【はなのみやこ】ファーターと愛弟子~寵花は師の手で花開く~

 はなのみやこ先生の最新刊です。発売後すぐ読んだのですが、勢いで感想を書いたら失礼だと思うくらい、素敵な作品でした。

 音楽学校に入学した奏人は幼い頃から憧れていたピアニスト・レオンハルトのレッスンを受けることになります。奏人の家庭環境、名門と呼ばれる学校内での友情と競争、幼馴染や異母弟との関係、師であるレオンハルトの寵愛を受けながら、ピアノと向き合い、恋に焦がれ、時に慟哭し、師弟関係から愛を育み、深めていく過程がえがかれたお話です。

 一番感動した部分を書きます。志音が事実を知り、そのことを奏人に話す場面です。奏人も読者である私も最初から分かっていることなのです。だけど、この部分が奏人を奏人たらしめる礎と直結していて、志音がこのことを知った時、どれくらい苦悩しただろうと想像して、胸が痛くなりました。  二人が互いの関係性を型にはめるのではなく、音楽の世界に身を置き、自分自身を研さんし、切磋琢磨していこうという思いが感じられました。みやこ先生の作品は、BLでありながら、こういうヒューマンストーリーも丁寧に書かれてあり、キャラクターの掘り下げがしっかりしています。

 次に挙げたいところは、奏人がラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を弾く場面です。レオンハルトを想って奏でるわけですが、愛を超えて感謝の気持ちで音を生み出す、心動かされる演奏シーンです。ここでさらに素晴らしいと感じることがあります。奏人が協奏曲をやる、というところです。自分に自信がなく、ピアノから離れ、音楽学校の入学さえあやしかった奏人は孤独でした。好きという気持ちだけで、一途にピアノに触れていた彼が、オーケストラと一緒に演奏する。印象に残る清々しい気持ちにさせてくれる場面でした。

 未熟であるがゆえに、ひたむき。脆弱でありながらも、くじけない心。レオンハルトだけではなく、周囲が奏人に魅かれていく理由が分かります。

 発売日に本屋さんで購入したのですが、コミコミスタジオさんは特典ペーパーがついています。なので、私は2冊買いました。電子版も出していただければ、通勤途中に読み返せるので、次回作とともに電子版もお待ちしております。



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