淡路島について

パソナ本社の淡路島への移転が話題になっている。

挙げた記事では「政治的なポーズではないか」「優秀な人材は確保できないだろう」「首都直下地震対策としてもどうなのか」といった識者の声が紹介されている。企業や働く人にとって、都会を離れることの損失は小さくないのだろう。

一方で、同記事ではあまり淡路島の魅力について語られておらずアンフェアな気もする。そこで、個人的に淡路島について知っていることを書いてみたい。

1.食材王国

地元贔屓もあるかもしれないが、兵庫県は北海道や九州と並んで食材が豊富な地域だと思っている。その背景には地理的な多様性がある。北は日本海側から山間部を経て海側の神戸市、そして淡路島まで。幅広い地域が一つの県内に収まっている。

多様な産地を持つ兵庫県では食材の種類も豊富だ。明石の鯛や蛸といった海産物、丹波の松茸や黒豆、山の芋、三木市吉川町の山田錦は全国的にも有名だし、玉ねぎやトマトも徐々に知名度を上げてきている。そして、なんと言っても神戸牛と但馬牛のお膝元。他にも、ずわい蟹、養殖のトラフグ、丸々太った鱧、相生の牡蠣やキジハタ、牡丹鍋、神戸のブドウも競争力の高い食材だ。興味のある人は以下のサイトが参考になる。

そして、こうした食材の多くを供給している地域が淡路島だ。

四方を豊かな海に囲まれて海産物には事欠かない。鯛や鱧、養殖なら三年トラフグや海苔、最近はサクラマスも有名だ。釣り人にも人気のエリアで釣宿も多い。春先のメバル釣りは季節の風物詩。初夏から夏にかけては乗っ込みの真鯛、蛸やキジハタが釣れる。他にも、瀬付きのマアジを味わうのは釣り人の特権だ。秋から冬にかけては鯛も脂が乗って、タチウオも数が釣れる。明石海峡のブリは餌と海流のおかげで味が良いと評判だ。なお、淡路島で魚を買いたい時は「林屋」に併設してある鮮魚店が良い。

農産物も少なくない。その筆頭は玉ねぎだろう。大きくて甘い味わいが人気だ。最近はジャンボニンニクや固有品種の鳴門オレンジも有名になりつつある。個人的には、スイカやトマトも美味しいと思う。米の産地としても有名だ。畜産も淡路ビーフが人気だが、牛乳も美味しい。お土産が欲しい時は、東浦にある道の駅やイングランドの丘の近くにある美菜恋来屋が種類も豊富で買いやすい。

他にも、加工品で言えば素麺のような乾麺が人気だ。マイブームは淡路ぬーどる。パスタやうどんすると美味しい。日本酒も都美人という良い酒蔵がある。最近は森信ヴィンヤードというワイナリーがワインも作っているとか。

こうして見ると、家族のいる世帯や食に興味のある人にとっては、淡路島の暮らしは、案外、Quality of Lifeが高いかもしれない。

2.気の利いた店たちも

淡路島にはパソナがプロデュースしたニジゲンのモリ、安藤忠雄氏による淡路夢舞台といった大箱の観光施設もあるが、最近は小さな店が増えてきているのも魅力の一つだ。

外食も徐々に新しい店が増えてきている。鮨の「すし屋 亙」は本州側から訪れる人も少なくない名店との噂。そこまで払いたくない時は「林屋」が美味しい。他にも、蕎麦の「淡路翁」やイタリアンの「L'isoletta」が有名だ。

陶器やカフェに興味がある人は樂久登窯を訪ねるのが楽しい。週末は混雑するほどの人気だが、魅力的な食器たちに出会える楽しみがある。

宿に関してはホテルニューアワジ系列の本拠地でもあり、家族向けの温泉旅館の選択肢は多い。最近はKamome Slow Hotelのようなブティックホテルや「こぞら荘」のような小さなホテルも登場しつつある。友人との泊りがけ旅行なら「Le Terrasse Awaji」も快適かもしれない。

小さくて気の利いた店が増えてきており、今後が楽しみなところだ。

3.景観と地理

淡路島には景観が美しいスポットが多い。神戸から渡ってくる時に見る明石海峡大橋の姿はなかなかのものだ。希望者は明石海峡大橋の上に登ることもできる。淡路島の外周も景観が美しい。個人的には、高速道路に乗って南側まで行ってしまうよりも、淡路島の東側の海沿いを洲本あたりまでドライブするのが気持ち良い。なお、淡路島の外周はロードバイクのコースとしても有名で、季節によってはサイクリング客が多く訪れる。

とはいえ、淡路島は島なので、点在する住宅地域や農村地域を除けば、あとは海と丘があるに過ぎず、それほど日々景色に感動するわけでもなければ、生活面でも不便だと思うかもしれない。

ただ、淡路島は島と言っても、北に神戸、南に徳島と、明石海峡大橋や鳴門大橋を渡るとすぐに違うエリアに移動できる。実際に、高校生で淡路島から神戸市灘区まで通学する学生もいるそうだ。また、徳島側に渡ると有名な「大塚国際美術館」がある。

淡路島の生活圏は思ったほど狭いわけではない。都会からすぐの立地に田舎の景色があるというのが魅力の一つだろう。

4.淡路島暮らしは快適か?

筆者は淡路島に住んだことはないので、島で暮らすことについて語れることは何一つ無い。ただ、神戸市の住人として見た時に、元からあった強みに加えて上に挙げたような魅力が増してきているように思う。関西圏外から来た友人が淡路島を訪ねた際、その魅力について語りだすことが少なくない。外の人間から見れば大きなポテンシャルを持っているように見えるのではないか。

とはいえ、冒頭のニュースで挙げたように、果たしてパソナの社員の多くが淡路島に移り住んで来るかどうかと聞かれれば、自信がない。神戸市から通う人も多いだろう。ただ、「住んで暮らす」ということについて、若者の中には柔軟なやり方を実践している人が多い気もする。シェアハウスをしながら田舎暮しをYoutubeで放送したりすると、案外、楽しんで住めるのかもしれない。

筆者としては、淡路島暮らしを始めるには年を取りすぎたということにして、時々、釣りに出かけることでお茶を濁しておきたいと思う。

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