みちる

いち読者としての読書録です。タイトル部分は敬称略です。

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最近の記事

【緋田はずみ】ラスト・シークエンス

 両片思いがテーマの短編が二つ収録されています。二つめはバッドエンドだとうかがい、胸が高鳴りました。  タイトル「ラスト・シークエンス」と聞いて、何を思い浮かべますか? 私はもうこのタイトルセンスに驚愕しています。  一つめ「ビューティフル・マイ・バディ」は、タトゥーを入れるからその経過を写真におさめてくれという彼と写真部の彼のお話。最初に読んだ「手折られ花はほころぶ」に通じる、思春期の青年を描いたものです。まったく接点のなかった二人がだんだんと親しくなっていく過程が自然で

    • 【緋田はずみ】例え、夜に灼かれても

       こちらはJ.GARDEN51合わせの作品、オメガバースです。  健気受けや不憫受けが大好物な私からすると、オメガバースという設定は寸分違わず自分の円のど真ん中に刺さってくるものなのです。だから、絶対外れないことは分かっている、と読む前からもう期待値が爆上がりしていました。そういう設定であるがために、だいたいストーリーが読めてしまう反面、安心感に包まれて読めるんですね。  ところが、もくじの注意書きで王道ではないと判断できる要素が出てきます。『メインの攻め以外の男』ここでも

      • 【緋田はずみ】ねずみ色の渚

         こちらは、J庭50合わせの緋田はずみさんの作品です。個人的な事情でイベント参加できなくて、入手できないまま完売になってしまうかも、と思っていたら、J庭51の新刊と共に残部少ないですが、とツイートをお見かけして買いに行きました。本当に入手できて良かったです。  イベント当日にも速読を生かして読んだのですが、感想を書くにあたり、再読しました。あらすじを書くのに、攻めと受けと表記することが何かちがう気がするのですが、というのも、この作品は確かにBLなのです、でも、共依存をテーマ

        • 【柚子季 杏】若頭の料理番

           母親からネグレクトされてきた受けと生みの親元では育っていない攻めのお話です。攻めはやくざ。(地元密着型の人情系)健気に細々と生きる受けが一番どん底で気力をなくしている時に攻めと出会う王道です。  受けの境遇が悲惨なだけに、料理番として雇われてからのほのぼのとした雰囲気や少しずつ恋心を抱きときめく感じに悶えてしまいます。内心、このままキスで止まってもアリと思ったものの、最後がっつりエッチシーンに入ったので、さすがだなと思いました。(補足:こちらの作者様の作品は昔ブログで読ん

        【緋田はずみ】ラスト・シークエンス

          【Rink】花もほころぶ空の下

           包容攻めと病弱受けの作品。J庭51の戦利品です。こちらは改稿版です。  攻め視点で紡がれているお話です。寒空の下、薄着で公園にいる受けと出会うシーンから始まります。受けはあきらかに何か秘密を抱えていて、生への執着がない。放っておけないから連れて帰ることに、という展開なのですが、シリアスな内容の中でも攻め一人称で進むので、ちょっと笑えるところとかあってバランスが良かったです。  諦観している受けが、攻めにごはんを作ったり、猫の世話をしたりする中で、誰かのために生きる、この

          【Rink】花もほころぶ空の下

          【水樹ミア】氷の王子と魔法使いは花の褥で恋を語らう

           春の妖精の加護を持つラファがとても可愛らしく、感情が高ぶると花を降らせてしまう設定が作品の中で存分に生かされていて、幸せな気持ちにひたることができました。  花を降らせることができるって確かに役に立つことはないスキルですが、氷のように無表情に誰にも心を許せない環境に身を置くしかなかったウィルクにとっては、とても素敵な魔法だったんだろうなと思います。寒く、閉ざされた場所でひとりで暮らしていくしかない状況で、ラファが春の陽気とともに彼の世界へ鮮やかに色を付けていく、仲が深まっ

          【水樹ミア】氷の王子と魔法使いは花の褥で恋を語らう

          【はなのみやこ】後宮を飛び出したとある側室の話3

           2の終わり方が大団円でありつつ、成熟してきた内政、何やらきな臭い国外の動きという幕引きだったので、絶対続き読みたいと思っていました。ネタバレになるので詳細は書きませんが、今回もドキドキハラハラの展開です。  はなの先生は歴史好きなんだろうな、と思います。他の作品でも感じることですが、ストラテジー要素があり、どうなる、どうする、と夢中になって読んでしまいました。  冒頭、ラウルの株が急降下する連続で、やっぱりリケルメと結ばれるほうが幸せだったのでは、と思いましたが、それは

          【はなのみやこ】後宮を飛び出したとある側室の話3

          【緋田はずみ】手折られ花はほころぶ

           自傷という言葉にひかれて(きっと健気な話にちがいないというアンテナが反応しました)J庭49で手に取った作品です。300ページ近くありますが、二人の青年の交流が丁寧に描かれたお話でした。  広斗と英良という家庭環境や性格の異なる二人の出会いから始まり、園芸部の作業や文化祭といった学校行事を通して少しずつ仲が深まります。  この年代特有の思春期というか多感な時期の心の揺れ動きを表現されていて、自傷行為もそうなのですが、危うさ、あいまいさ、衝動といったものが内包されている青春

          【緋田はずみ】手折られ花はほころぶ

          【たろまろ】あめものがたり

           全10編の雨にまつわる短編集です。感想を書くにあたり、どれかひとつにフォーカスしてお気に入りの短編を挙げようと思っていたのですが、それはできません。なぜなら、全部気に入ってしまったからです。  現代ものから昔話のようなものまで、色んな設定の物語がつまっていました。夜寝る前にひとつずつ読んでは、幸せな気分で眠りました。切ない、けれど、ハッピーエンドのお話しかありません。  全編、良かったからこれって明確に書けないと言いつつ、特に素敵だと思った作品のことを少しだけ。  「

          【たろまろ】あめものがたり

          【橘華印】恋の音が聞こえたら

           うしろのあらすじを読まずに読み始めました。都(受け)が恋人から別れを切り出されるシーンから始まり、生い立ちのために陰があるにもかかわらず明るくふるまうところが健気です。支倉(攻め)との出会いも最初のシーンに入ってくるので、いったいどういう展開になるんだろうとドキドキしながら読みました。  事件の犯人はネタバレなので書きませんが、この作品は家族愛もテーマだと思います。不仲だった両親、都を支える兄の存在、愛には色々な形があると考えさせられるお話です。子供扱いされて怒る都が支倉

          【橘華印】恋の音が聞こえたら

          【水樹ミア】獣によりて獣と化す

           待ちに待ったミア先生の新作です。引っ越しも落ち着いてようやくこの前ゆっくり読むことができましたので、感想をあげたいと思います。  年の差で両片思いのファンタジー作品です。読んでいる最中、何回、最後のページまでめくろうと思ったことか。左側の紙量が減っていくのに、なかなか両思いだと気づかないアルドとユノの恋の行方にやきもきさせられました。ハッピーエンドと分かっていても、すれ違う二人の心情や環境と事情によるもつれ具合が、思い合っているのにかけ違っていく恋模様と絡み、本当にはらは

          【水樹ミア】獣によりて獣と化す

          【ちえ子】Howl(DL版同人誌)

           創作BL漫画です。DL版で全2巻。神様×不憫受けです。  直哉は義父から暴力をふるわれ、学校では友達だと思っている相手から軽視されています。神社へ迷い込み、いけにえとして神様(ミツツキ)に陵辱され、深く傷つきます。しかしながら、ミツツキが人間の身勝手さに怒り、憎しみ、傷つくことへの恐れから冷たく当たることを理解した直哉は、彼の寂しさに共感し、自分と同じだと気づきます。ミツツキもまた直哉の純粋な思いに戸惑いながら、癒され、また人間を信じようとしていく、神社の再生と互いが必要

          【ちえ子】Howl(DL版同人誌)

          【はなのみやこ】ファーターと愛弟子~寵花は師の手で花開く~

           はなのみやこ先生の最新刊です。発売後すぐ読んだのですが、勢いで感想を書いたら失礼だと思うくらい、素敵な作品でした。  音楽学校に入学した奏人は幼い頃から憧れていたピアニスト・レオンハルトのレッスンを受けることになります。奏人の家庭環境、名門と呼ばれる学校内での友情と競争、幼馴染や異母弟との関係、師であるレオンハルトの寵愛を受けながら、ピアノと向き合い、恋に焦がれ、時に慟哭し、師弟関係から愛を育み、深めていく過程がえがかれたお話です。  一番感動した部分を書きます。志音が

          【はなのみやこ】ファーターと愛弟子~寵花は師の手で花開く~

          【水樹ミア】獣によりて獣と化す(同人誌/WEB版)

           8月19日(水)に同タイトルの新刊が発売されるため、世界観を復習しておこうと思い、読み直しました。  物語は只人の王族リウ(受け)が<導き>(攻め)を選ぶ場面から始まります。本来であれば、リウの姉の役目でしたが、彼女は好きな相手と結ばれました。斎宮の条件となる純潔を失った彼女に代わり、リウがその役目を担うことになります。  リウは犬族のレヴィを<導き>に選びます。彼は年上で落ち着いていて、リウの状況や心情を理解して言葉をかけてくれたからです。最初は儀式のための接触、しだ

          【水樹ミア】獣によりて獣と化す(同人誌/WEB版)