【緋田はずみ】ラスト・シークエンス

 両片思いがテーマの短編が二つ収録されています。二つめはバッドエンドだとうかがい、胸が高鳴りました。
 タイトル「ラスト・シークエンス」と聞いて、何を思い浮かべますか? 私はもうこのタイトルセンスに驚愕しています。

 一つめ「ビューティフル・マイ・バディ」は、タトゥーを入れるからその経過を写真におさめてくれという彼と写真部の彼のお話。最初に読んだ「手折られ花はほころぶ」に通じる、思春期の青年を描いたものです。まったく接点のなかった二人がだんだんと親しくなっていく過程が自然で、丁寧な表現で緻密にストーリーを進めていると分かります。
 タトゥーを入れる前、入れた後、という一括りの中での二人の変化をタイトルにあてはめるなら、これから先に続く二人の道はどうなるんだろう、という温かい余韻を残す作品です。

 二つめ「ドント・フォゲット・リグレット」は、これをバッドエンドと言うかどうかは読む人の定義にもよるかもしれません。私はバッドエンドではないと思いました。こちらは過去に何かがあった彼といじめられていた彼のお話です。これも重いテーマですが、緋田さんらしく、曇天に射し込む光みたいな終わり方でした。
 無神経で悪気はない、みたいな人達は自分も含めたくさんいます。ただ、行動に結びつくまでの思考は見せるものでもないし、自分でも道筋を立てる前に直感で動くことはあるものです。それが相手や周囲の受け取り方しだいで罪のない悪意になることもあるだろうと思います。
 本文の中に、『その恨みが、いつかなくなるといいけど』というセリフが出てきますが、それは絶対になくならないです、が正解。だけど、こちらもタイトルをあてはめると、二人が出会って互いの過去を知るまでの時間はおしまい、次の工程に移ろうという構成に思えます。
 無神経で悪気はない彼が誰かの人生を壊してしまったとして、その同じ彼が見て見ぬふりを決めこむ人達の中で唯一正しい行いをする。その意味をいじめられていた彼はもう分かっている。
 
 BLというよりは文芸に近いです。私はBLにはエロがあるべき党に所属しているけれど、指が触れ合うだけで恥じらう表現があるなら、それはもうエロだ党にも入っているから、この2カップルの続きはたくましく想像します。


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