夏目漱石「それから」3-3
◇評論
・「代助は今 此(こ)の親爺と対坐してゐる。」
代助と父親の、心理的対決の場面。代助はいやいや父親の前に座っている。だから、話の中身よりも、それ以外の事に気を取られている。この場面の描写が、なかなか本題に入らないのはそのためだ。
・「廂(ひさし)の長い小さな部屋」、「廂の先で庭が仕切られた様な感」、「空は広く見えない」などは、父親の前に座らせられた代助の閉塞感・嫌悪感を表す。その一方で、この部屋の「静か」さや「落ち付」き、「尻の据(すわ)り具合」の良さは感じている