芥川龍之介「羅生門」を読む5~下人は藁草履を梯子の一番下の段へふみかけた
下人の「明日の暮らし」は「どうにもならない」。生活を合法的に成り立たせる方策はない。それを「どうにかする爲には、手段を選んでゐる遑(いとま)はない」。
「手段を選ぶ」というのは、今まで通り、法や社会秩序に従って生きることだ。しかし、この選択肢の行く末は「死」。合法の向こうには死しか待っていない。だから、「選んでゐれば、築土(ついぢ)の下か、道ばたの土の上で、饑死(うゑじに)をするばかりである。さうして、この門の上へ持つて來て、犬のやうに棄(す)てられてしまふばかりである」とな