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企業編19-バー経営から学ぶ、人間を知るということ

こちらのnoteは「mameka記」シリーズになります。

「僕にとっては、この仕事が生きがいなんだよ。」

バーのマスターのMさんがこんなに感情的になるのははじめて見た。
お酒とタバコを楽しむというコンセプトで開業したバーだが、経営的に状況が芳しくないらしい。

このバーを知ってから、5年近く経つ。バーに馴染みの人たちと力を合わせて何かしらできないかを考えることになった。

「基本的に人が集まる機会を作ることによって、1回でもバーに来てもらう。お客さんの分母が増えるとそこから常連になってくる人たちも増えるんじゃないかな。」
「私がよくいく潰れそうで潰れない常連さんがついて離れない所って音楽やる人が来るパターンな気がするんですよね。音楽をウリに出してみては?」
「商店街とか駅の周辺、もっと近所の人たちにもっと PR した方がいいよね。安心して楽しめるし、宣伝ははっきりした方がお客さんは分かりやすいので良いと思う。」
「『下の看板で魅力的なメニューがある&雰囲気良さそう』って思ってもらえると入りたくなるよね。」

多くの意見が出た。

立地はいい。ただし、お客さんを呼び込むためには、時代に応じたツールを使いこなしたり、お客さんのニーズに合わせた能動的なメッセージを送る必要があることがネックになると感じた。

「結論、『そもそも来店する分母が少ない、それを増やす』必要があるよね。」

私たちの意見が一致した。

一方、マスターは新しいやり方に抵抗を示しているようだ。何より、自分の”お酒とタバコを楽しむ”というコンセプトを最優先にしたい。

ある常連さんが口火を切った。

「"俺の世界で"っていうのは一つの切り口としてありかと思いますが、分母が大きい場合の話になるかなと。10年前と同じ常識で仕事をできないと思うから、こういうところにやっぱり順応しようというする気があるかないかで結構大きく分かれてくると思うんだよね。お客さんの立場に立って何がいいのかを考えられなければ商売は難しいよ。」

Mさんは本当にいい人だ。私もMさんの人柄に惹かれて、バーに足繁く通っていた。ただ、お客さんからすると、”なぜそのお店なのか?”ということが関心だ。

「私の親戚が飲食店を営んでいましたけど、『どうやってお客さんに楽しんでもらうか』それを一番に添えていたことで、お店は人で溢れ返っていました。残念だけど、一番大事なのは事業主が考え方を変えることなのでしょうね。」

私は、この状況を打開するための意見を求めるべく、常連の1人であるHさんの元に向かった。

電車で2hかけて向かった先は、のどかな田園風景が広がる世界だ。

「なるほどね。そういうことを言ってたんだ。mameka君、マスターの考え方を変えたいって?いいかい、人間というのは、”感情と欲望に従って”、”自分の正義で生きている”。マスターが自分の商売にかける意志を貫き通したいっていう気持ちが”正義”だとするならば、君がどうやってその正義を曲げられる?否、それはできないよ。人間は、理性を使って、自分を守ったり、人を変えようとするけど、そこには限界がある。」

結局は、今の状況は、正義ともう一つの正義の闘いなのだろう。相手の正義を理解して、相手を認めることが重要ということだ。

私は、それでも、この状況を黙ってみているわけにはいかない。相手の考えを変えるきっかけをどう生み出せば良いのか聞いてみた。

「最終的には、人が変わるのって、”本能”が刺激されるのがきっかけだよね。いわゆる、ドキドキ・ワクワク・トキメキといった感情だ。相手の正義感、心地よさを大事にしながら、本能に訴える。例えていうなら、恋人とか、尊敬する人の言葉だね。」

人として受け入れてもらわないと、その人の意見に耳を傾けにくいのは心当たりがある。

結局は、相手の立場に立って考えられないと、物事は進まないのだろう。”北風と太陽”の話の中の、太陽の存在になるということか。

「これは、ビジネス、ひいては、プロダクトにおいてもいえる。相手の立場に立って作られた商品が受け入れられる。AppleのiPhoneやGoogleなどは誰もが使える設計になっているよね。本当に良い商品というのは、相手の立場に立ったコモディティなんだよ。」

誰もが分かりやすく、使える設計か…これは、私の仕事にも当てはまるな。
『商品の機能がいい、こんなメリットがあるから利用するべきだ』ではなく、ユーザーの立場から、『これなら使いこなせるな』と思ってもらう方が、相手の立場から考えていると言えるだろう。

最近、顧客の購買プロセスに合わせて訴求する、必要な資料を準備しておく”シナリオ営業”という言葉が流行っているらしい。

“相手は、どんな情報を求めているのか”
“相手は、何を知りたがっているのか”
“相手は、何を心配して、何を不安に思っているのか”
“相手にとって、どんなプロセスでプレゼンをすれば納得するのか”
“相手はどのタイミングで意思決定するのか”
“最終決定は誰がするのか”

全て、主語は、”相手(あなた)”だ。

主語を、”自分”から”あなた”に変えることで、自分が変えられることと変えられないことの線引きがはっきりしてくる。

一方、そこを認識して、相手の正義感、心地よさを大事にしながら相手への一歩を踏み出す。人生においてとても大事な考え方だと思った。


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