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夏休みの須磨水族園

夏休みを利用して須磨海浜水族園に行ってきた。世間はGo To Travelどころではない状況だが、折角の夏休みを楽しめないのも落ち着かない。近場でどこか行けないものかと考えたところ「須磨の水族館」がふと頭に浮かんだ。一体、最後に行ったのはいつなのか、思い出すのも難しい。小学生の頃から、ほとんど中身も変わっていないだろうに。ただ、来年以降、この施設はリニューアルが予定されているようで、今の姿を見ることができる機会も限られている。そう考えると、行くのがかえって楽しみになってきたのだ。

慌ただしくweb予約をしていざ入場してみると、記憶を頼りに思い描いた姿よりも素朴な展示の数々が目に飛び込んできた。正面入口の大水槽は思うよりも高さがなく、鮫やロウニンアジが泳ぐ姿が少々窮屈に見えた。小さな展示は楽しめるものの、展示方法はごくオーソドックスなもので今ひとつ印象が薄かった。オオサンショウウオや肺魚、チョウザメ、イリエワニといった大型の展示コーナーでは職員が夏休みのイベントを開催していたが、客の盛り上がりは今ひとつだった。見せ場のアマゾン館では大型のピラルクが優雅に泳ぐ姿が堪能できた。ただ、コロナ対応もあり自慢のトンネル水槽は制限されていた。全体として、一つ一つの展示には光るものも見られたが、まるで昭和の頃の写真を見るかのように、施設の古さは否めない印象だった。

展示の内容よりも昔懐かしさに気持ちが向き始めていたところ、日本の河川環境に関する展示が目に留まった。日本の河川では洪水や土砂崩れが多いため、治水を目的に護岸工事が進められてきている。しかし、防災力の向上と引き換えにサワガニやウナギといった生物の住処は奪われることになる。自然環境の多様性と人間社会の安全をどう調和させるかが問題だという。

こうした展示自体は目新しいものではなく、その主張自身も水族館においてはありふれたものだろう。ただ、神戸という土地は海と山が近いため、人間の居住地域に多くの河川がある。そのため、住民が手入れをして環境改善に取り組んできている例も見られる。例えば、住吉川では、近年、鮎の遡上が見られる他、様々な生き物や水辺の憩いを求めて多くの人が訪れているが、2018年には大規模な増水があり広範囲に洪水が発生しかねない状況だった。人間の暮らしを守るために治水を施すことは必要だろうが、そのことで自然の価値や持続可能性を損ねて良いのか、身近で難しい問題があることに改めて気付かされた。

夏の住吉川は家族連れの憩いの場に

山と海に囲まれた神戸という街の将来を考える時、自然環境と都市の共生を通じて新しいライフスタイルを提案することには他所にはない意義があると思う。そうした都市の取組みや人々の生活の有り様が表現されているような水族館があったら面白いかもしれない。例えば、生物学、環境学、都市計画、経済学、行政学、コミュニティ・デザインの専門家を研究員として雇用して、神戸市の環境政策と都市計画、コミュニティ作りの実践も含めて展示できる学習施設としたらどうだろうか。色々と想像が膨らんで、期せずして大人の自由研究には良い一日となった。



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