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芥川龍之介「羅生門」

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芥川龍之介の「羅生門」を、初めから丁寧に読んでいきます。この作品は既にたくさんの研究がなされていますが、少しでも新たな視点が見つかれば幸いです。
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記事一覧

芥川龍之介「羅生門」を読む11(最終回)~下人の心情の変化とまとめ

まず、下人の心情の推移を、グラフで順に示す。 以上から分かる通り、下人の心情が次の瞬間に…

私
5か月前

芥川龍之介「羅生門」を読む10~下人の行方は誰も知らない

「下人は、太刀を鞘(さや)におさめて、その太刀の柄を左の手でおさへながら、冷然として、この…

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私
5か月前
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芥川龍之介「羅生門」を読む9~老婆の【悪の論理】

「まぶたの赤くなつた、肉食鳥のやうな、鋭い眼で見たのである。」 「肉食鳥」は、自分が生き…

私
5か月前

芥川龍之介「羅生門」を読む8~「何をしてゐた。さあ何をしてゐた。云へ。云はぬと、…

「何故老婆が死人の髮の毛を拔くかわから」ず、「合理的には、それを善惡の何れに片づけてよい…

私
5か月前
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芥川龍之介「羅生門」を読む7~檜肌色の着物を著た、背の低い、痩せた、白髮頭の、猿…

羅生門の2階を覗き込んだ下人は、「屍骸の腐爛(ふらん)した臭氣に思はず、鼻を掩」う。下人の…

私
5か月前
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芥川龍之介「羅生門」を読む6~この雨の夜に、この羅生門の上で、火をともしてゐるか…

「藁草履をはいた足を、その梯子の一番下の段へふみかけた」下人は、「それから、何分かの後」…

私
5か月前

芥川龍之介「羅生門」を読む5~下人は藁草履を梯子の一番下の段へふみかけた

下人の「明日の暮らし」は「どうにもならない」。生活を合法的に成り立たせる方策はない。それを「どうにかする爲には、手段を選んでゐる遑(いとま)はない」。 「手段を選ぶ」というのは、今まで通り、法や社会秩序に従って生きることだ。しかし、この選択肢の行く末は「死」。合法の向こうには死しか待っていない。だから、「選んでゐれば、築土(ついぢ)の下か、道ばたの土の上で、饑死(うゑじに)をするばかりである。さうして、この門の上へ持つて來て、犬のやうに棄(す)てられてしまふばかりである」とな

芥川龍之介「羅生門」を読む4~奇妙な語り手

「作者はさつき、「下人が雨やみを待つてゐた」と書いた。」 このお話の語り手・書き手は、自…

私
5か月前
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芥川龍之介「羅生門」を読む3~死と悪の巣窟

この部分ではまず、前段の最後にあった、「この男のほかには誰もいない」理由が述べられる。 …

私
5か月前
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芥川龍之介「羅生門」を読む2~廣い門の下には、この男の外に誰もゐない。(コオロギも…

「廣い」門の下の空間には、「この男の外(ほか)に誰もゐない」という設定が、何度も繰り返され…

私
5か月前
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芥川龍之介「羅生門」を読む1~冒頭34文字の創造性について

いつ…或日(あるひ)の暮方 誰…一人の下人 どこ…羅生門の下 何を…雨やみを待つてゐた 冒頭…

私
5か月前
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