「下人は、太刀を鞘(さや)におさめて、その太刀の柄を左の手でおさへながら、冷然として、この話を聞いてゐた。」
「太刀を鞘(さや)におさめて、その太刀の柄を左の手でおさへながら」は、もう老婆と争う気持ちがないことを表す。またこれにより、老婆も、太刀の刃に恐れることなく、自分の気持ちを表現することができる。さらに言うと、老婆の悪の論理を聞きながら、次第に下人も、老婆側に寄っていく様がうかがわれる。下人も老婆側の人間になる ことを暗示している。
「冷然と」は、老婆なりに小癪(こしゃく)な論理展開をしたので、何を偉そうに、という態度。また、老婆の悪の論理の正当性を心で図る様子。