化」東日本大震災から10年を前にして震災復興に関する報道が増えてきた。 被災地の衰退、生活再建の困難、そして原発事故――。 様々な現場での課題や取り組みがクローズアップされる。 その中でも、この言葉が個人的な関心を引いた。 「風化」 「震災の教訓や復興のあゆみが風化しないように。」 風化を戒めるようなコメントが、画面越しに多くの人々から語られる。 同時に、震災を知らない世代や被災地と関わりの少ない人々に語り継ぐことは、 決して易しくないとい

          震災と復興、そして風化

          神戸と阪神淡路大震災

          1995年に発生した阪神淡路大震災は、 神戸という街を、否応なく新しい歴史の流れに巻き込んだ出来事であった。 時間が経って、悲惨な災害を乗り越えた都市として、 神戸市はその知名度が世界的に高まった。 それでも、毎年、年明けからは震災報道が増える。 話題を変えながら、阪神淡路大震災は現在進行形の問題であるという語りが続く。 今も生活に困難を抱える人々の現状や復興が進まないコミュニティといった、 長く続く課題に焦点が当てられる。 震災を知らない世代が増えており、震災の教訓をどの

          神戸と阪神淡路大震災

          淡路島について

          パソナ本社の淡路島への移転が話題になっている。 挙げた記事では「政治的なポーズではないか」「優秀な人材は確保できないだろう」「首都直下地震対策としてもどうなのか」といった識者の声が紹介されている。企業や働く人にとって、都会を離れることの損失は小さくないのだろう。 一方で、同記事ではあまり淡路島の魅力について語られておらずアンフェアな気もする。そこで、個人的に淡路島について知っていることを書いてみたい。 1.食材王国地元贔屓もあるかもしれないが、兵庫県は北海道や九州と並ん

          淡路島について

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          秋の南京町

          ヴィッセル神戸の躍進について

          実は、ヴィッセル神戸を応援している。 経営不信の球団が楽天の経営者である三木谷氏に譲渡されて以来、面白い変化があるかもしれないと思いスタジアムに足を運ぶ内に、段々と情が移ってきてしまった。後になって震災と縁の深いチームであるということを知って、一層、その思いは強くなった。 ただ、その後のチーム状況の変遷は期待した道筋とは大きく異るものとなった。W杯で人気を博したイルハン・マンスズ選手のデビュー戦こそ、予想を超えて多くの観客が詰めかけ、今後のチームの躍進とスポーツに今ひとつ

          ヴィッセル神戸の躍進について

          災害研究者が新型コロナウィルス感染症について考えてみた(9)感染症と政治的変動

          8月28日、安倍総理が辞任を発表した。 本人の体調悪化が主たる原因であるとしつつ、コロナ禍への対応に一定の目処が立ったことも一因であることが辞任会見で説明された。 これを受けて、これまでのコロナ対策を含む一連の政策に関する検証もそこそこに、主要メディアの関心は既に後継候補選びへと移っている。 後継者候補と目される複数の議員の出馬動向や、総裁選での党員投票の有無等、様々な報道がなされているが、一連の報道産業の動向を目の当たりにすると、まるで日本ではコロナ禍が過ぎ去ったかの

          災害研究者が新型コロナウィルス感染症について考えてみた(9)感染症と政治的変動

          神戸とカレーと仕事

          夏の暑い日は夕食に何を食べようか悩む。 食欲がない訳ではないのだが、こういう時は食べて元気を出したい。 カレーはそういう時には心強い味方だ。 神戸の街はカレー屋さんが多く、個性と味が多様で面白い。 昔ながらのSavoy、本格スパイスカレーのぶはら、スリランカカレーのカラピンチャ、水を使わないシャミアナ、優しい味わいのみみみ堂といった個性的なお店もあるが、新しくオープンしたラージクマールやアグロカリーといったお店も人気がある。他にも多くの店があり、選ぶのが楽しい。 結局、今

          神戸とカレーと仕事

          夏休みの須磨水族園

          夏休みを利用して須磨海浜水族園に行ってきた。世間はGo To Travelどころではない状況だが、折角の夏休みを楽しめないのも落ち着かない。近場でどこか行けないものかと考えたところ「須磨の水族館」がふと頭に浮かんだ。一体、最後に行ったのはいつなのか、思い出すのも難しい。小学生の頃から、ほとんど中身も変わっていないだろうに。ただ、来年以降、この施設はリニューアルが予定されているようで、今の姿を見ることができる機会も限られている。そう考えると、行くのがかえって楽しみになってきたの

          夏休みの須磨水族園

          災害研究者が新型コロナウィルス感染症について考えてみた(8)経済活動と感染症対策の両立は可能か

          1.再度の流行拡大と経済危機2020年、8月。長い梅雨が明けて夏の日差しが眩しい季節になった。本来なら東京オリンピックでのアスリートの競演が華やかな頃のはずが、今年の夏休みの過ごし方は予想されたものとは様変わりとなった。 新型コロナウィルス感染症の流行再拡大を受けて、特に大きな影響を受けている観光産業の振興を図るべく、政府はGo to travelキャンペーンを実施する意思を見せている。成立にあたって、時期を前倒しにしたこともあり事務局のバタつきは相当なもののようだが、それ

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          皆川明「つづく」展を見て

          先日、ミナ ペルホネン/皆川明の「つづく」展を見に行った。以前、東京の現代美術館で同じ展覧会を見たことがあるが、神戸で展覧会があると聞いて行く機会をうかがっていた。会場は神戸市灘区のHAT神戸にある兵庫県立美術館で、安藤忠雄氏の建築物の中でも個性的なものの一つだ。新型コロナウィルス対策のため事前予約が必要だったが、会場の広大さに比べて見学者は少なく、かえって落ち着いて展示を楽しむことができた。 美術館の中が広いので展示が整然と陳列されていたおかげか、それとも二回目の見学だか

          皆川明「つづく」展を見て

          災害研究者が新型コロナウィルス感染症について考えてみた(7)危機を認識すれば対処できるのか

          1.流行、再び。東京都でコロナウィルスの感染者数が徐々に増加してきている。 小池都知事からは、4月とは状況が異なり、PCR検査数が増えたことで検出数が増加しているという説明がなされているが、同時に感染経路が不明の比率も上昇しており、第二波の到来が懸念される事態になってきた。 また、他県においても徐々に感染者数が増えてきており、全国的な感染拡大の可能性も出てきている。 2.専門家の反応これと前後して、専門家会議改め専門家分科会の委員からは、今後のPCR検査のあり方だけでな

          災害研究者が新型コロナウィルス感染症について考えてみた(7)危機を認識すれば対処できるのか

          住吉学園からの手紙

          「そう言えば、例の手紙もう届きました?」 行きつけの店の主から不意に冗談のような話を聞かされたのは、丁度、一、二週間ほど前だった。なんでも、コロナウィルスで困っている地域住民に住吉学園という地元の財団法人が現金を配ってくれるのだという。 まさかそんな冗談のような話があるものかと思っていたら、自宅に住吉学園から一通の手紙が届いていた。封筒には「復興支援金」と記載されている。それでも何かの詐欺ではないかと疑ってしまうところが小市民の悲しい性だが、Twitter検索をしてみると

          住吉学園からの手紙