【水樹ミア】獣によりて獣と化す(同人誌/WEB版)

 8月19日(水)に同タイトルの新刊が発売されるため、世界観を復習しておこうと思い、読み直しました。

 物語は只人の王族リウ(受け)が<導き>(攻め)を選ぶ場面から始まります。本来であれば、リウの姉の役目でしたが、彼女は好きな相手と結ばれました。斎宮の条件となる純潔を失った彼女に代わり、リウがその役目を担うことになります。

 リウは犬族のレヴィを<導き>に選びます。彼は年上で落ち着いていて、リウの状況や心情を理解して言葉をかけてくれたからです。最初は儀式のための接触、しだいにリウはレヴィに魅かれていくけれど、姉の言葉や儀式が終わった後のことを思い、リウの心は揺れ動きます。

 水樹ミア先生といえばファンタジーBLと思っているのですが、こちらの作品も先生の世界観を構成する技術が生かされた物語です。ファンタジーだからこそ矛盾がないように、理詰めで作品を創り上げる作者の一人だと考えています。

 私がもっとも好きなのは、論理的なストーリー構成の中に受けの心情の変化がきれいにはまっているところなのです。こちらの作品だと、リウは自分は男だから、姉の代わりだから、役目が終わったら、身を引かなければいけない、と苦悶する部分とレヴィもまた長い間、リウに焦がれ待ち続け、彼の幸せのためなら、そばで見守るだけでも構わない、という欲情を抑えた情愛の部分。その葛藤が整然と創り込まれた世界に妙味として散りばめられていて、いつもゆっくり味わって読みたいのに、ぐいぐい読んでしまいます。

 それから、BL作品なので当然Lの部分も重要ですが、「獣によりて獣と化す」は純潔を守ってきた二人なので、うぶな営みから始まります。しだいにエロエロしい営みに変わるところも最高です。

 8月の新刊は別時代のお話ということで、ものすごく待ち遠しいです。

https://www.amazon.co.jp/dp/4799748939/


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