夏目漱石「それから」1-1①
◇評論
この物語は、いきなり夢落ちで始まる点に特徴がある。素直な読み手は、初め「代助」の空想かと思いながら読んでいると、それは夢だったと突然知らされる。語り始めがこの調子では、語り手の語りの手法についていくためには、用心・注意が必要だと、読み手は警戒するだろう。従って、緊張感をもってこの後の語りを読み進めることになる。
また、長編小説の最後の部分に再び夢落ちが使われるのではないかとか、登場人物が夢のような世界へ迷い込むのではないかといった想像が容易につく。結末部分のページ